第3話:ただそれだけのために。
まっすぐローズマリー様のいる女子宿舎に向かうところを確認。
いやー、とりあえずルースト様が起きていなかったことに感謝するしか無いわね。
起きてたら私に命令したにも関わらず、自分から殺しにいってたわね。
あれ止めるの大変なのよ。
めんどくさい✕58ぐらいじゃないかしら。
私は投げナイフを持ってユーゴに近づいていく。
ユーゴの真後ろにたったとき、気がついたら目の前に高濃度の魔力が集まっていく。
この集まり方は火炎魔法かしら。どこかに魔道具を仕込んでいたのね。
地面に手をつき後ろに飛ぶ。先程までいた場所の手前に火の壁ができた。
警戒しているつもりなのかしら。
魔力式はもろ出しだけど。
「やあ、フェルミナ嬢のお友達ユーリ。こんな夜遅くにどうしたんんだい?」
「魔法を使ってきているんだから話すつもりなんて無いんでしょう?」
「まったくもってそのとおりだ。」クックックとおかしそうに笑う。
「そして、僕がローズマリーに近づくのを邪魔するつもりなら、早々にご退場いただこうか。」ユーゴめ。わたくしのことを舐め腐っておりますわね。
まるで溶けかけのアイスに群がるハエのよう。ウワァキモチワル。
「私が退場するですって?面白い冗談をありがとうございます。」
ゆっくりと魔力を練り上げながら、
周囲に音が漏れないように結界をはりながら、ゆっくり歩いていく。
「王子ルースト様の婚約者ローズマリー様に会いに行くなんて開いた口が塞がらないとはこのことですわ。貴方にはよっぽど常識がないんじゃないかしら。」
「王子」と「婚約者」のところでユーゴの顔が憎たらしげに歪む。
とりあえずローズマリー様とユーゴが結婚することなんて無いんだから。
水魔法を構築する。
フェルミナ様に幸せになってもらうためならなんだってする。
それが、王子を助ける道になっても。
「退場するのは貴方が先ですわ。ユーゴ・イワン令息」
冷たい殺気が含まれた魔力が結界内に満ちていく。
「ただ魔術が上手で、右大臣の娘なだけだ。お前なんかすぐに倒せる。」
小馬鹿にしたような態度。魔術を練り上げることもない。
この空間に貴方の魔力が入り込める場所なんて無いというのに。
「そうなんですね。それは素晴らしいことですわね。」
そんな世間知らずのお坊ちゃんにはきれいに微笑んであげる。
「でもわたくしはそんな弱くありませんの。ただ」
そう。ただ、ただフェルミナ様を守りたかっただけだ。
「ただあなたみたいな方から、フェルミナ様を守りたくて頑張ってしまっただけ。結果的にフェルミナ様のために、フェルミナ様のためだけに動いたらあなたと戦うことになってしまっただけ。」ユーゴが後ずさる。その手には剣が握られていた。
「だからすぐ倒せるなんて言われると困りますの。フェルミナ様が守れないので。」
きっとユーゴから見たらわたくしの微笑みは恐怖でしかないのでしょうね。
その恐怖と戦うことになってしまったのはほかでもない自分のせいなのに。
「あらあら、そんなに怯んでどうしたのかしら?そんなへっぴり腰で戦えるの?」
私の笑顔は崩れない。歌うように次の言葉を紡ぐ。
「さっさと終わらせましょうよ。ユーゴ」




