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【魔法少女#50】魔人族の最後の誇り

尋常じゃない痛みが全身を支配する中、何とか死の淵から気力で戻っていた。


私の名前はミラ、死にかけの魔人族。


今はウルがミリアと人間を相手取って戦っている。


人間世界に来てからの連戦、そのダメージが蓄積。


まずぶつかったのが瀬礼市の探偵の用心棒、煉城練斗。


最強のドラゴンと変幻自在なスライムの能力を併せ持つ奴は正に強敵、かつて異界で最強と言われていただけはある。



そしてあのノクスレインの最高傑作、ミリア・ノクスレイン。


移動魔法と武器の槍、高い技術での融合は今までで見たことがない。


幾百の修羅場をくぐってきたからこそわかる。


(もう、私は死ぬ…手遅れだ)


鬼人族と人間が仕組んだ爆破、その威力は絶大。


それが蓄積したダメージと合わせてもう限界に達したのだ。



あぁ、私はこんな異世界の辺境の地で、誰からも愛されずに死んでいくのか。


できるのならもう一度、彼女らに会いたかった。



______________




私が生まれ育ったのは魔人族の国、グランヴァルド帝国。


神聖な魔力が溢れる王国は、我々が先祖代々受け継いできた国民の宝。


最大国家だったその国は武力が前提、強さこそが全て。


魔人族、強力な魔力と戦闘能力を合わせもつ異界最強の生物。


異界の中では発展している世界だった、その中でも凄まじい男尊女卑社会。


女性は男性の奴隷、雌は雄を喜ばせるために存在している、そんなレベル。


いつも女性が虐げられる、そんな世界をいつかこの私が変えてやると、常に心の中で誓っていた。


魔人族の中でも女性は男性に嫁ぎ、生涯を捧げる、男の言う事が全てのような家庭。


私の家や環境も例外ではない。


父は母を飯を作る奴隷だとしか思っていなかったし、私の事は良い嫁ぎ先に行かせることしか考えていなかった。


父はいつも兄にこう教えていた。


「男に産まれたのなら、強くなれ、家族を守れるように」


兄は雷の魔法の使い手、魔法の才を開花させていた。


女に産まれた私はそれなりに生きづらかったと思う。


兄の姿を見て、男も男なりで大変なんだなと幼き頃から感じていた。


戦争に勝つ、魔族に勝つ、魔王軍に勝つ、そんな世界で生きるのだ、男尊女卑が通常になるのも無理はないかもしれない。


でも、私は女でありながら強さを求めた、そして私には戦闘の才があった。


魔法はからっきし才能は無かったが、父や兄に叩き込まれた戦闘術でいつしか兄と戦場を駆け巡るようになった。


そして奴隷同然の女性の種族を助ける、奴隷ではない、一つの生物として。


戦場慣れし、奴隷となった亜人族や美しい種族の女性を援助し続ける生活にも慣れた頃。



私達の国は魔王軍との全面戦争に入った。


彼らの目的は我々の掌握。


当然、この世界のなかでは最強クラスの生物。捕虜にすれば途轍もない力になる。


私達もすぐに戦場に駆り出された。


そして仕留めた敵兵からこんな言葉を吐きかけられる。


「もうお前ら魔人族は終わりだ…なんたって魔王様がここに来る!」


そんな遺言も最後まで聞かぬまま、命脈を絶つ。


けれど今思えば、それこそが私達の国を崩壊させる悪魔の顕現とは知る由もなかった。



戦争が始まり二つの季節をまたいだ時。


戦場に突如として巨大な闇が顕現したのだ。


神々しさと禍禍しさ、どちらとも表現できない何かが戦場を一気に支配。


「これが…魔王」


そうつぶやいた時、私は兄に腕を掴まれていた。


「ミラ、お前は女だ、ここで死ぬのは違う」


兄は私と違って魔法も優秀だ。


「兄さん、何を!!」


一瞬にして私は雷の球体に包まれる、身動きが取れない!


「ミラ、俺の分まで好きな人と沢山幸せになれ」


雷の防御球体を兄が弾いたと同時、世界の景色が一瞬にして強烈に上書きされた。


意識を軽く失っていた。


何もない更地で気を失っていた私が起き上がった時、その目の前に広がるのは異様な光景。


闘志と誇りを胸に掲げる魔人族は皆、魔王軍の兵として連れていかれていたのだ。


後から知ったことだか、魔王の能力の一つは強力な洗脳。


戦場にいた魔人族や国の民は皆、魔王軍の傘下になってしまった。



圧倒的な戦力さ、雄は兵力として、雌は慰め物として連れていかれた。


私以外の国民は全て魔王軍に取り込まれた。


その頃。私が深い絶望の淵にいた時。


魔王軍に国が占領された国に現れたのだ、魔女組織、ノクスレインが。



我が国に降り立ったのはまさかのノクスレインの女王、セントラ・ノクスレイン。


ノクスレインは魔人族を新たな戦闘者に改造するための実験を行っていたのだ。


それを敵対する魔王軍に軒並み潰されてしまった。


偶然だった、私は目の前にいた魔女に話しかけられた。


我が国が陥る状況を事細かに話す、これ以上落ちていく我が国を見ていられなかった。


この時はきっと、失った実験の続きを私でやることにしか興味がなかったのかもしれない。


そこからの記憶は曖昧だ。


魔女組織から送られてきたたったの一人の虹色に輝く魔女が、魔人族を占領していた一拠点を簡単に破壊した。


大勢の魔王軍を簡単に蹴散らすその強さ、当時組織の最高到達点と言われていた最強の魔女、セグレア・ノクスレインその本人。


そこからはすぐだった。復興に向けて動き出す国を出て私は魔女の国ヴェルグレアに向かっていた。



____________




長い夢を見ていたようだった。


それでも私は思い出した。なぜ戦うのかを。


私の国を救ったノクスレインと、それを裏切ったミリアを殺すためだ。


誇り高き魔人族の矜持を胸に納めて。


瓦礫の物陰から私は這い上がる。


(ミラの最後の手段を使う日が来るとは)


私にも魔力は流れている、それを制御する才がないだけ。


組織が私に授けた力、それは魔力と寿命を消耗し、体の出力の限界を超えること。


「がぁあああああああぁぁああ」


今まで一度も漲らせたことのない我が魔力、それが全身に行き渡る。


「さぁ、ミリア、ここからが最後の戦いだ」


瓦礫を強引に吹き飛ばしながら、私はウルの横に並んだ。


私の姿を見たウルは狂気的な笑みを浮かべる。


「悲しいくらいの闘気だ、死んじゃうね」


「ミラ…なんで立っている?」


ミリアと人間も十分な覇気、彼らも引かぬ。強力な信念と誇りがあるのだろう。


「おじさん、ここからが本番だね」


「ミリア、俺は死ぬ気はねーぞ」


二人も猛者、強力な殺気が満ちている。



場に並ぶのはそれぞれの信念と覚悟を持った一流の戦闘者たち。


「さぁミリアちゃん、ここらで決着にしようか!!」


「ウル、返り討ちにするだけだよ」


この戦いはついにクライマックスを迎える。


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