【魔法少女#3】噂の便利屋
放課後の教室は静かすぎた。
さっきまでの喧騒が嘘みたいに音が消えている。
ひっくり返っている椅子に、誰かの落とし物の筆箱。
持ち帰ることすら忘れているプリントや教科書。
そして、血の跡が残る床。
全部が俺の”日常”から遠く離れた現実。
「………」
俺は自分の席に座ったまま動くことができなかった。
(なんで…こうなった…)
頭の中にへばりついて離れない、先ほどの出来事。
満点と転倒。
幸せと破綻。
…偶然、として片付けるには出来すぎている。
___いや。俺は理解している。
(偶然なんかじゃない)
視線が手の平に落ちる。
黒いペン、俺の”願い”を書いたメモ帳。
(俺の…せいだ)
そう実感した瞬間、俺は息をすることができなくなった。
息が詰まる、心臓がうるさい。
「嘘だろ…」
でも、否定できない。
あの時、確かに僕の中に産まれたもう一つの感情。
”何か起きたらいいな”
たったその、自分のつまらない日常という未熟で恥ずかしい気持ち。
それなのに、こんなことになるとは思っていなかった。
気づけば、逃げるよに教室から飛び出していた。
遠くの職員室からは先生たちの慌ただしい足音が響いている。
(どうすればいいんだ)
考えてもなにも浮かばない。
(警察?いや、説明できない)
(先生?信じてもらえるわけがない)
頭の中が空回りする、そんなこと考えたこともなかった。
だけど、記憶の中に一つだけ、ふと思い出したことがある。
「冥王市に、”異界”を扱う便利屋があるらしいよ」
登校中に聞いた、どうでもいい噂。
そんな怪しい噂、普通なら信じない。
でも…今は__
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気づけば、学校を飛び出して、駅の裏の方まで走ってきていた。
人通りが減り、建物が古く、空気が淀んでいる。
(ここが…本当に?)
古い雑居ビル、そこの入り口の横には、小さな看板が立っていた。
【全部必ず助けます。便利屋 全助】
テープで補強された頼りない文字、手作り感が半端ない。
普通の人間ならきっと、ここで引き返すのだろう。
でも、今は…”普通”なんかどうでもいい。
一歩踏み出し、年期の入ったドアを開けた、耳に悪い嫌な音が鳴る。
中は思ったより普通だった。
ソファーにテーブル、殺伐とした書類。
そして___
「依頼人か、しかも訳ありっぽいな」
低い声、しかもドスが聞いている…怖い。
奥にいた男がこちらを見ていた。
その鋭い目で、俺の全てを見透かされた気がした。
「あの…」
言葉が出てこない、詰まって何から説明していいかわからない。
その時だった。
「それ!!!」
別の方から、元気な女性の声が響く。
視線を向けたその先、そこには一人の少女がいた。
「ややこしそうな依頼人が来たね!」
元気な感じなのに、どこか感情を感じない声。
金髪の美女、恰好はどこか西洋を感じる風貌。
彼女はポケットを凝視している。
「それ、”異界の物”だね」
「え…」
興味に満ちた顔で、俺を覗いてくる金髪美女。
「あなた、名前は?」
そうこの日、彼女と出会ったこの日から、俺の人生は”普通”ではなくなる。
いや、”普通”を失った。
「俺の名前は…柊透」




