【魔法少女#44】幸せの救世主
灼熱の衝撃が病院の裏路地を包み込む。
宗次郎の下に突っ込んだ爆弾二個、鬼人族のタフネスでも積み重なるダメージですでに限界のはず。
瓦礫の山から俺は痛みを気合で誤魔化し立ち上がる、俺ももうそろヤバイ。
粉塵が場を灰色に染め上げていた、だが風で次第に景色が晴れてきた。
「宗次郎…」
その衝撃的な光景が俺の目を焼いた。
「宗次郎!!!!」
俺は瓦礫を吹き飛ばしながら強引に詰め寄る、宗次郎の全身は見ていられないほどにボロボロだった。
もう血に塗れていない部分はないほど赤に染まり、戦闘で受けた爆傷や刀傷が痛々しく広がる。
また俺の大切な人が死ぬ、しかも俺のせいで。
死という避けれらない根源的な恐怖が俺の全身を駆け巡る。
「起きろ!!ここでお前は死ぬ男じゃないだろ!」
こんなすげぇ男を死なせたくねーよ。
場に広がる何かのクズが顔の角に引っかかったその時。
「俺は…まだ…」
現場の風に掻き消され、今にも消えてしまいそうな声。
「生きろ!!意識を手放すな!!」
この重症でなお、死なずに意識を飛ばしてない…なんというタフさ。
それでも怪我は重症、今すぐにでも治療しなきゃ100%死んでしまう。
「俺が今すぐ何とかする、気合いれろ!!」
他の二人は…どうなった?
俺は宗次郎の肩を抱えながら灰色の景色に銃を構える、この爆破で死ぬほど柔な奴らか?
「おいおい、まだ死んでいないとは。醜い男としてはやるではないか」
「私達も悲しいくらいやられているけどね」
粉塵が場から消えていった刹那、絶望の影が現れる。
「てめぇら…クソったれ」
辺りの地形が変わる大爆破。
それでもなお、ミラとウルは殺せなかった。
しかも先の爆破。おそらくミラが盾となりウルにダメージがない。
魔人ミラの全身はズタボロで赤に染まっている。
こいつはミリアとの戦闘で万全じゃない。
でも…ウルがまずい。
だがな!!それがどうした!ここで絶対に俺達は死なない。
「ここからは絶対に行かせない」
俺は一瞬で銃を抜く。
悪魔と魔人の悪女二人に向けて弾丸の雨を降らす。だが二人はそれを捉えている。
「ウル!!ミラがいる!」
「なんて便利な魔人族」
ミラが棍棒で弾丸を弾きながらバックステップで距離を置く。
クソったれ…俺はどうすればいいんだ…
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私の名前はウル。
サイレンと炎の熱が辺りを支配する病院の路地で淡々と仕事をこなす魔女組織の暗殺者。
「ミラちゃんはもう限界かな」
連戦…その傷はまだ癒えていない。さらにはさっきの大爆破をまともに食らっている。
それでいてまだ死なないなんて、ほんと規格外だな。
(でもミラはもう動けないぐらいの限界だけど、鬼人の男も一緒でしょ)
先ほどの牽制の弾丸、それはおそらく瀕死の鬼人族を逃がすための時間。
まぁそれを狙う事もできたけど、この魔人も限界だったし、いいか。
その瞬間だった。
(なんだ…この感覚は??)
嫌な予感とはまた違う、不思議な感覚。
正にその逆。
私は”それ”を知っている。この感覚を知っているんだ。
戦場にいる全員が違和感を感じ取る、場の空気が明らかに変わる。
病院裏に散乱する瓦礫、ひび割れたアスファルト、ひしゃげた鉄骨。
その全ての足元から、青白い光が漏れ出した。
「…は?」
口から思わず声が漏れ出す。
昔から何度も何百回も見ていた。見間違えるはずがない。
幾重にも重なる円環、空間を刻む白い幾何学模様。
複雑で高度な魔法術式。
そう、空間そのものを支配する魔法陣。
「悲しいね、全てがさ…」
体が震える、言葉がこぼれ落ちる。
「なんで…」
来るんだよ。
それは脳裏に浮かんで離れない、金__いや、銀の髪。
いつもふざけているようで、いつも笑っているだけ。
なのに誰よりも強く、気高く固い信念を掲げていた。
私が絶対に追いつけなかった、世代の最高到達点。
次の瞬間、銀の光に空間が支配される。
無数の魔法陣が地面や瓦礫を全て白銀に染め上げていく。
「ミラ!!」
私は魔人に向かい叫ぶ、だがもう間に合わない。
巨大な鉄骨に砕けたコンクリート、病院の瓦礫の残骸が一斉に消えた。
そして…それが私達の真上に現れる。まずい。
「なっ___っやば」
空を埋め尽くすのは巨大な瓦礫の群れ、まさに地球を滅ぼす隕石そのものだ。
何t…そんな次元の質量が私達に向けて落ちたら…
「やっばいな、おじさんも宗次郎も」
それは昔から聞きなれた声だった。軽くて呑気。
ふざけている。
なのに、その一言で__彼女が来ただけで戦場の空気がひっくり返る。
「ウル__リベンジに来たよ」
空中の無数の魔法陣の中心。
幸せの魔法少女が座るように浮かんでいた、足をぶらぶらさせながら。
まるで友達の待ち合わせに遅れたみたいな顔で。
「またせちゃったね、みんな」
ミリア・ノクスレイン…異界では最強の魔女として恐れられる死の女王。
そして。
私が一番嫌いな女。
彼女が私を見る目、その目だけは。
少しも笑っていなかった。




