第30話:力の代償
ルエさんが部屋から出ていったあとも私の頭は鈍くいたんでいた。
顔の中で大きな鐘がなっているかのように、ずきずきと頭が痛み続ける。
「時渡りです」「時渡り魔法が」「ローズマリーを」「国を」「「助ける」」
頭の中で言葉がガンガン反響する。
まるで何回もの記憶があるかのように。
なぜ、なぜ。
「俺は」「時渡りの」「この国では」「「時渡り魔法」」「繰り返す」「魔力に」
なぜ。「時間を戻す」「分岐地点まで」「良いもの」「魔力に耐えきれる器」
記憶の中、何かが飛び出そうとする。ガンガンと音がなる。
「のために」「俺はの」「何度も」「進まなくては」「我らは」
なぜ。
なぜ、私には、ないのでしょう。
私は、わたしは、何人目のわたしなのでしょう。
昔見た伝記の中にあった古びた本。
その本によれば各国の王族は時巡りの魔法が使えるという。
そして時たまにその魔法に当てられ魔力量が増えたり、
《《別の時空》》から自分の人格がやってくることもあると。
何回、繰り返して、何回、違うわたしを私にして、ずっと繰り返して。
もう終わってしまいたいのに。繰り返したくもないのに。
なぜあの人達は胸を張って時を繰り返せるのでしょう。
この時空の自分を潰してまで進みたいものなの?
「いや、いや、いやぁ、いやぁああああ!」
何度も口から飛び出そうとする何かを押さえつけ飲み込む。
けれどその後も嗚咽は止まることなく、
その声は体の内側にある何かが口から流れようと暴れているようだった。
「は、はぁ、はっ、ふぅっ、はぁ、はっ」
息を整えましょう。
私が悪いわけではないもの。
「これは魔力の共鳴による事件であって、私のせいではないはずよ。」
感情を鎮めるために言い聞かせていいる声すらも震えて聞こえる。
ゆっくり開けた目から見える手は信じられないほど揺れていた。
溢れた涙はまだ頬に残っている。
けれど気持ちを切り替えていかなければ。
私が犠牲にしてしまったたくさんのわたしたち。
これからも増やすわけには行かない。ここで負の連鎖を断ち切って見せる。
手からまっすぐと魔力を伸ばして拘束器具を断ち切る。
思ったよりも順調に抜け出すことができたわね。
ルエさんが緩めておいてくれたのかしら。
拘束器具をそっと抜け出し、膝をつく。
今まで私が成り代わってしまったわたしに向かって祈りを。
「進む道、進んできた道、そのどちらにいる貴方にも、我が祝福を、我が敬意を」
ありがとう。わたしたち。そしてごめんなさい。
私は今回こそ終わりにして見せるわ。




