第38話:空気が台無しなんだが。
ルースト様は重ねた分厚い本に浅く腰掛け、こちらを見下ろしている。
「どうしてそのようなことを聞いてくるのですか?」
警戒しつつもここは慎重に。怪しまれていることは事実だから下手に嘘はつけない。
私が疑問に思っていることはあちらも疑問に思っているはずだから。
「例えばお前は俺がどんな行動を取って始めても必ず敵対する存在だったこと。
しかも時渡り魔法のをお前はよく知っていた。普通は興味すら持つことはない。」
ルースト様の目は私をまっすぐと見めている。
まるですべてを見通すように、静かに凪いで。
これは隠すことは難しそうですわね。嘘をついても見破られる。
「そうですわね。確かに私は何度も繰り返しています。」
でも、これだけでは足りない。正確な理由はこれではない。
「いいえ、違いますわ。私は貴方方に繰り返させられています。」
キッと彼の瞳を睨みつける。
怯む様子もなくルースト様は座っている。
私が起き上がって体を確認し始めてからもルースト様は動かない。
よし。先程飲み込んでしまった泥も体内に残っていませんわね。
むしろそこから動きたくないかのようにも見える。
「そうか。お前から見たらこちらが繰り返すのがおかしく思えるのか。」
「ええ、もちろん。」
沈黙が書斎を包み込む。
ルースト様のテーブルの上には時渡り魔法に関する本が山積みになっていた。
肝心のこの書斎の主は積み上げた本の上に少しヤンキー的な感じで座っている。
一冊づつ手にとってパラパラとめくってみる。
”時渡り魔法の起源”、”魔力余波の影響を受ける子供”
たくさんの単語が分厚い本の中に書き込まれてあり付箋が貼ってある場所もある。
テーブルの真ん中に堂々と存在する紙の上には時渡り魔法をまとめている。
”つまり、ユーリは記憶を持っているのか?”
そんな言葉が大きな紙の左下に赤色の線でなぐり書きされている。
私がルースト様のテーブルを物色しても、
ルースト様は怒るどころか経とうともしない。
「ところでルースト様?なんで本の上に?」
先程までは倒れていた私を見ていたのかと思っていたが流石にここまで動かないのはおかしい。普通論文は発表するまで誰にも見せてはいけないはずなのだ。
「あ、あぁこれはな、最近座って仕事をしていた影響で立ち上がれなくなってな。」
起こしてもらえないか。
とこちらに尋ねるルースト様には、
先程までのかっこよく決めていたけどキモい王子の面影を私は絶対見つけることはできないだろうと思った。




