【魔法少女#32】飴細工のような
俺の名前は柊透。
「ミリア…頼む、起きてくれ!!」
ボロボロの仲間を看病する、便利屋全助の従業員。
玄さんのツテをフルで使い、冥王でも一番の病院の個室に入れてもらった。
木の温かみがある高級感あふれる個室、そこに力無く横たわるのがミリア、俺や紫崎さんを守るために…
その時、突如病室の扉が開く。
「柊、これから緊急手術に入るらしいぞ」
いつもは余裕溢れる感じの男なのに今は焦りが全身に伝わっている。
「ミリア…俺達の為に…」
先ほどまで俺達は楽しい幸せに包まれた時間に浸っていた。
それはミリアが理想とする日常の幸せ。
でも、彼女の過去が今の幸せを壊しに何度もやってくる。それは払う事の出来ない強力な呪い。
「医者の話によると、ミリアの体は異界の医学でも不明な体の構造をしているらしく、回復魔術や一般的な治療も効かないんだとよ」
「魔女の一族は戦闘者に何かしらの改造をしていたのか?」
今思い返せば、彼女が傷ついたのを見るのは今回が初めて、今まではどんなピンチにも駆け付けて全てを彼女が救っていた。
繊細で高度な飴細工のような魔力の体、玄さんはそうつぶやいた。
「手術しても元通りに傷がふさがるかは不明らしい、回復魔法もどこまで効くか運らしい」
「そんな…ミリアは助からないの!?」
「今俺達ができることは信じる事だけだ」
おじさんはいつでも頼りになる、絶対に弱音を吐かない。男でも惚れそうだ。
「不可能かもしれないですし、確率は凄い低い、でも一つだけ方法があります」
俺はおじさんにとある作戦を告げる。
「それは…あの日の…」
俺達の会話が途切れたと同時、個室に大量の看護師と医者が押し寄せ、あっという間にミリアは運ばれてい行った。
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今まではドラマや漫画の世界だけだと思っていた。手術室の前で家族や大切な人の無事を祈ることなんて。
「大丈夫だ、あいつは必ず戻ってくる」
鬼島も諦めてない、相変わらずこの事務所の男性は男気がありすぎる。
「だが、ノクスレインの奴らがこの瞬間を狙ってこないとは限らない、油断は出来ねーぞ」
玄さんはどこか殺気立っていた、娘も同然のミリアをやられて怒っているのは俺だけじゃない。
「ノクスレインの連中はまさに規格外としか言えない」
そう玄さんがつぶやいた時だった。
「なんか、ヤバい!!」
俺がそういったその刹那、耳を切り裂くような轟音が響き渡る。
「敵襲か???」
「いいぜ、路地裏のリベンジだ」
俺達三人は廊下を飛び出し窓から外を覗く、その先に広がっていたのは最悪の光景だった。
「火事だ…だが火力がおかしい」
十何階だての高級病院の半分、文字通り俺達のいる東側の病棟からその先が完全に火に飲まれていた。
「奴らの仕業か!!」
鬼島が火元の方に走りだす、俺もつられて追いかける。
「鬼島さん!!まって!!」
「二人とも!気を付けろ!!」
おじさんを残し、俺達は燃え広がる西側の病棟に向かった。
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「絶対、死ぬなよ!」
俺は可愛い奴らの心配をしながら、二人の背中を見守っていた。
(もう、絶対誰もやらせねぇ)
俺_龍門玄、自分のくだらない未練の為に便利屋を続けるみじめな男だ。
俺がやること、それはこの先の手術室を絶対に守ること、それだけだ。
手術室につながる一本の廊下、そこで俺は仁王立ち。
しかし廊下の奥から、悍ましい殺気を纏いながらこちらに歩く影が一つ。
「おい、こっから先は関係者以外立ち入り禁止だ、死にたくないなら消えろ」
俺の問いかけに帰ってきたのは___斬撃波!!
「てめぇ!!」
俺はとっさに取り出した鉄棒で弾く、施設に傷がついたら一環の終わりだ。
弾いた斬撃は氷…?冷たい礫が砕けて宙を舞う。
それと同時、高貴て落ち着いた女の声が届く。
「それに反応するとは、相当の努力と経験を積み上げてきたのだな」
それは、どこか人を図る傲慢さを孕む言葉。
「この先は行かせねーぞ」
「哀れだ、力なき者の末路はいつも」
そうつぶやく女の姿は、まさに騎士。女性的な可憐さと凛々しさを融合した青と銀の騎士とドレスを融合したかのような姿。
見る者の視線を独占する、魅力的な銀の髪。
「我が名はロウ・ノクスレイン。血と誇りを引き継ぐ魔女だ、使命を放棄した裏切り者を冥府に送る」
取り出したのは銀を吐き出す美しい洋風の剣、いや…ステッキ。
「俺はもう、誰も失わないぜ」
あの日に誓ったんだよ、俺は___もう失わない。
手に掴んだ幸せは何が何でも話さないってよぉ。
手術室につながる一本の廊下、そこで俺はノクスレインの刺客と斬り合う。
でも、この結末は予想をはるかに超える戦闘をなるんだ。




