54話 気持ちを伝えたくて
いつまでも抱き合っていたかったけれど、確認しなければならないことがある。
私たちはベッドの上で、裸のまま向き合った。
シューク様の彼自身を見たら、呪いの文様は消えていた。
彼の身体のどこにも、呪いは残っていなかった。
もう、シューク様が苦痛に脅かされることはなくなったのだ。
「ああ、これもすべてエクレーヌ、あなたのお陰だ。本当にありがとう」
「いえ、私ができることをしたまでですわ」
そう言いがらも、シューク様に褒められて嬉しくなる。
シューク様は、何かを決意したような真面目な顔をして私を見つめた。
「エクレーヌ、俺と結婚してほしい。こんな姿でプロポーズするのもなんだが、少しでも早く俺の気持ちを伝えたくて……」
「け、結婚……ですか……?」
まさか、こんなに早くプロポーズされるとは思っていなかったから驚いたけれど、断る理由なんてなかった。
私もそれを望んでいるのだもの……。
「シューク様、そのプロポーズ、お受けします」
私はシューク様の手をとり、彼の赤い瞳を見つめた。
「本当か?」
シューク様はまるで子どものように、とても嬉しそうな顔をして、私の手をぎゅっと握る。
「本当ですよ」
「ああ、エクレーヌ、愛している。もう、あなたは俺のものだ!」
そのあと、またシューク様は私をベッドに押し倒し……
愛の営みは夜明けまで続いた……。
夜が明けた後、少し眠っていたのだけれど、その後は、王宮内の皆様をお騒がせすることになってしまった。
「腰が痛くて動けない」
なんて言ってしまったものだから、シューク様は朝食をベッドまで運ばせて、「俺が食べさせてやる」と言ってきかなくて……。
結局、彼の手でスープもパンもお料理も食べさせてもらった。
私たちの婚約を、シューク様が嬉しそうに話すものだから、メイドたちを伝ってあっという間に広がった。
この後は、とんとん拍子に話が進んだ。
国王陛下とお父様が話し合った後、あっさりと結婚の許可が下りた。
シューク様は、バラの花束を抱えて正式にマドレ家を訪れ、お父様がいる前で、私にプロポーズをした。
そして、両家の了解のもと、結婚式は半年後に決定。
その間、私は王太子妃教育やら、ウエディングドレスの選定やら、結婚式の準備に慌ただしい日々を経て、とうとう、結婚式当日を迎えた。
王城内の神殿で、今日、私はシューク様の花嫁になる。
真っ白なウエディングドレスに身を包み、白薔薇の豪華なウエディングブーケ。
ショコラが一生懸命に施してくれた化粧のお陰で、私はうっとりするほど美しい花嫁になった。
神殿の祭壇の前で、シューク様が私を待っている。
私はお父様にエスコートされて、シューク様の隣に並んだ。
進行役を務めてくれる神官は、女性の神官様。
私がこの世界にやって来て、初めて祈りを捧げたときに、そばにいてくれた人。
女性なのに神官になれるなんてすごいなぁ、なんて思っていたけれど、すっごく徳が高くて半端なく偉い神官様だって後から知った。
だから王太子様の結婚式で、司会進行役に抜擢されるのね。
この神官様、私がお祈りを捧げているとき、一緒に祈ることもよくあって、そばにいてくれるとなんだか安心した気持ちになったわ。
まるで、私の成長を見守ってくれているって感じ……。
私が神官様の穏やかなお顔を見ながら、あれやこれやと考えていたら、神官様が結婚式の宣言をした。
優しく柔らかだけど、凛とした声が神殿に響く。
なんだか、声を聴いているだけで厳かな気持ちになった。
両家の紹介の後、誓いの言葉の儀式に移った。




