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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第86話 Dランク昇格クエスト

「凄いよシャロン」


 空中に張った鋼糸の上を歩ける程の身体能力。此れは明らかにシャロンから得たスキルだろう。しかし違和感も感じる。だが不快な違和感ではない。まるで⋯


(偶々気紛れで、思い付きで混ぜてみた食材がピタリと噛み合う様な、そんな感覚)


「んーシャロンのだけじゃないか、此れは。⋯⋯⋯プリメリアか」


 プリメリアより得た六属性魔法を操る術。其れが機能してる感覚が有る。物理的、身体的なバランス感覚はシャロンの物だろう。しかし其れとは別に、体内を巡る魔力の調和を感じる。光属性の魔力を飛散させずに空中に固定する照明魔法の様に、体がブレず、空中に固定されている。体を操る意識とはまた違う意識に依って肉体が維持、操作出来ている。


(内側と外側⋯とは違う。肉体と精神?肉体と魔力?―――いや、此の世の全てには魔力反応が有る訳で、広義だと体を動かすのも魔法反応にゃんだっけ?なんか言語化が難しいな。だが此れがアレだな)

「ウォン支部長の言ってた奴だな」


 六属性を満遍無く鍛える事で安定する魔力の波。其れが今クートの鋼糸渡りと云う曲芸に帰結してる。


「戦闘中に行えるかは微妙だけど。ハッタリか、奇襲には使えるかにゃ〜?」


 高所からの奇襲や、逆に高所への奇襲とか。初見殺し過ぎて同じ相手に二度は通じないだろうが、手札が増えるのは嬉しい事である。


「はっ!」


 クートはぐんっと鋼糸を踏み込み、反動で上空へ飛び上がる。体と一緒に爪先を鋼糸に引っ掛け強引に手繰り寄せる。チョッパーが地面から、鋼糸に括り付けた楔が街路樹から抜ける。其のまま体を回転させながらチョッパーや鋼糸を空中で巻き取る。


「へへっ」


 鋼糸を操りチョッパーを空中で振り回す。其処までの強度は無いので戦闘でやればアッサリ鋼糸は千切れてしまうだろうが、何かを斬らないならこんな大道芸みたいな真似も出来る。


「ふっ、と」


 地面に降り立ち、更に鋼糸を操り激しくチョッパーを頭上で回転させる。そして鋼糸を持った両手を開き、背中の鞘にガチンと納刀する。


「ざっとこんなもんで」


 何時の間にか周りに集まっていた見物人に道化っぽく頭を下げる。


「おおー」

「やるな兄ちゃん」

「かっこいーーー!」


 本当に即席の大道芸に成ってしまった。朝で未だ其れ程人通りが多くなかったが、クートの技を観ていた通行人達から拍手と声援を受ける。


「ほらよ」

「有り難う」


 チップ代わりに果物を投げてくれる露店の中年男性。集まった見物人が買い物をしてるらしい。ちょっとした客寄せに成った様だ。クートは果物を齧りながら帰路に就く。


「シャロンも偶には抱きに行くかぁ」


 クートがシャロンを丁寧に取り扱っているのは、抱けば得られるスキルが美味しいからである。残念ながらシャロンが求める愛とは程遠い価値観である。クートは女を物の様には扱わない。自分に有益なスキルの可能性を齎してくれる、美味しい食材として捉えている。食材は大切に育て、美味しくしてから食すのだから。


「超絶凄い大攻撃魔法とかは憧れるけどさ」


 クートが憧れるのは正にフラッペの様な存在だ。若しくは、金色フサフサ耳とモフモフ尻尾のお師匠様か。あの二人だけは頭抜けてる。正に別格の規格外。


「ま、取り敢えずはDランク昇格だな」


 雲の上に行けるかは兎も角、先ずは山を登り始めなければ話に成らない。山頂へ到達すれば虹の橋が掛かるかも知れない。未だ自分は山の麓で雲を月を太陽を見上げてるだけの小物なのだ。


「此のまま行くか」


 余り寝てないが、昨日から今日に掛けてプリメリアとシャロンの二人と寝ていたので体調は良い。其のまま冒険者ギルドへ向かうクート。


「お、居た居た」

「クート?」

「クー⋯ト⋯」


 今日は珍しく会えた。此の町の冒険者ギルドのロビーには酒場や飲食店が併設されていない為、余り長居が出来ない。誰かと会いたいなら近所の酒場やカフェに行くしかない。待ち合わせもそっちに成る。


「やぁレナ、ルカ。元気か?」

「クートこそ。なんか元気そうだね」

「クート⋯」


 受付カウンターに居たのはクートよりも背の高い筋肉質な少女、槍士レナ。そんな質実剛健なレナと違い、華奢に見えるが靭やかな筋肉美を持つ少女、弓士ルカ。大らかと云うか大雑把な性格のレナと、面倒見の良いルカ。二人は案外相性が良かった為良く一緒に居る。


「なんか良い匂いするし⋯石鹸?」


 レナが鼻をひくつかせる。


「風呂入って来たんだ」

「あー確かに、前嗅いだ匂いだ。公衆浴場だっけ」


 ルカもクートの匂いを嗅いで記憶を手繰り寄せる。


「⋯嗅いだ?」

「うん。同じ匂いだよね」


 ピリッとする二人。微妙な空気に成っていたが、クートは気にせずに二人を見定める。


(ルカは未だ殺しに慣れてないな。もしかして討伐数ゼロか?教官の影響かな?)

  

 クートも冒険者ギルドの教官システムは知っている。半引退のベテラン冒険者から無料で手解きを受けられる初心者の為の措置だ。メリットは有るがデメリットも有る。


(クエスト内容に口出しされる)


 ルカがモンスター討伐クエストを受けようとしても教官に止められている可能性が有る。ルカ自身の性格が戦闘に向いていない事も有り、未だFランクなのだろう。


(ルカ自身にはあんま用無いけど、今回は丁度良いな)


 クートの目的には合致した。


(Dランク昇格クエスト。昇格条件は確か―――⋯)


 ギルドが定めるDランク以上のクエストをE、Fランクの者達を率い、パーティーリーダーを務めながらクリアする事。其れに加えて⋯


(トロネさんは一般人だし、支部長もやってくれなそうだしなぁ)


 特例として冒険者ギルド職員の同行も許可されている。事後の審査も可能だが、パーティー内に冒険者ギルド職員、又は冒険者ギルドから委託された審査員を同行させる事も出来る。目的は過程の確認、リーダーシップが有るかどうかだ。単にクエストクリアだけがクリア条件だと、連携プレイをせずに脳筋パワーゴリ押しでクリアされてしまう可能性も有る。Dランククエストぐらいだと、個人の力で何とか出来てしまうのだ。


(CランクやBランクの昇格クエストはチームワークが無ければクリアが困難な為、此の微妙な審査が必須なのはDランク昇格クエストのみ⋯だっけ。いや、クエストの種類によってはソロでも大丈夫だったかな。まぁ今考える必要は無いか⋯⋯⋯)


 Dランククエストから難易度が上がり、只強いだけではクリア出来ない。仲間との協力やリーダーとしての資質を発揮しないとならないのだ。


(クリアだけを目指しても失敗したりもするとか)


 パーティーを危険に晒してクエストをクリアしてもDランク昇格試験には落ちてしまったり、逆に撤退してクエスト失敗してもパーティーを無事生還させた事で昇格試験を合格したりもする。冷静な判断力が試される。


(Dランクに上がる為、リーダーを務めてクエストをこなす。其の為にE、Fランクの冒険者が要る)


 同行してくれそうな冒険者ギルド職員はなんとか見つけるとして、今は仲間の確保だ。広義では一人でも一パーティーと数えるが、今回は三人が最低ライン。


(手早く済ませたい)


 採取や討伐クエストだろうか?何か良い案件が有ると良いのだが。


「Dランククエストを受けたい」


 クートはレナとルカに話を持ち掛ける。


「だからレナ、ルカ。俺と組まないか?」

「あたし達と?」

「ふーん?」


 レナとルカ、同期二人が顔を見合わせた。

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