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勇気は剣より強く 〜なんでも屋が灯す小さな光〜  作者: かえる
序章 少女に灯る小さな光
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すれ違う二人

一話目のエピソードが長かったので、本エピソードに一部退避させました。


追加エピソードとかではないです。


 リオが家に来てから、七日が経った。


 一日目は体を清潔にして飯を食わせて寝かせた。

 二日目も飯を食わせて、風呂に入れて、寝かせた。

 三日目になってようやく、まともに歩けるようになった。


 四日目の朝はリオが起こしにきてくれた。


「おはようございます! アレンさん!」

「おはようリオ。元気だな」


 朝が苦手な俺にとって、リオの元気な目覚ましは少し嬉しかった。

 久々にしっかりと目が覚めた気がする。


 ……それだけに彼女の顔が俺の心に突き刺さる。


「リオ、起こさなくていいぞ」

「えっ……私……余計な事を……」

「……いや、すまん起こしてくれ」

「わ、分かりました!!」


 昔の事を思い出すからやめてくれ。

なんて事を、俺の過去を知らないリオにはいえなかった。

悲しそうな顔が見てられなくて、つい許してしまった。


「リオ、今日も留守番だ。ちゃんと昼飯も食って寝とけよ」


 朝食を終えた俺はギルドに納品する袋を用意しながらリオに話す。

ただリオはイヤイヤと顔を横に張って抵抗を示した。


「アレンさん! 今日こそ働かせてください!」

「いや、まだ無理するな。体が戻ってからでいい」

「戻りました! ほら!」


 リオは両腕をぐっと上げて見せる。

……細い。風が吹いたら折れそうだ。


「戻ってないだろ」

「戻りました!!」

「……はぁ、まあ、少しだけならいいか」


 食って寝てを繰り返すだけの回復も良くない。

筋肉もだいぶ衰えているようだし、ある程度の運動も必要だ。

少し歩けるようになったし、リハビリも兼ねて簡単な仕事は任せてもいいだろう。


「じゃあこれ、ミーナに渡しておいてくれ」


 俺はギルドへの納品物をリオに預ける。

納品物といっても、簡単に取れる野草ばかりだが。


「任せてください!!」


 リオは胸を張って袋を受け取る。

そして自信満々に一歩踏み出したところで──


「わっ……!」


 盛大にこけた。


「大丈夫か? 自分の足に躓いてたぞ」

「だ、大丈夫です!」


 リオは床に落ちた袋を拾うが……。


「あっお前、それ逆さ──」

「ぎゃーーー!!」


 盛大にぶちまけた。


「……ご、ごめんなさい!!」

「落ち着け。中身は壊れ物じゃないから大丈夫だ」

「はい……!」


 リオは顔を真っ赤にして袋を抱え、ギルドへ走っていった。

 ……走らなくていいのに。


 五日目の昼頃はリオに仕事と買い物を任せてみた。

するとミーナが苦笑しながら俺の家まで来た。

リオは買い物で留守だ。


「アレンさん……リオさん、頑張ってますね」

「何かあったか?」

「ええ、ギルド長への伝言を、ギルド長への伝言です!ってそのまま言ってました……ふふっ」

「……なるほど」


 伝言の内容を伝えず、伝言を渡す行為だけを忠実にこなしたらしい。


「少しテンパリすぎだな」

「まあまあ良いじゃないですか、元気があって」


 ミーナは笑いを堪えながらギルドの方へ戻っていた。

なお当然、リオの買い物は失敗していた。


 六日目の午後は家の掃除を頼んだ。


「任せてください! 掃除なら得意です!」


 そう言っていたが──


「アレンさん!! 床が……床が……!」


 床が泡まみれになっていた。


「洗剤、入れすぎたな」

「すみません……すみません……!」


 リオは必死に雑巾で拭くが、泡が広がるだけだ。


「落ち着け。ゆっくりやればいい」

「ゆっくりやったら……アレンさんに迷惑が……!」

「リオ……」


 その言葉に、胸が少し痛んだ。

迷惑だなんて一言も言ってないんだが……。


 そして七日目の夜。今に至る。

食事と風呂を終えた俺達はリオが淹れたお茶を飲んでいた。


 今日のお茶はちゃんと淹れられている。

葉っぱを口に入れたのか、と思えるような最初の味に比べたら成長を感じて、少し涙が出そうになる。


「アレンさん……私……今日も仕事に失敗してしまいました……」

「だからお前は今日、失敗していないって」

「でも……でも……!」


 今日リオにお願いしたのはギルドへ納品物を届ける仕事と、ギルドからの案件をもらってくる仕事。

それと仕事ではなく家事として簡単な掃除だ。


 そのうちのギルドから案件をもらってくる仕事をリオは失敗した……と思い込んでいる。


 理由は俺とミーナだ。

リオはちゃんとミーナからもらった案件を俺の元へ届けた。


 しかしミーナが渡しそびれた案件があったと俺の元にきていた。

それを発見したリオが自分が失敗した、と思い込んでしまっている。


 何度も説明はしたが、リオは少し思い込みが強い所があり苦戦している。


「今日だってリオは何一つ失敗してないじゃないか、お茶も美味しいよ」

「そんなのじゃダメなんです! まだ……私は……お役に……」

「何言ってるんだ、立ってるさ。掃除だってほら」

「立ってないんです──!」


 リオが珍しく声を荒げる。

その瞬間リオはハッとして顔を青くした。


「ごめんなさい……私……アレンさんになんてこと……」

「大丈夫だ。今は自分のことだけ考えろ」

「でも……」

「言っただろ、働ける体になるまでの契約だって、仕事なんて無理に覚えなくて良い。失敗もいくらだってして良い。今は自分のリハビリのためだけに仕事しろ」

「……」


 俺はリオを抱きしめ、頭を撫でる。

こうすると少しリオは落ち着いてくれる。


「……わた……いらな……こですかね……」

「ん? ごめんもう一回──」

「ご、ごめんなさい! なんでもないです!」

「リオ……?」


 リオはそういうと、俺からパッと離れて与えた自室に戻っていった。


「変なこと考えなきゃ良いけどな……まあ寝れば少し落ち着くだろ」


 何か嫌な予感がしたが、明日も早いため俺も眠ることにした。


 そして次の日。

リオはいつも通り俺を起こしてくれた。


「おはようございます! アレンさん!」

「おはよう……リオ。昨日はよく眠れたか?」

「はいっ! ばっちりです!」


 昨日のは俺の思い過ごしだったようで良かった。

少し目の周りが赤くなっているような気がするが、流石に気にしすぎだろう。


「今日の朝食はスクランブルエッグとトースト! スープにサラダです!」

「おぉ美味そうだな、ありがとう! ……でも、朝から頑張りすぎじゃないか」

「いえいえ! 全然大丈夫です!」


 俺はリオが作ったスープを見る。

野菜はいろんな種類が細かく切られていた。

スープを口に入れると魚介類の出汁が効いていて、良くできている。

だが……明らかに朝作るにしては手がかかりすぎている。


「リオ……無理……してないか?」

「無理なんてしてないですよ!」


 一瞬リオがビクッとした気がする。

俺はそれを見逃さなかった。


「リオ、大事な話が──」

「アレンさんっ! いますか! アレンさんっ!」


 俺がリオに声をかけようとしたその瞬間、ミーナの慌てた声が家の前から響いた。


「ミーナ? どうしたんだ、そんなに慌てて」


 扉を開けると、ミーナは少し息を切らしている。

 普段落ち着いている彼女にしては、珍しい様子だ。


「アレンさん……よかった、まだ家にいたんですね」

「どうした、何があった」


 ミーナは一度深呼吸をして、仕事モードの顔つきになった。


「ギルド長からの特別依頼です。それも緊急の……」

「緊急……ね。分かった。リオ、これからギルドに向かう。すまないが家にいてくれ。朝食食べれずにすまん」

「……わかりました」

「リオ……これは大事な……えっ? あ、あぁ」


 やけに聞き分けの良いリオに調子が狂ったが、すぐに整え出発の準備をする。


「じゃあリオ、行ってくるから」

「……はい、行ってらっしゃいませ」

「……ああ」


 リオに違和感を抱いたが、気にしているほどの暇はなかった。

ミーナがこんなに慌てるというのはかなりまずい状況なのだろう。

喉元まで出かかった違和感をなんとか飲み込み、ミーナと共に冒険者ギルドへと向かった。

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