13話 貧民街
ガトーさんのことは、お気に入りの騎士様だと思っていたけれど、今は、それ以上の想いを抱いているのだと思う。
だから、許されたいなんて思うんだわ。
彼氏いない歴が長すぎて、恋という感情がいまいちわからなかったけれど……
私はガトーさんのことが、恋愛的に好きなのかもしれない……。
だけど……、彼は平民で、私は侯爵令嬢、もしもこれが恋だとしても、この恋が実ることはない……。
はあ……
私は大きなため息をついた。
「聖女様、到着しました」
ガトーさんの言葉で、私は現実に引き戻された。
私が、悶々と考え事をしているうちに、馬車は目的地に着いていた。
窓から見るそこは、町の病院ではなく、今にも倒れそうなボロボロの家が並んで建っている。
ガトーさんのエスコートで馬車を降りると、何かが腐ったようなツンとする臭いが鼻についた。
「ここは……?」
「貧民街です。聖女様がここに来たのはおそらく初めてではないですか? 嫌なら引き返しますが……」
ガトーさんのその言葉に、少し私はムッとした。
「私を待っている患者がいるのなら、私はどこへでも参ります。案内してください」
護衛騎士として同行したガトーさんとロミアスさん以外にも、数名の騎士様がすでにこの場所で待機していた。
貧民街は決して安全な場所ではない。
万が一のことを考えて、護衛の数を増やしたのだろう。
私はガトーさんに案内されて、比較的ましな家の中にはいった。
「聖女様、ようこそおいでくださいました。あのときは、本当にありがとうございました」
中にいた女性が私を見るなり頭を下げた。
ひき逃げされた子どもの母親だった。
「聖女様、ありがとうございました。僕の命が助かったのは聖女様のお陰です」
そう言ってくれたのは、私が助けた男の子だ。
私を待っていたのなら、どこか痛いところでもあるのかしら?
「ぼうや、どこか痛いところがありますか?」
「僕は痛いところはありません。聖女様を待っていたのは僕じゃありません」
部屋の中をよく見ると、奥の方に、子どもたちが五人、床に座っている。
椅子が二つしかないから床に座っているのは仕方がないんだけど、どの子も元気がなく、うつろな目をして、中にはゴホゴホと咳き込んでいる子どももいる。
状況がまだよくわかっていない私は、ガトーさんに説明を求めて視線を向けた。
「聖女様は、助けた子どもの、その後を気にしていたようなので、私が見に来たのです。その子は元気になっていたのでほっとしたのですが、貧民街に住んでいる子どもたちの様子がおかしかったので、殿下に報告しました。殿下は、こちらのご婦人に、協力してもらって、ここで聖女様に治療をしてもらうようにと仰せになったのです」
「なるほど、よくわかりました。お母さん、ご協力ありがとうございます。今から治療を始めますね」
「聖女様、ここに集めた子どもたちは、特に状態が良くない子どもたちなんです。どうぞよろしくお願いいたします」
子どもの母親は、申し訳なさそうに頭を下げた。
私は子どもたちを一人一人観察し、神聖力で治療をしたのだが、皮膚病や咳き込みなど、どれも、不衛生な環境と栄養失調が原因だと思われた。
治療をしていると、噂を聞きつけたのか、他の子どもや大人たちもやって来て、窓から中を覗いている。
「騎士様、治療が必要な人がいたら、その人たちも診ますので、声を掛けてあげてください」
騎士様は、皆に声を掛け、ひどい人から順番にと、一列に整列させてくれた。
さすが騎士様、仕事が早い。
整列した人の治療が終わった頃には、すでに夕方になっていた。
私は神聖力の使い過ぎで、へとへとになっていたのだが、最後までよく頑張ったと思う。
自分で自分を褒めてあげたいわ。
それに何より、人の役に立てたことがすごく嬉しかった。
でも……、今日の治療は一時的なもので、根本的な解決になっていない。
それが悲しい。
私はガトーさんに解決策について聞いてみた。




