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モブの聖女に転生したのですが、18禁BLの主人公を私が癒してもよろしいのですか?  作者: 矢間カオル


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36話 父親

いきなりお妃様なんて言葉が飛び出したから、私は困ってしまっていたのだけれど……

子どもたちは、大喜びで、一斉に大合唱をし始めた。


「聖女様が、王太子様のお妃様になればいい! 聖女様が王太子様のお妃様になればいい!」


「あ、あの……みんな、ちょ、ちょっと待って……」

私はどうして良いのかわからなくなって、つい、うっかりガトーさんの顔を見てしまった。


ガトーさんはコホンと一つ咳払いをしただけで、止めてくれない。

なんだか顔が、少し赤くなっているような気もする。


「あ、あのね。そういうのは、王太子様が決めることだから、私に言っても……ね?」


「聖女様は僕の病気を治してくれたし、この食堂を作ろうって言ってくれたのも聖女様でしょ? 聖女様はこんなに優しいんだもの。僕、王太子様に会ったら、絶対に聖女様をお嫁さんにしてくださいってお願いするのになあ」


「えっ、あの……あ、ありがとう」

私は真っ赤になってしまった。


ちらりとガトーさんを見たら、なんだか嬉しそうな顔をしている……。


「私、厨房を見てきます!」

私はいたたまれなくて、その場を離れた。




最後の子どもたちが食堂を出て、あと片づけを始めたときに、入口から、男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい! 俺の子が帰って来ないんだ。どうなってるんだ?」

控室に隠した子どもの父親が、やってきたのだ。


子どもが持ち帰るパンを待っていたのだろう。

待ちくたびれて、結局自ら足を運んできたようだ。


騎士様たちが取り押さえて、食堂の中に入れないようにしてくれているが、父親は罵声を浴びせ続けている。


「騎士様か何だか知らないが、俺の子を攫って許されると思っているのか! 責任者、出てこい!」


私が出ようとすると、ガトーさんが私の肩を掴んで止めた。

「聖女様は、ここにいてください」


「いえ、ここは私が出ます。ガトーさんは私を見守っていてください」


私は怒鳴り散らしている父親の前に出た。


今にも殴りかかってきそうな勢いだけれど、騎士様が押さえてくれているから、きっと大丈夫。


「なんだ、お前、聖女様か? 聖女が誘拐犯だとはな!」

父親は酒臭い息で私に怒鳴りつけ、騎士様に押さえつけられながらも手を振り上げた。


私は一瞬、ビクッとたじろいでしまった。

幼いころに虐待された私の父と重なり、私を蝕んでいた恐怖心がよみがえって来る。


だけど、もう私は恐れない。

あのときの、何も言えず、父親の暴力が過ぎ去るまで、黙って我慢し続けた私じゃない。


私は大きく息を吸った。


「子どもを虐待する親は、親と名乗る資格はありません。あなたには、あの子を渡しません。帰ってください」


だが、このくらいで引き下がる親ではなかった。


「何? 虐待だと? 自分の子を殴って何が悪い。しつけだ、しつけ。お前なんぞにとやかく言われる筋合いはない!」


「お前は、自分の子を殴ったことは認めるのだな。」

後ろで見守ってくれていたガトーさんが、前に出た。





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