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【魔法少女#4】自称、魔法少女

事務所の中は意外にも、普通の空間が広がっていた。


二人に促され、俺はソファーに腰を下ろした。


ソファーとテーブル、雑然とした書類。生活感のある部屋。


もっとこう、怪しげな空間とか呪術的な何かが並んでいるのかを想像していた分。拍子抜けした。



「まぁ、依頼を聞くまでもない、あんたやらかしてんなぁ」


低い声の男、歳は三十後半くらいか、無精ひげに鋭い目。



「私の名前はミリア、正義の便利屋です」


そのルックスは一目で思春期の男の目線を盗む美貌、人間離れしている雰囲気。



「で、こっちがオーナーの龍門 玄。おじさんでいいよ」


「だれが、おじさんだ。まだまだ自称お兄さんだこの」


カタギではない雰囲気の強面だが、冗談も通じる話しやすいタイプなのか?



「で、それ、使ったんだね」


ラフな雰囲気をいきなり切り裂く一言、背中に氷柱を入れられたような気分。


彼女は俺が持ってきたペンをのぞき込む。



「はい…」


「何を書いてなにが代償になったのかな?」



「えっと……“なんか、いいこと起きたらいいな”って……」



言った瞬間、自分でも情けなくなる。


そんな軽い理由で、あんなことが起きたのか。


「なるほど」


少女ミリアはあっさりと頷いた。


「じゃあそれ、あなたのせいってことね」



一瞬で心が冷たくなった。


「……」



「だって、書いたんでしょ?なら起きちゃうよ、そういうペンだしね」


軽い口調、まるであたり前の事を言うみたいに。


けど、そういわれたとき、やっと自分の脳は理解した。



これは、自分が引き起こした事件だと。



「っ、でも…偶然の可能性だって」


「何が起きたかは聞いてないけど、大体予想はつくよ」



僕の言葉を遮るように、即答だった。



「結果、”いいこと”が起きて、そのバランスで”悪いこと”が起きているだけ」



彼女はそう言って首を傾げた。


「シンプルな事ですよ、まぁ多分、少しの幸運に大不幸が起きてるってくらいで」



頭が追いつかない。シンプルなはずがない。


「そんなの…ありえるんですか!」


頭ではわかっていた、でも心が納得しない。



「誰かの不幸を勝手に起こして、勝手にいいことも起こしているだけですね」



心臓が強く鼓動した。


それはさっきからずっと頭の奥から感じていたことだった。


でも、いざ言葉にされると、逃げられなくなる。



「そんな…」



何も言えない。



「おい!」


男が低い声を出した。



「事実はどうであれ、あんまりまだ追い詰めんなよ」


「追い詰めていないよ、確認しているだけです」



少女は笑ったまま答える。


でも、その笑いはどこかおかしい。


楽しそうなのに、どこか空っぽに感じた。



「で、お前さんはどうしたい?」


男が俺に視線を戻す。



「止めてぇーんだろ?」



その問いに、息が詰まる。



「…止めたいです」



即答、この普通を身勝手に変えてしまった責任は取りたい。



「いいね、面白くなってきたね」


少女が笑顔で近づいてきた。


目が、笑ってない。




「この依頼お受けしますよ、全員助けて幸せに、それがこの事務所の方針なんで」


軽い口調でそう言った、まるで日常の延長のように。



「この現代と異界が繋がる今、異界のアイテムで悪さする奴は、この正義の魔法少女が倒すのさ」



立ち上がった少女、看板にもあったその”言葉”が、今の自分に突き刺さる。



「お願いします!」

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