02
なんだろう。腕にさらさらとした何かが触れる。
不思議に思って目を開けると、直登のベッドに腕と頭を乗せて、眠っている人。腕に触れていたのは、そのオレンジ色の髪だ。
「…んぁ…」
オレンジ色の頭がゆっくりと持ち上がる。
「おはよう、常磐」
「ん。おはよ、直登」
寝起きの為か、いつもとは違う表情でふにゃりと笑う燐。
そんな彼が、愛おしくて堪らない。この感情は何なのだろうか。
知ろうとは、思わない。知っても、きっと無駄だから。
「今日は?何してたの」
「うんと…。充と散歩、行ってた」
掠れる声で、それでもなお、しっかりと答える。この幸せな時間を無駄にはしたくない。
「充、って…」
「新井充。同じクラスだろう?」
「ああ、違う。そうじゃない」
燐の言葉に首を傾げる。
「充とは、友達?」
「?うん、友達」
幼馴染みでもあるけれど。
何が何だか分からないまま答えると、燐の真剣な瞳と目が合った。
「じゃあ、俺は?」
「常磐?」
「俺は、何?」
何?って、そんな事聞かれても。
「俺は友達、って思ってるけど…」
“俺は”という所が、妙に虚しい。燐が自分をどう思っているのかなんて知らないから、あまりでしゃばった真似は出来ないから。
「俺は、さ」
ドキドキする。友達否定されたらどうしよう。
「友達じゃ嫌だ」
「え」
どういう事?そう聞く前に、唇に何かが触れた。
「友達以上じゃなきゃ、やだ」
ゆっくりと離れて行く薄い唇とか、いつもとは違う子供っぽい口調とか。全てがどうしようもなく愛おしく思える。
好き。そう、そんな感情だ。
「俺は、直登の事が好き」
燐の言葉に、心臓がバクバクする。
何?それは、自分と同じ気持ちだと思って良いのか。
赤い顔を隠すように俯くと、点滴の管が目に止まった。
途端に、我に返る。
「…ごめ、ん…」
そう言うのが精一杯だった。
「なお…っ」
「ごめん」
名前を、呼ばないで。心が揺れてしまう。
俺にはもう時間がないんです。だから、ごめんなさい。




