【魔法少女#2】特別と代償
今日も変わらない朝がやってきた。
学校に行くのを面倒に感じながらも、制服に袖を通す。
「やっぱり、夢じゃないのか」
ポケットに入っている謎のペンと数枚の紙が挟まれた小さなメモ帳。
昨日の出来事はまだ夢だと思っている。
でも…俺の胸では、あの老婆の声が響いている。
(願いを書くだけ…本当のにそれだけ…)
願い。このペンを使って…?
あの老婆はもしかしたら俺の心を読んでいたのかもしれない。
気づけば、俺はペンを握り、そのメモ帳に半信半疑のまま願いを書いていた。
______________
教室は、いつも通りだった。
チャイムが鳴って、担任が入ってきて、「小テスト返すぞー」と気の抜けた声を出す。
それだけの、どこにでもある放課後前の一コマ。
――のはずだった。
「……え?」
ざわつきだしたのは、一人の女子の声からだった。
クラスでも真面目な女子、佐倉。
彼女は答案用紙を見つめたまま、固まっている。
「どうしたの?」
「いや、佐倉…満点取ってる」
「は?」
教室が一瞬で静まり返る、空気が張り詰めたようだ。
佐倉はこのクラスでも優秀、別に不思議ではない。
「すごいね!今回難しかったじゃん!」
「佐倉さん凄いな」
クラス中にざわめきが広がる中、話題の本人は消えそうな声でつぶやく。
「私…そんなに勉強してなかったのに?」
その呟きが空気に消えた、その瞬間。
ガンッ!!という音が教室に響く。
鈍く、とても聞きたくない音だ。
「きゃー!!」
佐倉が椅子ごと後ろに倒れた、倒れ方が何かおかしい?
しかも頭を机の角にぶつけている。本人は動いていない!
「おい!!大丈夫か!!」
「ヤバい!血が出てる!!」
教室は一気にパニックになる、女子生徒は泣き出し、男子は他の先生を呼びに飛び出していった。
…俺は動けなかった。
(これって…このタイミング…)
頭の奥で、何かが引っかかる。
__昨日の路地、そこで老婆に渡された謎のペンとメモ帳。
(あんた、退屈を吹き飛ばすことができるなら、特別になれるなら、なりたいかい?)
そんなこと…と否定しようとしたその時。
「なあ、聞いてくれよ!」
今度は男子の声。
「どうした?」
誰かが聞く。その男子は震える声で言葉を絞り出す。
「彼女が…死んだ…」
「は?」
「彼女の家族からいきなり…」
教室がまた静まりかえる。
__おかしい。何かがおかしいぞ。
(これ…まさか全部)
脳内で結ばれた点と点、もう、分かっていたんだ。
心臓の鼓動がうるさい、呼吸も浅く苦しい。
ポケットにある、黒いペンとメモ帳。
(俺が…やったのか?)
その時だった、廊下の向こうから声が響く。
誰かの叫んだ声、相当焦っている。
「救急車を呼んだ!いそいで運べ!!」
いきなり教室で起きた大事件、俺は震える手でメモ帳をわずかに開く。
そこに書かれている、文字を確かめるように。
【テストでいい点が取れたらいいな】
【今日は何か面白いことが起きないかな】
その日から、僕の学校は臨時休校になった。




