【魔法少女#12】魔女を狙う悪魔
俺が、便利屋 全助で働き始めて数日。
それなりに雰囲気を掴み始め、俺のつまらない普通は、ミリアによって変わった。
今日の事務所は妙に静かだ。おしさんは買い出しで外、ミリアも別件で出ているらしい。
残っているのは俺と鬼島の二人だけで、さっきから会話らしい会話もない。テレビの音だけがやけに浮いている。
目の前にいる鬼島は、ソファーに座ったまま、腕を組んで目を閉じていた。
寝ているのかと思ったが、微妙に眉が動いているので多分起きている。
「…あの」
「何だ」
相変わらず無骨な人、目を開けずに答える。
「ミリアって、いつもあんな感じなんですか?」
「知らねぇな」
即答、会話がここで終わる…そう、俺はまだ鬼島とは仲良くなれてない。
その気まずい雰囲気を吹き飛ばすかのように、バンッ!!っとドアの音がする。
ドアから何かの影が飛び出してくる。
「あ、兄貴!!」
飛び込んできたのは、見たこともないような男、息を切らしていて、顔が真っ青。
頭には角…鬼人族か。
「ショウ…何かあったのか」
鬼島の目が開く、その低い声は冷静だった。
「やられました…俺らの集落が」
ショウという男は肩で息をしながら言った。その言葉で空気が変わる。
「何だと」
鬼島が立ち上がる、集落とは何なんだ?
「冥王市の2丁目の裏通りが突然…でも人間でも行政でもないんです!」
俺はその言葉で思い出した、人間に騙された異界人や行き場を失ったやつらが集まる場所、小さい時から親に近づくなとは言われていた。
「それで、じっちゃん達は無事か?」
「わかんねぇけど…でも…全員は逃げきれてない」
ショウの声は完全震えている、一体何なんだ。
その瞬間、鬼島の空気が変わっていた。
「行くぞ」
それだけ言って事務所を飛び出していった。
「え、ちょ!俺も行く」
「来い」
振り返りもせずに言う、その迫力は凄まじい。
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現場に近づくにつれて、空気が変わっていくのを感じる、人の気配が減って音が消え、嫌な臭いが混じり始める。
「…ここだ」
ショウが足を止める。路地の奥、薄暗いその先の、ボロボロのトタンで作られた家屋が並ぶ。
異界と人間世界が繋がったことで生まれた…現代の闇。
「…っ」
人は衝撃的な光景を目にした際、言葉が出なくなる、初めて経験した。
手作りで作ったであろう家の壁は崩れ、地面には多くの異界人が血まみれで転がっている。
「みんな!!」
ショウは鬼人族の男性を抱きかかえる。
「俺は…生きてる…みんなも”アイツ”には殺されてない」
その男性は絞るように話す、周りの犬系の亜人族の男性も、傷は追っているが、まだ息がある。
「まだ動ける奴探して、病院にみんな連れていく!」
ショウが負傷者を助けている間、鬼島はさらに駆け足で奥に進む。
「あ、待ってよ」
俺もついていくしかない。
「みんな…頼む」
鬼島の無表情が、初めてくずれた気がした。
そして_____奥でさらに衝撃的な光景が目に入る。
「…だれだ、てめぇはよ」
鬼島の声の先、そこにいたのはどこにでもいそうな一人の少女だった。
制服にローファー、青黒のメッシュのショートカットが闇でも映える。
ただ一つ、今どきの女子高生とかけ離れているのは__
手に握られている鬼人族の大男を片手で持ち上げていることだ。
「やっと来ちゃったね、悲しいな」
少女がぽつりとつぶやいた、ゆっくりと振り向く。
笑顔なのに目が笑っていない。視線が合った瞬間に背筋が凍る。
額の青い二本の角は、明らかに鬼人族とは違う禍禍しさ。
「待ってたよ、便利屋さんのお助けマン」
感情が一切籠っていない、でもその言葉には確かに強い殺意が乗っている。
「…てめぇがやったのか」
鬼島が前にでる、その迫力はまさにティラノサウルス。
「そうだけど」
返事があまりにも軽い、その雰囲気はまさに異質。
「悲しい不幸な異界人をいじめられたら、君達、必ず来ちゃうもんね」
まるでゴミを投げるように男をぶん投げたその少女は、ゆっくりとこちらにやってくる。
取り出したのは、拳銃と紫のナイフ。
「柊、下がってみんなを助けてやってくれ」
短く、有無を言わせない圧力、空気が一気に張り詰める。
鬼島が取り出したのは、灰色のバット、汚れから使い込まれたのがわかる。
「本当はミリアちゃんがよかったけど、仕方ないかな」
「てめぇ、マジで何モンだ?」
両者の猛者が向かい合う路地、この路地がさらに闇に沈んでいく。




