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【魔法少女#10】これからの”普通”

魔女とは、魔力を支配し、この世の理に干渉できる崇高な種族。


私が生まれた時から、周りの大人たちから常に言われてきた。



お前は、この魔法を人間から取り戻すために産まれてきた。


薄暗い地下室、今にもたまに夢に出るよ。


笑顔は必要ない、お前たちはただ私達の言う事を聞けばいい。


そうすれば___


【幸せになれるぞ】



私の見ていると不快で全身をかきむしりたくなるこの夢は、いつもここで終わる。



______________




教室の扉を恐る恐る開ける、”あの日”起きたことが全て無くなった、と信じて。



「おはよう」


「柊君おはよう」


「透、おはよ」


俺は何もなかったように帰ってくる。


(あの日の出来事は…本当に夢だったのか?)


昨日満点を取った女子生徒は普通に登校している。


彼女が死んだ男子生徒は、普通に彼女と話している。



破かれた紙、それが元に戻すのは現象だけであって、使用者の記憶だけは消えないのか…


だから俺と老婆は願いが戻っても、記憶だけは残っていたのか。


(でも…)


俺が望んだ”特別”、でも、それは俺のコンプレックスが生んだ曖昧な幻想。


それのせいでクラスメイトを傷つけ、そして殺した。



そこから意味の分からない、自称魔法少女のミリアが突然助けに来てくれた。


便利屋”全助”、そのモットーは俺の依頼の中でも徹底されていた。


【私が全部助けて、そして幸せにするから】



魔女、魔法、魔道具、そして_魔法少女。


そして、謎の組織とミリアの関係。昨日の依頼はまだ喉に掛かった小骨のように飲み込めていない。



________________



放課後、あの日勇気を出して訪れた雑居ビル。


小さな看板には、あの魔法少女の信念が刻まれている。


【全部必ず助けます。便利屋 全助】



年期の入ったドアを開け、事務所の中に入る。


「こんにちわ~」


俺の声に気付いたのか、今日からの特別がやってくる。



「来ると思ってたよ、柊君、ようこそ、便利屋全助に」


「まだ、聞きたいことが山のようにあって」


そう、まだ不完全な幕引き、結局彼女は何なのか、魔女とは?



「まぁ、とりま座ろ、私も話したいことあるし」


そういって俺達はソファーに腰かけた。



「あの日の老婆は何者だったんですか?そして、あなたも」


「ミリアでいいよ」



名前呼びが許可され、ミリアの差し出したお茶を飲む。


「まぁ、ザックリ言うと、私も昔は魔女だったのさ、でも魔女って悪いことしかしないし、ダサいから組織抜けて、魔法少女として生まれ変わったんだよね」


「そ、そうなんすか」


「そそ、あの老婆も見たことある気もするし、多分同じ組織の人」


「いやっそれは分るんですけど」



俺が何かを言いかけた時、ミリアが手を差し出してきた。


「ねぇ、全助に来ない?あの日の約束、私果たすよ」


「いや突然すぎません?」


「ちょうどいま人数少なくてさ、私含めて3人しかいないんだ!おじさんはオーナーでやる気ないし、毎日”特別”だよ!」



正直、まだ彼女の事はよくわかってない。


全部助けるなんて信念で便利屋にいるのか、魔女組織とは何なのか。



でも…俺は、この誘いを、普通を特別にする儀式を待っていた。


「いいんですか?」


「うんうん、丁度人間の従業員欲しかったんだよね、うち、オジサン以外、異界出身だったし」



俺は、迷いなく彼女の手を握っていた。


「私の名前はミリア、多分君と同じ年の17歳だからタメでいいよ」


「俺の名前は柊透、異界の事もなにも知らないけど、全部助けることを助けるよ」



こうして、俺はよくわからないまま、便利屋全助に加入することになった。

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