49話 怖い夢
「シャルロット様、今から三つ数えたら、あなたは眠りから目覚めます。いち、にい、さん」パチン!
最後に目の前で手をたたいた。
シャルロット様は、はっとした顔で目を見開き、周りを見回した。
「あら? シューク様とクリード様、それに聖女様まで、どうして皆さんここにいらっしゃるのですか?」
「お、お母様ぁ……」
フィナン様が泣きながらシャルロット様に抱きついた。
「あらあら、フィナン、どうしたの? 何か怖い夢でも見たのかしら?」
良かった……。
やっぱりシャルロット様は、催眠術にかかっていたんだわ。
「エクレーヌ、ありがとう。また、あなたに救われたな」
シューク様がほっとした顔で私を見つめた。
この後は、地下室にあった鏡を押収し、入手経路を調べたら、シャルロット様のお父様であるラング・ジブースト侯爵様が、魔道具商人から購入したことがわかった。
シャルロット様に催眠術を掛けた術者も見つかり、あっという間に犯人逮捕と相成った。
術者は「何故、俺の催眠術が破られたのだ?」と歯ぎしりをして悔しがっていたそうだけど、直前に神聖力で浄化したお陰で、私のような素人でも簡単に元に戻すことができたのだそうだ。
観念した侯爵様は、洗いざらい白状した。
侯爵家に生まれたシャルロット様は、六歳の年に闇魔法が発現した。
シャルロット様をいじめた子どもが、原因不明の病気になったことから、シャルロット様が闇魔法の使い手であることがわかったのだそうだ。
本来なら、魔法が発現したら、すぐに王宮に届けないといけないのだけれど、可愛い娘が闇魔法の使い手だと知られたくなかった侯爵様は、誰にも言わずに隠ぺいした。
その後シャルロット様は美しく成長し、側妃となってフィナン様を生んだ。
フィナン様はすくすくと成長し、目に入れても痛くないほどの可愛い孫になった。
その頃から侯爵様は、可愛い孫に王位を継がせ、自分は国王の祖父になりたいと考えるようになった。
初めの計画では、シャルロット様の闇魔法で、シューク様を呪い殺そうと考えたらしい。
だけど、聖女が現れたことで、その計画は潰れた。
闇魔法をかけたところで、聖女の力で癒されて、最悪の場合、シャルロット様に疑いがかかることも考えられるから。
諦めかけていたときに、シューク様が竜の呪いにかかった。
しかも、聖女には呪いを解く力がない。
これはチャンスだと思った。
自ら手を下さなくても、シューク様は死んでしまう。
ところが、これも頓挫する。
クリード様が、毎晩夜な夜なシューク様の呪いを解いているという噂が流れたから。
せっかくのチャンスをものにするためには、クリード様を殺さなければならない。
そこで考えたのが、クリード様も竜の呪いで死んだことにすることだった。
聖女は竜の呪いが解けないから、邪魔をすることはないだろう。
竜の呪いなら、シャルロット様が疑われることもなく、フィナン様が王位を継げる。
実によく考えられた計画だった。
可哀そうなのはシャルロット様で、催眠術を掛けられて、ご自身は何も覚えていないのに、クリード様に呪いの闇魔法をかけていたのだ。
私たちを止めた侍女は、侯爵様に弱みを握られていたから彼の言いなりで、シャルロット様を助けようとはしなかった。
すべてが明るみになった後、侯爵家は爵位剥奪、財産没収、侯爵様は島流しの刑。
シャルロット様は被害者として扱われ、刑に服することはなかったけれど、側妃の身分は剥奪された。
だけど、陛下の温情で、フィナン様の世話係として、今まで通りに側妃宮で母子ともに一緒に暮らすことを許された。
本当にどうなることかと心配し通しの事件だったけれど、一件落着して良かったわ。
今回の事件が早く解決したのはクラックのお陰だった。だから私はたくさんの報酬を彼に渡した。
クラックは、こんなにたくさんお金をもらっても、どうして良いのかわからないと言い出したので、銀行に連れて行って、彼の預金口座を作って預けさせた。
いつかきっと、クラックが独り立ちするときに、このお金は役に立つだろう。
終わりよければすべてよし……と、言いたいところだけれど……
シューク様の言葉で、シューク様の身体に、まだ竜の呪いが残っていることが、はっきりした……。




