第36話:消える
「爆発しちゃいますね。大爆発です。さぁ、ユーリさん達は直せるのでしょうか。」
暗闇の中で少女は踊る。楽しそうに笑いながら。
あぁ、ユーリさん。きっと貴方なら次の物語が作れるでしょう。
今まで私が見たことのない新しいお話が。
少女は変わらずにずっと暗闇で踊っている。
楽しそうに笑いながら。
聖女がいなければこの王国には敵が流れ込んでくる。
いや、むしろ聖女がいるからこその利用価値で生かされているという方が正しい。
走りながらつい、耳の横にある縦ロールを触ってしまう。
これをやってしまうのはいつぶりだろうか。
『ユーリはこれが一番に合ってるよ!』
『そ、そうかな?』
『そうだよ!明日もそれがいい!あと、髪の毛をイジイジするのをやめたほうがいいよ。せっかくのロールがほどけちゃう!』
『わかったよ。..がんばる。』
私は子供心にそれを頑張って直した。
でも、それが溢れ出てくるぐらいには緊急事態だ。
「フェルミナ様!フェルミナ様!」
山道を走り抜ける。こんなところをフェルミナ様が通るわけ無いとわかっている。
けれど、探さずにはいられない。
「なんで、なんで!私だから?フェルミナ様!どこにいるんですか!」
ロールがほどけ、ぐしゃぐしゃになった髪の毛を振り払う。
交通規制はされている。この国の外には行くことができない。
ならばこの国の何処かにいるか、違法な手段で移動したかのどちらか。
雨でぬかるみグチョグチョな泥に足が取られる。
足元をよく見るとブーツのヒールがなくなっていた。
フェルミナ様と2人で買いに行ったブーツ、最初はヒールが付いていた。
『ユーリは細身なんだからヒールが似合うって!』
そうやって2人で話し合いながら買い物に行った。
私は嬉しかった。何回分の記憶があってもこうして楽しめることが。
「フェルミナ様。フェルミナさま。フェルミナさまぁ!」
靴を支える支柱を失ったブーツを履いた足は前に進むことができなかった。
「フェルミナ様は、楽しくなかったのですか。
私と一緒に、買い物に行くのも。私じゃないとだめなんですか。
繰り返された私ではなく、一人の私が良かったんですか。」
白を貴重とした焦げ茶色の制服が泥と雨で汚れていく。
「フェルミナ様..」
崩れ落ちたときにはもう、私には魔力が残ってはいなかった。
手は泥に汚れ、髪はぐしゃぐしゃ。ただずっとフェルミナ様の名前を叫ぶだけ。
ここには誰も助けてくれる人はいない。
黒に染まる空も、次の日がやってくるときも、そこには動かない少女がいるだけ




