【魔法少女#52】頂上決戦_悪魔ウルVS魔法少女ミリア
この戦いを引き起こした張本人、ミリア・ノクスレインがついに私と一対一。
「さよなら、死んだら地獄の仲間にも謝って」
「私は…この思いを貫き通す」
ミリアちゃんとの悲しい戦いもここで終わらせる。
私の名前はウル、悪魔の戦闘者。
私と一緒に命令を受けたミラもロウもモアも死んだ。
でも大丈夫、私が彼女らを忘れずに覚えておく、こんな世界。命はその辺の石ころと同じ価値、だからこそ私が覚えておく。
「ミラ達も死んじゃった、ミリアちゃんは彼女らを救えなかったね」
「私がいつか救う、理想は死んでも曲げない」
理想、それがあるだけで生物はここまで前を向くことができるのか。不可能で変えようのない現実。それでもそれは諦める理由にはならない。
目の前にいるのは何故か生き返った私の幼少からのお仲間、元だけど。
彼女は私とミラで完全に潰した。なのにピンピンしているね。
「おじさんも宗次郎も紫崎さんも皆お前のせいで傷ついた、許せるわけがない」
流石は最強の魔女と言われていただけはある、瓦礫の山にミラの打撃を受けまともにぶつかっても全然元気じゃん。
昔からミリアちゃんとはそりが合わない。
「誰かが傷つくなんて別に普通でしょ?前に進むには悲しみしかない、私はその悲しみを乗り越えて今がある」
結局は産まれも能力にも恵まれた、全てが選ばれた奴となんて、分かり合えるわけないよね。
だからこそ私の人生を否定したくない。負けるわけにはいかない。
(お腹の数発、あのおじさんもやんじゃんね)
ミリアちゃんたちのボス、名前は龍門玄、その弾丸は私の中心を貫いた。
(悲しいけど出血は無視できない、でもミリアちゃんもミラの一撃はきついでしょ)
あの魔人の一撃を食らえば死んだも同然、パワーは異次元だからね。
「ウル、私の全部を救う幸せ物語、それを阻むならここで倒す」
輝くのは理想に満ちた銀の魔女、いや魔法少女か。
次の瞬間、私は影に溶けるように前に飛び出す。
「ミリアちゃんと遠距離中距離でやり合うわけないよね」
銃や中途半端な飛び道具は全てカウンターされる、集中力を上げろ。
ここに来て数回目の近距離戦闘、もはやお互いの放つ攻撃は斬撃ではなく閃光。
「悪魔的な槍捌きだね」
「近距離で勝てると勘違いしないで」
「私の方が近距離得意なのに、強くなりすぎでしょ!ミリアちゃん!」
当然、槍の間合いは予測不可の自由自在、彼女の槍は瞬く間に私を削り続ける。
ナイフで槍を防ぐって言うのは超が付くほど困難な作業。
(ミリアちゃんもわかっている、お互いに時間がないことに)
お互いに一撃を貰った、そのダメージは深いしきっと長くはもたない。
ミリアちゃんはノーダメージが主義なんだよね。
「そのナイフで私を削れると思っているの?」
簡易的な傷は治るさ、でも重症であれば自己回復は難しい、さらには複雑な移動魔法は大量の魔力と脳の処理を求められる。
普通に考えれば槍をナイフで攻略するなんてムリゲーだよ、でもね…
「昔から何億回も見てきた槍の動き、読み切って見せる」
何度彼女と戦い合ったと思ってるのさ、いくら変幻自在でもね、間合いが読めなくても。
「私がミリアちゃんを読み違えることはないよ」
「私は幸せの魔法を使う、悲しさをも取り込んで」
防戦一方、さらに体から血飛沫が上がる。
「悲しさで胸が一杯な人が、幸せに満ちた私を超えられないんだよ」
私に影を踏ませない絶妙な距離に張り付けた、近距離に分があるというのは私の勘違い?
中距離は危険だが、いったん距離を取る。
「これは下がるしかないね」
私は極限の殺気を込めた弾丸を下がりながら放つ。
直接ミリアちゃんを狙ったら読まれてカウンターされるからね。
「ウル、狡猾だね」
狙いは奥の瓦礫の山、その中にある鉄筋を複数個所を破壊する。
乾いた音が響いた直後、瓦礫が崩れ戦場には鼠色の煙が舞い上がる。
(さっきの瓦礫に隠れよう)
腹から溢れる血を無視しながら煙の世界を直進する、ルートは頭に入れている。
この白煙に出血、いつも悲しさに満ち溢れていたあの頃を思い出す。
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あの頃はいつも、胸いっぱいに悲しさが溢れていた。
私が生まれたのは悪魔族が暮らす国、有体に言えば冥府。
世界から全てを否定され、嫌われ恐れられる存在。
産まれながらに自分たちの存在の異質さに気付いていた。
誰かから何かを奪わなければ生きていけい。その異質さに。
全ての生物は誰かを食らって自らの命を繋いでいく、それは悪魔と同じ、奪う事こそ生きる事。
けれど、悪魔って言うのはその中でも全てを奪う必要がある種族。
悲しみ、苦しみ、そんな負の感情から私達は産まれた、そう昔母が教えてくれた。
群れ、いやその集合体ともいえる私達の仲間はたまに他の生物と契約し、冥府を出て行っていた。
私のような弱い悪魔は冥府の隅っこでいつも他の悪魔に怯えているだけ、何も楽しくない、悲しさと辛さだけが胸の中一杯だった。
時を数える事すら辞めたとある日、私達冥府の悪魔たちは一斉にこの世界に呼び出された。
それは魔王軍の魔王領、戦力としてだ。
けれど弱くて生き残る力のない私のような悪魔はすぐ淘汰され、捨てられた。
何もない路地裏、見知らぬ土地。
そんな場所に冥府からやってきた悪魔がいれば、たちまちパニックになる。
通りかかる他種族からの迫害に会い、私はまたあの頃のように逃げ惑う日々。
(また私は悲しい毎日を送るのか)
あの頃と一緒、胸いっぱいに広がる悲しさ。
そしてまた、淘汰される日が来た。
【悪魔め、ここで殺してやる】
【人間みたいな見た目しやがって、俺達を騙す気だ】
見るからに神々しい、教会の連中、騎士っぽい奴もいたかな。
市民からの要望で私の駆除に来たんだとさ、私的にはやっと悲しみから抜け出せる。
でも、流石に悲しすぎない?私って何のために産まれたんだろう。
産まれた、というよりも気付いたら意識があった暗い世界。
そこでも誰にも見向き去れず、淘汰され、誰かの都合で呼ばれてその後には駆除。
(なんだ…悲しいな)
聖なる光が私を照らす、その時だった。
【待ってよ、優しくいこうよ】
虹色の光が私を優しく包み込む。
虹色に輝く気品あふれたドレスに王冠のような装飾品。
髪に靡くのは全てを照らす金色。
それこそが、ノクスレイン一族の最高到達点、セグレア・ノクスレイン。
【誰にでも優しく行こうよ】
瞬きよりも短いその一瞬、何もかもを塗りつぶす虹色が私を救ってくれたのだ。
何もかもが終わったその時だった。包容力のある笑顔を私に向ける。
その笑顔は、目元から笑う満面の笑み。
「貴方、私に一緒に魔女の国にこない?」
私はどうせ、世界にすら覚えてもらえない。このまま誰かに奪われて死んでいくものだと思っていた。
今思えば、ノクスレインの部門の一つ、他種族に魔女の技術を与えて戦闘者にする実験材料にしたかったのかもしれない。
それでも、私にとっては初めて私から何も奪わずに、”与えてくれた”人だった。
そこからはすぐだ、私は組織に与えられた技術と教育、そして魔法。
全てを自らの糧として組織に尽くした。
魔女たちを教育する部門とはまた違う、私達は各世界から集められたその世界の捨て子。
皆感謝していたよ、このまま世界に理不尽に奪われる運命を、ノクスレインは救ってくれたんだ。
ノクスレインの野望は魔法を魔女に手に再び取り戻すこと。
その道程で邪魔となる魔王軍や人間と多く敵対してきた、でもノクスレインの最後の目的は自らの魔法で世界を平和にすること。
魔法を魔女たちのみで管理し、無駄な争いを無くすため。
この世界で何かを奪われた種族や生物を組織が守り、魔法の力を世界に還元する。
でも、この理想に敵対する奴だって当然いた。
【これじゃ皆を幸せに出来ない、魔法は皆の物だ】
でもさ、私は知っているんだ。
不必要に力をもった者達が、世界に振りまく理不尽を。
胸いっぱいに広がる悲しみも。
私は大層な理想なんか持ってはいない、それでも、だからこそこの組織の為に捧げる。
自分を救い、力も魔力も”与えてくれた”。
理由なんて、それで十分だよ。
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瓦礫を”移動”させた銀の光が、私を凄まじい眼力で捉えている。
手に握る槍は震え、顔は引きつり目は鋭い。
一歩一歩粉塵を纏いながら戦場を闊歩している。
「どっちも幸せになる、そんな最後は私が叶えて見せる」
「誰かから何かを奪わなきゃ、悲しいことに生きていけないのさ」
こんな私にだって、引けない時がある。
さぁミリアちゃん、どっちが不幸で幸運か、決めようか。




