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【魔法少女#33】燃える女と燃える男

俺と鬼島…さんと西側の病棟に到着したその時は、もう手遅れだった。


「みんな逃げて!!」


「患者の安全を確保して速やかに避難を!!」



看護師や医者の方が入院中の患者を背負い火事から避難させていた。


こんな状況でもミリアの手術は続いている。でもどうすれば?



「これは意図的、しかも魔力を感じる」


鬼島さんが睨む先、ここは6階、ミリアの手術室がある東側につながる通路。



だがそれを包むように5階と7階は火に包まれている。


逃げ遅れる人々、泣き叫ぶ子供、それを助けようとする大人。



その時、逃げ遅れた若い女性が転倒、勢いよく前に飛ぶ。


「させるかよ」


鬼島さんはそれよりも早く飛び込み、女性を抱え込む。



「大丈夫か」


「は、はい…ありがとうございます」


便利屋全助の信念は皆、あの無鉄砲で理想しか語らない魔法少女譲りの物。


「俺達がいる以上、絶対に全員助ける」


「そうですね」


俺と鬼島は火元に向かって走る、今回はただの放火じゃない、明らかに魔法による攻撃。



突き当りの階段に差し掛かった、火の勢いは強くなるばかり、息をすれば肺に熱が入り胸が重くなる。


「明らかにここからだな」


鬼島さんがそうつぶやいたその瞬間!



凄まじい熱を宿す魔弾がこちらに向かってくる。


「なんだ!!!」


俺が叫んでいる間に鬼島が近くの消火器をバットでぶっ叩いていた。



「オラよ」


人間の命を一瞬にして奪う灼熱は白煙の霧に包まれ勢いを失う。



「楽しいな~楽しいな~炎って美しいな~」


まるで遊園地に遊びに来ているかのような、緩い声が炎の奥から聞こえる。


「だれだ?俺達を殺そうとしたのはお前か!」


俺が炎に向かって叫ぶ、それに反応するかのように火力が増していく。


そこにいるだけで汗が吹き出し体から体力を奪っていく、まさに灼熱の空間。



「燃やすっていいよね~何かを失ってなにかを得ている、そのままじゃん」


炎から出てきた、いや、炎そのものと一体化したかのような見た目。


ミリアと似たような魔法少女の衣装、決定的な違いは紅蓮の赤を纏っていること。



「お前か、この火事を起こしたのはよ」


そういいながらバットを構え明らかに異質な女を前に構える。



「柊、消火器もって影に隠れとけ」


「はい」


逃げるように通路の窪みに飛び込む、道すがらにあった消火器を抱えながら。



「魔女ってださいよね、だから自分を魔法少女っていうのはミリアに賛成」


「てめぇもノクスレインの連中かよ」


会話の歯車があっていない、前の女はどこか遠くを見ているかのようだ。



「聞くまでもないかもしれないがよ、狙いはミリアか」


「そうだね、裏切り者は燃やす、そうでしょ」


なんだ…笑っているのに張り付けたような、本心ではないとわかるこの笑み。



思い返せばミリアもそうだった。


彼女はいつも笑っていた、でもどこか目は笑っていないように見え、言葉も態度も軽い。



悪魔の戦闘者ウルも、そして今俺達の目の前にいるこの火の魔女もそう。


笑み、それが人とは何かズレたものを感じる。



「過去がどうこうは俺は知らねぇ、ただ今は俺達の仲間。その仲間に手ぇだすんなら容赦しない」


鬼島の覇気が増す、構えるバットには闘気が充満されている。



「どうせ助からない手術を見守っても意味ないよ」


燃える魔女は俺達をあざ笑うように言い放つ。



「意味ない…?」


「言われなかった?今の人間や異界人の医学では対処できない、そうだよね、ノクスレインが改造した魔女の構造はノクスレイン一族しか知らない」


辺りに広がる炎から温度を感じなくなった。冷たいものが俺の背中を走る。



「きっと回復魔法を聞かない、人間の外科手術でもどうすればわからない。ボロボロで細かいガラス細工のような体。知識もないのに元に戻すのなんてむりだよ」


「無理…だって?」


気づけば体に抱えていた消火器が地面に落ちていた。周りの温度も音も何も聞こえない。



「どうでもいいわ、そんなもん」


俺の思考を断ち切るように、鬼島が炎に向かい合う。



「俺はミリアと柊を信じる」


「もう無駄だよ、ここでお前達はモアが燃やす」



ここから、俺は考えもしない行動にこの戦いの未来をゆだねていく。





冥王市___どこかの病院。



「ウル様、こちらロウです。ミリアの仲間を発見しました」


私が病院の待合室で気配を消しそれらしいものを探っていた時、エントランスでロウから連絡が来る。



「それは悪魔的に都合のいい展開だね」


「モアが盛大に燃やしています、私はおそらく手術室にいるミリアとその護衛を殺します」


真面目で忠実な騎士、流石はミリアと同じノクスレインの本家の魔女、仕事ができるね。



「了解、ミラを連れてそっち行くから」


「ウル様、お言葉ですがミラ様の傷は深いのでは?」


「大丈夫、どうせ頑丈ですぐ動けるよ」


「了解しました、では私は任務を遂行します」


魔力の通信はそこで途絶える、小さな青黒い陣が溶けるように消える。



「もしもしミラ?ミリアちゃんたち見つけたけど動ける?」


人間世界の通信機器、通称スマホを使ってミラに通信、今どきのJKは皆持っているらしいからさ。


「愚問だ、私は良い女がいれば傷はすぐふさがる、なぜなら___そ」


「んじゃ今から戻る」


何かを言いかけたが通話終了ボタンを押す、面倒だからね。


「あっけなく終わりだね、ミリアちゃん…」


私の呟きが聞こえたのか、待合室の看護師さんが振り返る。



「あれ…?何か聞こえたような」



そうして私はこの喧騒に飲まれ、病院を後にした。

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