第37話:遡り、また回る
「あー。今回のユーリさんも死んでしまいましたか。」
暗闇の中でルエが笑う様子はまるで積み木を倒して遊んでいる子どものよう。
邪悪で、冷酷な笑み。
その視線の先にはユーリが魔力を失い泥の中でぐったりしたままの姿が見つかる。
「前回とは違う言葉を発して止まったから生き残ると思ったのに。ざんねんです。
けれどこの顔もまたいいですねぇ。泥に塗れた顔も素敵じゃないですか。」
すっと手が暗い部屋から森の中へと伸ばされる。
少女の肌がもう一人の少女の指によって撫でられてもその瞳は動かない。
「私は貴方たちが嫌いです。私はこの世界が嫌いなんです。すべてを無くしたい。
けれど貴方たちは何度も止めてくる。本当に何なんですか。
私はきれいなエンドを迎えたいのですよ。今ここで潰すことも可能です。
しかし、貴方がいないと物語はつまらないです。
まぁフェルミナという方が本気を出してくれるので楽しくはあるのですが。」
動かなくなったユーリの周りをくるくるとまわり、
その体を優しく撫でたり、髪を結ったりして一通りユーリで遊ぶとルエは飽きたのかのように光に吸い込まれて消えようとしていた。
その目が泥の中から起き上がるユーリを捉えるまでは。
「はい?」
先程まで死んでいたはずの少女は、魔力反応すらもなかった少女は、
完全に生き返り転移魔法を妨害しようとしている。
その顔は泥に濡れ、髪はルエが遊んだあとのままであるのにもかかわらず。
「なんで生きているのですか?生命反応は消えていたはずです。」
しかし、ユーリは話すことができない。
泥を飲んでしまったため吐き出そうにもいま吐き出せば妨害ができなくなるから。
”《《もどれ》》”声が出せなくても。
”《《もどれ》》”相手の魔力が高くても。
ユーリは妨害を続ける。
その様子をみたルエは楽しそうに笑った。
「そういう粘着質なところが気に入ってるんです。
ですが今回はこれで終わりですね。それではさようなら。」
ゴツンという鈍痛が森の中に響き渡りユーリは本当の意味で動かなくなった。
「それでは」
ルエは楽しそうにこの時空から去っていった。
「おい、ユーリ起きろ!」
は?私先ほどルエさんに負けたところでは?
「なるほど、ルースト様も死んだのですね。」
「違うわ。」
それなら不思議ですわ。いつも記憶を思い出すのは六歳の頃なのにさっきのまま。
「お前が負けることを想定して体に魔法陣をつけさせてもらった。
お前の近くで転移魔法が発動されれば体が蘇生され、
死ねばこの時間に巻き戻すという魔法陣を、な。」
「なぜ、そんな魔法を?」
「お前、俺が繰り返したときの記憶があるんじゃないか?」




