【魔法少女#10】これからの”普通”
魔女とは、魔力を支配し、この世の理に干渉できる崇高な種族。
私が生まれた時から、周りの大人たちから常に言われてきた。
お前は、この魔法を人間から取り戻すために産まれてきた。
薄暗い地下室、今にもたまに夢に出るよ。
笑顔は必要ない、お前たちはただ私達の言う事を聞けばいい。
そうすれば___
【幸せになれるぞ】
私の見ていると不快で全身をかきむしりたくなるこの夢は、いつもここで終わる。
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教室の扉を恐る恐る開ける、”あの日”起きたことが全て無くなった、と信じて。
「おはよう」
「柊君おはよう」
「透、おはよ」
俺は何もなかったように帰ってくる。
(あの日の出来事は…本当に夢だったのか?)
昨日満点を取った女子生徒は普通に登校している。
彼女が死んだ男子生徒は、普通に彼女と話している。
破かれた紙、それが元に戻すのは現象だけであって、使用者の記憶だけは消えないのか…
だから俺と老婆は願いが戻っても、記憶だけは残っていたのか。
(でも…)
俺が望んだ”特別”、でも、それは俺のコンプレックスが生んだ曖昧な幻想。
それのせいでクラスメイトを傷つけ、そして殺した。
そこから意味の分からない、自称魔法少女のミリアが突然助けに来てくれた。
便利屋”全助”、そのモットーは俺の依頼の中でも徹底されていた。
【私が全部助けて、そして幸せにするから】
魔女、魔法、魔道具、そして_魔法少女。
そして、謎の組織とミリアの関係。昨日の依頼はまだ喉に掛かった小骨のように飲み込めていない。
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放課後、あの日勇気を出して訪れた雑居ビル。
小さな看板には、あの魔法少女の信念が刻まれている。
【全部必ず助けます。便利屋 全助】
年期の入ったドアを開け、事務所の中に入る。
「こんにちわ~」
俺の声に気付いたのか、今日からの特別がやってくる。
「来ると思ってたよ、柊君、ようこそ、便利屋全助に」
「まだ、聞きたいことが山のようにあって」
そう、まだ不完全な幕引き、結局彼女は何なのか、魔女とは?
「まぁ、とりま座ろ、私も話したいことあるし」
そういって俺達はソファーに腰かけた。
「あの日の老婆は何者だったんですか?そして、あなたも」
「ミリアでいいよ」
名前呼びが許可され、ミリアの差し出したお茶を飲む。
「まぁ、ザックリ言うと、私も昔は魔女だったのさ、でも魔女って悪いことしかしないし、ダサいから組織抜けて、魔法少女として生まれ変わったんだよね」
「そ、そうなんすか」
「そそ、あの老婆も見たことある気もするし、多分同じ組織の人」
「いやっそれは分るんですけど」
俺が何かを言いかけた時、ミリアが手を差し出してきた。
「ねぇ、全助に来ない?あの日の約束、私果たすよ」
「いや突然すぎません?」
「ちょうどいま人数少なくてさ、私含めて3人しかいないんだ!おじさんはオーナーでやる気ないし、毎日”特別”だよ!」
正直、まだ彼女の事はよくわかってない。
全部助けるなんて信念で便利屋にいるのか、魔女組織とは何なのか。
でも…俺は、この誘いを、普通を特別にする儀式を待っていた。
「いいんですか?」
「うんうん、丁度人間の従業員欲しかったんだよね、うち、オジサン以外、異界出身だったし」
俺は、迷いなく彼女の手を握っていた。
「私の名前はミリア、多分君と同じ年の17歳だからタメでいいよ」
「俺の名前は柊透、異界の事もなにも知らないけど、全部助けることを助けるよ」
こうして、俺はよくわからないまま、便利屋全助に加入することになった。




