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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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99/112

第90話 女騎士レベリアと魔法使いラビ

(*´ω`*)レベリアは可哀想な子なんでつ⋯

 残月魔法帖。下級魔法士昇級試験の勉強用にプリメリアが貸してくれた物である。物語調でユニークな固有魔法が随所に登場し、素人も玄人も夢中にさせる外連味溢れる奇書である。出て来る魔法は出鱈目な物が多く、一応は古典文学の大衆娯楽小説に区分される。しかし魔法学者、魔法研究者からするとしっかりした理論に基づいた設定がされており、どの魔法も実現可能ではあるらしい。


(読み物としても面白い。奇想天外な魔法使いの戦いは手に汗握るよね)


 プリメリア御嬢様が貴族パワーで取り寄せた稀覯本でもある。彼女の才能が開花した下地には、こうした書物に依る知識と教養が有る。確かにオーガへの恐怖や命の危機に依って覚醒は促進された。クートに抱かれた事でスキルや精神が安定はした。しかしやはり、実家が太い者は強いのである。


(俺ももっとちゃんとした本たくさん読まないとなんだけど⋯やっぱり男の子は英雄譚や冒険譚が好きなんですよねー)


 プリメリアがクートに此の本を貸したのは、完全な専門書だと取っ付き難いだろうと、ストーリー仕立ての物をチョイスしてくれたからた。其れが残月魔法帖、上の巻。


「―――の、写本だってさ。読みたい?」


 残念ながら原書ではない。何でも原書は読んだ者を本の中に吸い込み、物語の登場人物にしてしまうとか。実在するなら曰く付きの呪いのアイテムである。プリメリアが所持していたのは写本は写本でも第二世代と呼ばれる物だ。印刷技術等無い頃は口伝や書き写しが基本であり、書き手や語り手が好きにオリジナル要素を足してしまう。原書に近い此の第二世代の写本は結末が悲劇的だ。しかし、世代を経るとハッピーエンドに変更されていたり、受けを狙って恋愛要素が含まれていたりする。マニアは其の改変も受け入れたり解釈違いだと論争したりもする、らしい。世間で一番出回ってるのは挿絵付きの大きめの本である。クートのポーチに入るサイズだと第二世代ぐらいしか無い。其処で多分ラビは判断したのだろう。


「読む読む読む読む読むよぉーーーーっ!」

「うお、吃驚した。ステイ。ラビ、ステイ」

「ぐおおおおーーーっ!」


 思ったよりラビの食い付きが良いので焦らす方針に転換する。頭を抑えて本から遠ざける。すると少し掌が痺れる。背中の産毛もチリチリと逆立つのが解る。


(!⋯こいつ―――スキルがダダ漏れだ。コントロール出来てないのか?)

「う〜〜ん。借り物の大切な本だから、ちょっと又貸しは出来ないけど、俺とパーティー組むなら読ませて上げられるかも〜?」


 自分の女が貸してくれた大切な本を餌に、違う女を釣るクートきゅん。


(こいつの固有スキル、興味有るんだよね)


 魔法使いラビ。しかし他人からの依頼や勧誘は全て断っている。と云うか、話し掛けると逃げる。こんな場所で捕まえられたのは僥倖だ。


「おおおおお〜っ!おおうっ!おおおおおーーーっ!」

 

 クートは本をヒラヒラと動かす。クートの掌から解放されたラビは椅子から立ち上がり、本へ向かってふらふらと手を伸ばして来る。そして興奮の余り言語を失っている。


(あ、意外と大っきい)


 本を高く掲げると、ラビが其れ目掛けてピョンピョン飛ぶ。すると其の小さな体の一部がぷるんぷるん揺れている。背は小さい癖に其処だけ大きい。猫背なのは其れを隠す為でも有るのだろう。更にサイズの大きいローブを羽織り、本まで抱えられると実際の体形も判らなくなる。レベリアも鋼の鎧の所為で体形が解らない。没落するまでは栄養価の高い食べ物を摂取していたのでスタイルも良いだろう。


「俺と一緒にクエスト受けてくれる?」


 クートは肉と赤ワインをがっつくレベリアと、遂には本を掴んでぶらぶらぶら下がるラビに改めて問い掛ける。


「がつ!がつ!ごきゅんっ!―――げふっ⋯ふんっ!騎士は食わねど高楊枝。騎士としての誇りを安売りする気は無い」

「ううっ、わわわかりましたぁー。読みますから読ませて下さい〜」

(うーん、もう一押しかな?)


 何を言ってるのか解らないが、さっきよりかは話が通じ始めている。其れでもまるで異邦人と会話してるかの様に噛み合わない。しかし其れで問題無い。クートは二人を只利用しようとしてるだけなので、別に相互理解を深めるつもりも無い。今回のクエストだけ、パーティーを組めれば良いのだから。そんな三人を観察するクールビューティーが一人。


(問題児二人、いや三人か。よくも集まったものだな。⋯周りから私も同じに思われてるか?其れは嫌だな)


 つまみを齧りエールを飲み、渋面を作るアーシャ。プリメリアの件に変に口出ししてしまった事を後悔していた。こうしてクートが懐くと云うか、妙に信頼感の有る態度を向けて来るのが少々こそばゆい。確かにプリメリアの件でフォローはしたが、其れは其れだ。


(強い奴は嫌いじゃないけどな)


 アーシャはCランク冒険者。クートがDランクを目指してパーティーを集める事は予想範囲内。同行者に自分を指名するのは完全に予想外だった。昨日の今日で休みだったのが仇に成った。仕事中なら仕事を理由に断れたのに。


(余計な事に首を突っ込んだ。だから何時も自分の首を絞める事に成る。が⋯)


 とは云え、日々の変わらぬ受付嬢の業務に退屈していたのも事実。面倒事だが面倒事として楽しむ事も出来る。アーシャは暫く様子を見る事にした。


(受付嬢よりかは楽しめるか?)


 正規の受付嬢が無断欠勤したり有休を取ったりして人手不足だからと、事務処理能力の有るアーシャが呼び出されたのだ。彼女は傭兵として個人で依頼主と契約や交渉をするので、冒険者でありながらも書類仕事に精通していたからだ。


「二人にもメリットがあるよ。Dランク昇格クエストではあるけど、Eランク昇格クエストの条項も満たしてる。クリアすれば二人共Eランクだよ」

「本当か?」

「本を、読ま、せて⋯」

「ですよね?アーシャさん。あ、すいません。本日お勧めの魚料理と白ワインを一つ下さい」

「はーい!只今ーーー!」

「魚か、最近食べてないな⋯じゅるり⋯」

「確かに問題は無い」


 話を振られて溜め息を吐くアーシャ。


「Dランククエストに同行し、クエストクリアに貢献したFランク冒険者にはEランク昇格のポイントが加算される。一発昇格はしないがEランクに近付く事には成る」


 Eランクモンスター討伐が一番てっとり早いのだが、戦闘職ではない鑑定職や支援魔法士への措置である。ルカの様に弓矢での支援に長けた者も該当する。止めの一撃を見舞う前衛やド派手な攻撃魔法を使える者が目立つし、冒険者の花形ではある。しかし其れだけでは成り立たない。縁の下の力持ちみたいな者達が居て全て成り立っているのだ。クートも本来なら食材鑑定を活かしてそう云う道も有った。ダンジョンの奥底での食糧の管理は、場合に拠っては戦闘職よりも貴重だ。クート自身がやる気が無いので考えもしないが。


「おい、何故私に声を掛けた?」

「アーシャさん、強いでしょ?俺よりも、此の二人よりも」

「本を⋯残月魔法帖⋯写本、第二世代⋯」

「知ってるのか?」

「サラダも食べたい」

「見れば解りますよ。あ、サラダ大皿でお願いしまーす」

「そう云う意味じゃないんだがな」

「はーい、有り難う御座いまーす!魚料理と白ワインお待ちーーっ!」

「おお、魚だ」


 魚料理と白ワインが届いた。

(*´ω`*)⋯頭が

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