【魔法少女#45】少女ミリアⅠ
魔女とは、魔力を支配し、この世の理に干渉できる崇高な種族。
私が生まれた時から、周りの大人たちから常に言われてきた。
お前は、この魔法を人間から取り戻すために産まれてきた。
薄暗い地下室、今にもたまに夢に出る。
笑顔は必要ない、お前たちはただ私達の言う事を聞けばいい。
そうすれば___【幸せになれるぞ】
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幸せって何だろう。
私は昔からそればかり考えていた。
そもそも私は親を、両親を知らずに育った。
一番古い記憶は3歳の頃、まだ立ったばかりの私を大人が取り囲み。魔力で私の能力を調査していたことだ。
私の体が大きくなればなるほど、組織の大人たちは私の教育に力を入れた。
【仕掛けた子…やはり異常な数値だ、本家の令嬢を圧倒している実力だ】
無機質な白い壁、その中に佇む一人の影。
纏う黒い霧のような影が彼女を覆っている、それこそ私達の長。
セントラ・ノクスレイン
始まりの魔女であり、魔法を作り、異界を発展させ魔女の力と魔法を世界に広めた英雄。
親を知らず、産まれた意味すらも誰も教えてくれない中、彼女だけは私に目をかけてくれた。
今思い出せば、彼女こそ私という魔女を望んだ。私に背負ってほしかったのだ。
自分が目指す理想の世界を。
10代を超えたあたりで、私の才能は開花し始める。
組織にいた見習い、ベテランの魔女。それら全てを技術、センス、魔力量で追い越した。
今思い返せば、組織の中で私と互角に勝負ができていたのはウルだけだった。
彼女は私とはまた違う別部門の実験体。
他の異界生物に魔女の魔法を与え、強力な戦闘者を作り出す実験を行っていた。
年月にしてみれば16年、私は組織に尽くしてきた。
壊滅させろと言われた異界の組織や異界の種族、時には同種や魔王軍。
さらには人間の戦闘者を相手取るときだってあった。
私は完全無敗の最強の魔女として異界に名を馳せた。
彼女が来たら祈るしかない。そんな噂が異界の田舎まで伝わっていたのだ、私の強さは正に異質だった。
こんなに強い、何をしても強すぎる魔法のステッキがなんにでも届いてしまう。
そんなある意味での理想の生活の中、私はいつも葛藤に苛まれていた。
【私が産まれてきた意味は何だろう】
そう、親を知らぬ子、自身のルーツを知らぬ子は必ずこの人生という名の道で迷う。
人間が幼少期に与えてくれる、母からの愛。
それは無償の愛であり、自身の親からしかもらうことのできない、何にも代えることのできない贈り物。
そのお金にならない贈り物をほかの誰かに、そして自身の大切な人に渡していき人々の幸せのバトンは繋がっていく。
では最初からバトンを渡してもらえない私は?
最初から誰からも愛してもらえなかった、幸せという贈り物をもらっていない私は…バトンを誰にも手渡すことができない。
誰も幸せにすることができないのではないか。
私が魔法と槍で突き刺したその先にあるのは自身の血に溺れる魔族たち。
16歳、それは人間や他の部族で言えば自立する気持ちが生まれる時期。
私にも来たのだ。そういう時期が。
でも大人は言う。
【お前は魔法を魔女の手に取り戻すために産まれてきた】
魔法の技術を振りまいたのは魔女であり、その魔女の技術を追い抜き自身の科学として扱う人間。
私は興味があった。
常に誰かの不幸せを願い、常に魔力と技術を磨く魔女。
それを簡単に追い抜くほどの頭脳とどん欲さのある種族、人間の生態が。
そんなことを頭の片隅にありながら、組織の命令に忠実に働く毎日。
ここで育てば感覚は麻痺していく。
毎日毎日作業のように多くの命を穿った、死を纏う槍で。
そんなある日、一つの依頼が長から下された。
【人間界で私達の事を調べる者を消せ】
組織で出回ったのはターゲットの家族の情報。
幸せそうな警察の一家や魔女を研究する組織が今回の対象。
私はその選抜部隊に選ばれなかったが、それらと一緒に人間界に向かう気でいた。
魔女の技術に追いつくその知性と貪欲さに強い興味を惹かれていたからだ。
依頼は簡単だった。私が人間界を観光している間に仲間がターゲットを消していた。
人間界に来るのは人生で2度目、当時は幼く何も知らなかったが、今は目に映る全てが色鮮やかに見えた。




