第89話 即席三人パーティープラスあるふぁ
(*´ω`*)新しい女です。女騎士に女魔法使いです。
「―――て事で、俺の仲間に成ってよ。アーシャさんも宜しくお願いします」
「断るっ!」
「い、嫌ですっ!」
「⋯おい、此の段階で私に声を掛ける奴が居るか?」
クートは酒場に居たぼっち冒険者二人と、一人で酒を飲んでいたアーシャに同時に声を掛けた。仲間で騒いでるグループは大テーブルを占拠しており、ぼっちや少数パーティーの冒険者は店の端に追いやられる。そんな感じで、知り合いでもないのに固まってるぼっち三人に目を付けたクート。
「広義だと一人でもパーティー編成って出来るんだけどね。Dランク昇格クエストは一応三人からパーティーって認められるみたい。Eは二人で大丈夫だったんだけどね。困るよねー」
「勝手に話を進めるなっ!そもそも誰なんだお前はっ!?」
女剣士と云うより女騎士と云った出で立ちの女冒険者が誰何する。立派な鋼の鎧に剣。場違い感が凄い。
(仕事し難そうな格好だな⋯)
激戦区のモンスター討伐クエストならば兎も角、こんな辺鄙な所のクエストには似つかわしくない重武装だ。普通の冒険者ならば革鎧等の軽装だ。主力兵装が剣や槍でも、腰にナイフか何かサブウェポンは佩いているだろう。其れすらも無い。肉を解体する時も其のモンスターを斬った剣を使うのだろうか?
「わ、わわわたしの事は放置でお願いしますっ!。いいいない者と思って下さいーーーっ!」
よれよれの黒いローブを着た眼鏡の女魔法士が読んでいた本で顔を隠す。全体的にもっさりしており更に猫背だ。素顔も体形も良く解らない。
(黒いローブがくすんで灰色に見える。あ、袖が解れてるぞ)
女騎士の方も改めて見ると、鎧に汚れや傷が目立つ。メンテナンスする余裕も無いのだろう。二人共酒は飲んでおらず、一番安いメニューを食べていた。
(落差が激しいな)
大テーブルの連中は朝から酒盛りをしている。多分朝から飲んでると云うより、夜に帰還し朝まで騒いでた感じだろう。酔い潰れて寝てる人間も見える。
「俺はクート。Eランクの新人だよ」
クートの名乗りを受けて二人が反応する。
「Eだとっ!?新人でっ!?」
「もうEなんだ⋯年下なのに?」
ショックを受ける女騎士と眼鏡魔法士。そんな二人を見たクートの嗅覚が囁く。
(あんま強くなさそうだし他人と関わりが薄いっぽいし、多分⋯あの、二人だよね)
クートとは違う意味の有名人は何人か居る。其の内の二人。実力は無い事も無いが、協調性が無くて万年Fランクの、新人でもないがベテランでもない微妙なお年頃の準新人冒険者。底辺冒険者用の安いモーニングを食べてる所も判断ポイントだ。
(パンと豆のスープ⋯栄養足りないだろ)
懐事情も悪いのだろう。多分二人共今食べてる朝御飯が今日唯一の食事の筈だ。
「えーと確か⋯ラベリアとレビだっけ?」
「レベリアだっ!其れにこんなのと一緒にするなっ!」
「ラ、ラビですっ!⋯わわわたしも一緒にされたくないですーーー⋯なんて」
「何だとっ!?」
「ごごごめんなさいーっ!」
女剣士レベリアがぷりぷりと怒り、女魔法士ラビが怯えながらも割とハッキリ言う。
「良し、自己紹介済んだよね。早速クエスト行こうか」
「おい、私の事は⋯?てか全然人の話聞いてねぇな。こんな奴だったのか」
三人の都合を完全に無視して話を進めるクートに呆れるアーシャ。プリメリアの件から面倒見が良い奴か、自分の女に甘い奴なのかのどっちかだと思い込んでいた。しかし全然違ったらしい。
(コイツ、自分のヤりたい事しかやらんタイプだ)
長年の経験からアーシャが判断する。今日はアーシャは休みだった。特に行き付けの店も無いので冒険者達が良く使う酒場で朝から酒を飲んでいたら変な事に巻き込まれてしまった。
「ああ、くそ。そもそも受付嬢の仕事なんて受けるんじゃぁなかった」
クートが自分を見る目が変だったのは気付いていた。女として見られてる感じではない。感知スキルを使わなくとも、強さを測られてる感じは何となく解った。
「まぁ仕方無いか」
成り行きに任せる。面倒臭そうだがわざわざ席や店を変える気も起きない。結論、金さえ払ってくれるなら構わない。
「金で雇われんのが、私等だからな」
冒険者ギルド臨時職員の受付嬢。Cランク冒険者。そしてBクラス傭兵。其れがアーシャの正体であった。
「私は一人で良いっ!話し掛けるな無礼者っ!」
「いや、そんなんだからずっとFランクなんじゃないの?あ、此の肉山盛りメニュー下さい。後赤ワインかな?」
クートはウェイトレスに大人数用のパーティーメニューを頼む。
「くっ!?此の―――」
言葉を詰まらせる剣士レベリア。クートとは違う意味で有名な冒険者だ。クートも名前は知っている。冒険者ギルドで見かけた事も有る。本人確認したのは今日初めてだが他に該当者は居ないだろう。
(誇りを持つのは良い事だけど、其の重そうな鎧は脱いだ方が良いよね)
没落貴族の御令嬢。爵位は剥奪されていないらしいので元ではなく現役の貴族だが、領地も何も無い貧乏と云うか名前だけのお貴族様。剣一本で成り上がろうと企てるが、周りの平民冒険者達と馴染めずコミュ力不足で万年Fランクである。確か三年目らしいので十八歳だったか。
「わぁ、思ったより多いなぁ」
冒険者御用達の店らしく、頼んだメニューは直ぐに出て来た。そもそも肉山盛りメニューとは何となく余った肉料理をドカ盛りしただけのかなり雑な奴である。質より量、そして速度第一な肉料理である。
「此れはとても食べ切れないなぁ、困ったなぁ。あぁ其れと俺、酒嫌いなんだった。うっかりしてたわ。ん〜御免、此れちょっと食べてくれる?お酒も要る?要らないなら下げて貰おうかなぁ」
「待て⋯食糧や酒を無駄にするのは騎士道に反する。私が処理しよう」
運ばれて来た料理と酒を勧めるとレベリアは直ぐに食い付いた。プライドよりも食欲が勝ったらしい。肉を見る目がギラついててちょっと怖い。
「わわわわたしは別に〜危険なクエストなんて、し、したくないのでっ!」
「何か食べる?甘い物とか」
「いいいらないです〜っ!わわわたしは、本さえ有れば、其れでっ、良いので⋯」
「そっかそっか」
(おっと、食べ物じゃ駄目か)
よれよれローブの眼鏡魔法士を観察する。魔法使いのラビ。此方もぼっちで有名だ。魔法士ギルドは無所属。固定のパーティーは無く、偶に個人でクエストをこなしている。他者とは極力関わらない様にしており、其れなりの実力は有る筈なのだが此方も万年Fランクである。しかし魔法士は希少なので彼女はレベリアよりかは収入は有る。しかし彼女は収入の全てを本に費やしているので貧乏だ。
(お、此れが有ったな⋯使えるかな?)
「⋯此の本、知り合いから借りたんだけど、ちょっと難しくてさ。読んで貰える?」
クートは腰のポーチから小さいサイズの本を取り出す。其れを目にしたラビが眼鏡をずらして声を裏返らせる。
「そそそそそれはぁっ!?絶版に成った残月魔法帖の上巻ではないですかぁ〜〜〜っっっ!?」
(お、可愛いじゃん?)
眼鏡と前髪で隠れていた顔が見える。ラビはかなり童顔だが可愛い見た目をしていた。
(*´ω`*)ラビは間延びしながら吶ると云う独特な喋り方のTheコミュ障になっちゃった。間延びしてるのがデフォなのに慌てて喋るから吶る。そして自分の好きな事は流暢に饒舌に喋る。ヲタ。もっさりヲタです。此の世界だと17とか18は結婚して子供居てもおかしくないので、現実世界だと20半ばみたいな扱いかなー。30手前のカヤルとかは現実的だと三十路から四十路近いので結婚には焦ってます。




