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【魔法少女#54】決着、ノクスレインとの戦い(2)

私は本来、あの国の路地で知りもしない正義の光で死んでいたはずだった。


私と共に育った仲間も同じ、どんな思想であれノクスレインのお陰で力と命を貰えたんだ。



それはミリアちゃんと戦う前からずっとそう。


例え実験でも、この理不尽な世の中に対抗する力をくれたノクスレインに、例え魔女じゃなくても貢献しなきゃだめだよ。


多くの仲間がここに来るまでに死んだ。


それは冥府で一瞬にして奪われた同族もそう、ノクスレインの命令で戦場に立って殺された奴なんて途中から数えてない。



でも、だからこそなのか。


たった一人暗闇の中の影でも、不思議と力が湧いてくる。


あの日ノクスレインに救われたモアやミラ、数々の魂が私の背中を押し続ける。


「ミリアちゃんにはわかんないよね、人間界に悲劇を見たミリアちゃんと、ノクスレインに救われた私じゃぶつかるしかない」


「決着にしよう、この魔女の魔法がもたらした悲しい戦いを」


お互いもう長くない、ここで決める。


次の瞬間、ミリアが自身の移動魔法陣を潜り一気に距離を詰めてきた。


「銃が使えないんじゃ勝ち目ないよ」


私が握れるのはこのナイフだけ、数メートル離れたところに移動した銀の光が飛び出す。


しかもそれは槍の有利な間合い、その槍の連撃を受け止める。


「近距離で勝ってこそ、私の真の勝ちなんだよ」




___________________




血飛沫が舞う、どっちの血かどうかも分からない、お互いの魂を燃やした斬り合い。


「ここでミリアちゃんを超えてやる」


突如ウルの右腕が景色に溶ける、認識不可の影の魔法。


目で捉えること出来ない死の刃が私の胸を裂く。


「長くても意味ないし、ここに来たかったんだ!!」


ウルは怯んだ私の影を踏みにかかる。



「ここまでの動きには対応できない!!ミリアちゃん!死んで!」


ウルが私の影を踏みぬく、その刹那。


白き小さな幾何学が私達の足元に一瞬にして展開された。


この世界で何度もウルと近距離で戦っている、私だってウルの動きを読めている。


「それも読んでるんだよね」


影を力いっぱい踏み抜かんとする足が突如として景色に溶けた。


(足が…消えた??)


「悲しいね!!全てがさ!!」


視認不可のローファーが、ついに私の影をしっかりと踏み抜く。


「がぁあ!」


金縛り、まさに全身が硬直して指一本さえ動けないほど動きが止まる。


天才ウル、ここに来てもさらに私を出し抜いてきた。



彼女の目に浮かぶのは愉悦、スカートを揺らしながら刃を振りかぶる。


「さよなら、かつてのお仲間さん」


ウルは本当に強いなぁ。


彼女は戦闘者として天才、そんな完全な悪魔に勝つ、そのイメージは…


「ここだぁああああああ」


頭にあったんだよ、この瞬間も”あらかじめ”予測していた。


体が硬直する直前に展開していた白銀の光が私達の足元を神々しく照らす。


「なにこれ!?」


ウルの叫びが路地に木霊した時には、私達は白銀の光に包まれた。


その移動先はさ…


「上空だよ!!」


夕日が燦燦と燃えるような光を放つ、東京の遥か上空。先ほどの病院が豆粒ほどだ。


「影が…」


夕日に照らされた上空、影の魔法は無効化した。


まさに執念が呼び込んだ、命を懸けた逆転の一撃。


「ウル、私の勝ちだよ」


私の全てを乗せた信念の一突きは、完全にウルの腹を貫いた。


「なんで…どうして…」


悪魔の跳ねた血の雫が夕日に照らされた直後、再び私の魔法陣がお互いを包む。




粉塵が舞う残骸だらけの戦場にウルは力なく上を向き、崩れ落ちた。


「殺して…幸せになんかしないで、私に”与えない”で」


敗北、それは突き付けられた一人の悪魔は、羽を捥がれ抗う力を失ってしまった。


私も元ノクスレインの戦闘者、組織の依頼の失敗、それは死である事を理解している。


特に女王様直々の命令に至っては死で済めば優しいくらいだ。


それでも、私の言う事は変わらない。


「幸せにするよ、例え私達を傷つけた悪魔でも」


「あんたの理想を押し付けても…世界は幸せにならない…その理想を利用されるだけ」


そうかもしれない、頭ではとっくにわかってはいる。こんなバカげた理想が叶う方が厳しいことぐらい。


「それでも、私は今まで奪った命に対して償いたい、もう目の前の人を不幸にしたくないよ」


「がふぁ…だったら殺してよ、どうせ助けられてもその後にミリアちゃんを殺すだけだよ」


知っている、私は彼女の事を。そしてこの後ウルに起きる悲劇も。


でも、あの日、罪悪感を知らずに生きていたならば、私だってどこかの世界でこんなふうに死んでいたんだ。


だからこそ…この理想を私を貫くんだよ。


「ウル、どうせ組織に戻っても殺される」


「そうだ…ねぇ…ミリアちゃんが…私を殺すことで助かるよ」


冷静な頭では理解している、こんな馬鹿げて子供みたいな理論、筋が通っているかも怪しい。


「だから、私がウルを幸せにするよ、今後ウルに降りかかる不幸は私が必ず跳ねのける」


無茶苦茶で何もかもが無謀なのは当選理解している。


でも、それでも全助の皆は私と一緒にウルを迎え、家族のように接してくれることも理解している。


「ウルがたとえ裏切っても、また私が倒して心を入れ替えるだけだよ」


「はぁ…相変わらず、頭いかれている女だね」


ウルは笑った、今度は目もちゃんと笑っている。


彼女がいつかは忘れてしまったが、私に話してくれたことも覚えている。


彼女が常に奪われてきた側である事、そしてノクスレインが初めて与える側になったことも。


私が彼女の肩を取り、ゆっくりと立ち上がる。


「どうせ殺されるんだ、どっちについていっても変わらないよね」


「そんなことないよ、私が全部ハッピーエンドにするだけだから」


なんでだろう。


移動魔法で一瞬にして運べたけど、いまだけはこうして彼女に肩を貸していたかった。


今度は、私が与えるよ、多少傲慢と言われようとも。

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