【魔法少女#27】幸せの魔法少女
私の状況は最悪になり続けている。
腹に打撃をまともに食らい、銃撃のダメ―ジも刻まれている。
「私はただ皆を幸せにする魔法少女になりたいのに、なんで邪魔するの」
やはりノクスレインの最高クラス、2対1はきつい…
(ウルは影の能力に加えて基礎的なスペックが全て最高クラス、ナイフと銃の腕は達人の領域)
(しかも魔人ミラもふざけているようでウルの言う事をちゃんと聞いている、この狂人をコントロールできれば途轍もない戦力だ)
これはなかなかピンチだ、攻略の糸口が針の穴ほども見えてこない。
さらには影牢獄で一定の範囲から人間や対象物を遠くに出せない…
つまり移動魔法で無関係な人を助けることができない。なんなら私達の戦闘は見えないという便利な機能も搭載している。
もう、過去の自分を捨てたはずなのに、どんどん黒い感情が私を支配する
「悲しいね、あれだけ強かったミリアちゃんも、こんな襲撃で死んじゃうなんて」
「制服姿で死ねば私がそのままで永久に保存しておく、安心しろ」
全てを幸せにする…それが私の信念、これを曲げることはきっとない__そううぬぼれていた。
だってさ。
「お前ら二人…絶対に殺してやる…」
自分がピンチになった途端、その信念を曲げているのだから。
心にある迷いを消し、私は二人に向けて飛び出す。
「ミリア、やはり顔だけではなく心もタイプだ」
ミラも反応が速い、やはり魔人族相手の接近戦は分が悪いか?
奴が放つ暴風のようなフルスイングを掻い潜り、超近距離へと詰める。
「捉えたよ、ミラ!」
セオリー通りだが、振り終わりは狙う。
「ミリアちゃん、あんまりミラをいじめちゃだめだよ」
その言葉と共に背中に氷柱を入れられたかのような悪寒が走る。
ウルによる規格外の速射、攻撃の起こりすらつかめないほど磨かれている。
「うぅ!」
避け切れすに脇腹から鮮血が舞う。
「私の女になれ!!!」
「もう飽きたよそのセリフ」
ウルの攻撃の隙を狙う豪速の棍棒を何とか回避、目の前で空気が爆ぜている。
私は再びウル達から距離を取る、ここまで一方的にやられているのは初めてかもしれない。
(マジで強い、組織の最強各を二人相手は流石に厳しいな)
私の魔法は移動魔法、攻防ともに優れ、人助けもできる私の魔法。
(移動魔法を駆使して何とか乱戦に持ち込む、二人を連携させない)
私は覚悟を決め、二人目掛けてスタートを切る。
「勝負だよ、二人とも」
やると決めたらな、やるしかない。
先に飛び出してきたのはミラ。
「はぁああ」
小細工なしの刺突、私の本気なら化け物相手にも届くはず。
「その棒切れじゃ意味ないよ」
私の渾身の突きをミラはなんと強引に掴む、なんという度胸と腕力。
「私相手によくやった方だよ」
槍を抑えながらの強力な横薙ぎ、片腕とは思えない。
「まだまだ!!」
私は槍を掴みながら上に飛びあがる、しかし空中はまずい!
「私の弾丸を差し上げますよ、悪魔製です」
数発の銃声が鼓膜に響く、ウルの凶弾が迫る。
「私に二度同じことは通じないよ」
体を覆うのは私の魔法陣、予測が立てば移動魔法のカウンターは刺さる。
でも…弾丸は明後日の方に飛んでいく。
「ミリアちゃん、私がそんな優しいわけないよね?」
外れたウルの弾丸の先はなんと…戦闘に気付いていない一般市民。
回避の仕様のない凶弾が親子連れや学生の体を激しく撃ち抜く。
「なに…してる…ウル…」
私の中にある何かが音を立てて切れた。
「関係のない人達に何してんの?」
今までせめぎ合っていた幸せの願いと、全てを不幸にしようとする憎悪。
今までおじさんや柊、宗次郎が満たしてくれた私の青い”私”を真っ黒い究極の殺意が飲み込む。
文字通り、私の身に纏う制服の上に黒く闇を満たす衣装、悪なるの力が湧いてくる。
「不幸に…してやる、絶対に」
壊してやる、消してやる、不幸にしてやる。
あふれ出る憎悪が指先まで黒に染め上げる。
「おぉ、これが穿界の魔女!美しい女にそそられる」
「ミリアちゃん、いいの?撃たれた人を助けなくて、幸せにするんじゃないの?」
私の変化を見た二人にも、初めて険しさが覗く。
「可愛らしい呼び方で魔法少女とか言ってたけど…結局は魔女なんだよ」」
ウルの表情は相変わらず凍っておる。
「さぁ、盛大に不幸になってくれ」
もう私は止まらない…不幸にしてやる。
全てを不幸にする、それが穿界の魔女の本懐なんだよ。




