時間が、もう無いのです
桜の木は若葉をつけ始め、時はもう5月となった。
ゴールデンウィークのせいか、最近は病院へ来る見舞い客が多い。そうは言っても、直登はもう一人部屋である為、とくに接触はないのだが。
ぼんやりと外を眺めると、青く澄み渡った空が瞳に映る。
鳥のように、空を飛べたら。初めて、そんな事を思った。
飛べなくても、地を歩けるのだからいいじゃないか。今までは、そう思っていた。けれど、もう歩く事は出来ない。
それならいっそ、飛びたい。飛んで、彼の元へ行きたい。そうしたら、落ちて死んでしまっても構わないから。
「ナオ」
聞き慣れた声に、顔を上げる。
「大丈夫か」
大丈夫な訳ないじゃないか。そう言いたくても、掠れた声しか出ない。呼吸器が苦しいって、入院して初めて知った。
「み、つる…」
「何?」
なんて、穏やかな声を出すんだろう。
「外、行きたい…」
「分かった」
充はやんわりと微笑んで、直登を車椅子に座らせた。
「寒くないか?」
「う、ん。大丈夫…」
薄い部屋着にカーディガン一枚だけでも十分な程、外は暖かかった。
中庭では、小さな子供達がはしゃぎ回っている。その中には、手術を終えて退院間近な子もいれば、直登のように先が短い子もいるだろう。
どうして。そんな事を思ったらきりがないけれど、思わずにはいられない。
どうして、皆普通に生まれて来て生活しているのに、こんな医療施設で生活を強いられる子供が出来てしまうの。
決して生んだ親を責めてる訳でも何でもない。もしかしたら、この生活が普通だと思っている子供だっているかもしれないのだから。
ただ、それが無性に切なく思えた。




