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モブの聖女に転生したのですが、18禁BLの主人公を私が癒してもよろしいのですか?  作者: 矢間カオル


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35話 信じなさい

私はガトーさんとの話が終わると、しゃがんで男の子と目線を合わし、できるだけにこやかに優しい声を出した。

「ぼうや、今日はお姉さんと一緒にいましょうね。お家に帰らなくてもいいわ。帰ったらお父さんに殴られてしまうもの……」


「でも、帰らなかったら、父さんに殴られるよー」

また男の子は泣き出した。


帰っても殴られる、帰らなくても殴られる……

父親の暴力の呪縛から、逃れられない男の子の姿がここにあった。


「じゃあ、ずっと帰らなかったらいいのよ。そしたら、一生殴られることはないわ」


「そ、そんなこと……、できるの?」


「できるわよ。お姉さんを信じなさい」


「聖女様、本当に、本当に、家に帰らなくてもいいの?」

男の子は、すがるような目で私を見た。


「ええ、だから、私たちが帰るまでこの部屋にいてちょうだい。お父さんが来ても、絶対

に出たらだめよ」


「う、うん。」


「じゃあ、私が戻ってくるまで、ここでおりこうさんにしててね」




私とガトーさんは、部屋を出た。


「聖女様、あの子をどうするつもりですか?」

他の子どもたちに聞かれないように、ガトーさんは小声で話しかけてきた。


私も同じく、周りに聞かれないように気を遣いながら話す。


「今日は私の家に連れて帰ります。孤児院に預けても、父親が取り返しに来るかもしれませんから……」


「子どもを愛してもいない親が、あの子を取り返しに来るのでしょうか? いなくなって、せいせいするのでは?」


「子どもに暴力を振るうことで鬱憤を晴らすような親は、愛していなくても取り返しに来るのです。自分の玩具を取られた子どものように……」


私の場合は、祖母と法律が私を守ってくれた。

でも、この国には、子どもを守る法律がない。

なら、貴族の地位を盾にして、守ってあげることしかできないのだろう。




私たちがいない間にも、食堂の給食は順調に進み、並んでいた子供たちの最後の十人が入ってきた。


出された料理を、美味しそうに食べている。

食べ終わったら、どの子もお腹いっぱいになったようで、満足そうな顔をしている。


「聖女様、明日も食べれるの?」

私と目が合った男の子が、唐突に聞いてきた。


この子は以前に、苦しそうに咳き込んでいたのを、治療してあげた子どもだ。


今日は試験的な施行だと聞いている。明日のことは聞いていない。


私は返答に困り、ガトーさんの顔を見る。

ガトーさんはにっこりと微笑んで、大きく頷いてくれた。


ああ、良かった……。

私は胸をなでおろした。


「ええ。明日もここに来たら食べられますよ。だから、明日もお腹いっぱい食べてくださいね」


「わあ! 良かったあ」


嬉しそうに笑っている子どもの顔を見ていると、幸せな気持ちになる。


「ねえ、聖女様、聖女様が王太子様のお妃様になればいいって、母さんが言ってたよ。そしたら、このセーサクがこれからもずっと続くのにって……。そしたら、僕たち毎日毎日食べられるよね」


その子の言葉を聞いていた他の子どもたちも、口をそろえて言い出した。


「僕の母さんも言ってたよ」

「あたしの父さんも……」

「そうだ、そうだ、聖女様がお妃様になったらいいんだ!」



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