第82話 Gランク冒険者プリメリア
(*´ω`*)おぱようございみゃす!
万能型であるプリメリアは各属性を安定して運用出来る代わりに、一属性ごとの出力はとても低い。もしも自分の特性を活かすなら、全属性同時使用が理想だ。しかし其れは魔力のロスが激しく現実的ではない。其処で思い付いたのが魔力のリサイクルだ。同時使用は無理でも連続使用ならばまだ地に足が付いている。しかし一度放った魔法の属性をもう一度変換するのは不可能だ。其処で魔力吸収の魔術式を影に走らせ、魔法が消滅するタイミングで其の魔力を一時的に吸収する。影に込めた追加の魔力と魔術式に依り別属性の魔法を放つ。リソースのロスを抑えた運用法である。此れならばクートの求めに応じられる。クートが憧れるのはド派手な大魔法だが、彼が本当に求めているのは地味でも息が長く利用価値の高い実用的な技術だ。
(クート様のお役に立てる)
一晩だけだがたくさん愛し合ったのだ。彼の事なら何でも解る。プリメリア自身は結婚や婚約に付いて乗り気ではなかったが、そうして尽くす様な献身的な姿勢は、貴族令嬢として教育された賜物である。自分で決めた相手には全力で尽くす。彼女はもうクートの妻なのだ。
(クート様は私が家を出る事を望んでる)
実はクートに其処までの深い考えは無かったのだが、プリメリアはそう解釈する。
(でなければ私を冒険者にしないでしょう)
貴族令嬢として生きて来た自分が外でやって行けるか多少の不安は有る。しかし其の逆は無しだろう。クートの様な男が貴族としてやって行けるとは思えない。冒険者の中には功績に依り叙爵される者達も居る。しかし彼等は爵位を持っても貴族として生きる訳ではない。爵位を盾に貴族からの無茶振りを断る様な使い方しかしない。
「凄いよプリム!」
(凄い。良いヒントだ⋯まぁ俺はあんまり放出系の魔法使わないけど。ロスを抑える魔術式は素晴らしい)
プリメリアは正解を踏んだ。クートの中でのプリメリアの利用価値がぐんっと上がる。
(鍵は闇属性か。闇は全てを吸収する―――)
何かが閃きそうな予感が有るが、今は其のタイミングではない。
(殺したい。より強い敵を)
オーガ程度では新たな閃きを得られなかった。ならば挑むべきは―――
(Cランクモンスターか)
プリメリアの才能の発露はクートの闘志に火を着ける。
「解った解った。良く解らんが解った」
支部長が両手を上げて降参する。長々と詠唱していたり、威力がショボかったら不合格と伝えるつもりだったのに。
(しかしなぁ)
クートにはクリティカルヒットしたが、支部長的にはとても地味に見えた。難しい所である。高威力の魔法を一発撃てば支部長の印象は良かっただろう。しかし其れではフラッペの下位互換にしか成らない。クートに必要とされない。
(嬢ちゃんの才能が凄いのは認める。だがなんかもう一押し欲しいんだがな⋯)
悩む支部長。彼が納得しないのではない。上や彼女の親族を納得させるだけの物が欲しいのだ。
(嬢ちゃんのレベルの魔法なら魔道具で代用出来る)
魔銃と云う魔道具が有る。魔術式を刻んだ弾丸を込めて引き金を引くだけで魔法を放つ魔道具だ。一般には出回っていない高額で希少な武器だが、其れを連想した。あの魔道具は属性の違う魔法を連発出来るからだ。
「うーむ。プリメリア嬢の実力は、認める、が⋯」
歯切れの悪く成る支部長。其処に助け舟が来る。
「採用しなよ」
「え?」
「アーシャ?」
例の見慣れぬ受付嬢が此方へ顔を出していた。
「アンタ等が要らないなら、私等が貰うよ」
「お前どの立場で言ってんだよ?」
「私はあくまで金で雇われた臨時職員だ。忘れたのか?」
アーシャの返答に支部長が苦虫を噛み潰した様な顔をする。
(臨時職員?正規職員じゃぁないのか?)
子持ちパート主婦にも見えない。其れに⋯
(私等って何だ?)
色々と気に成る女性である。
「解った、解ったよ。採用だよ。合格だ」
「有り難う御座います」
プリメリアがアーシャに向かい頭を下げる。貴族令嬢の丁寧な態度にアーシャが少し目を見開き、手を振ってから其のままギルドへ戻って行く。まだ仕事が有るのだろう。
「支部長、有り難う御座います」
「まぁな。御貴族様に睨まれようと、こんな逸材逃したら冒険者ギルド支部長じゃねぇわな。俺が全面的にフォローするよ。プリメリアの嬢ちゃんは冒険者にする」
「おお」
「有り難う御座います」
今度はクートが拍手し、プリメリアはスカートの裾を摘んでお辞儀をした。
(アーシャ、ね)
「ややこしいんだがな。特例に特例を重ねる。冒険者ギルド本部にも打診しとくさ。俺の主観だが、嬢ちゃんはDランクからスタートだな」
「D」
本当に特別扱いだ。貴族と云う身分は冒険者にとっては余り関係無い。プリメリアの実力への評価だろう。
「魔法使いは貴重なんだぞ?支援魔法の使い手だって引く手数多だ。其れが六属性使いだって?しかも攻撃魔法に偏ってる。嬢ちゃんが魔法士として成長すればAランクだって夢じゃねぇ」
「ほぉ⋯」
少し劣等感が擽られたが、其処までではない。やはりクートのコンプレックスは戦闘職に対するウェイトが重いのだろう。
「フラッペは?」
「アレは俺の手には負えんよ。正に規格外。Sランクだろ」
「Sかぁ」
フラッペの本気を一度は見てみたい。
「其れで私はどうなりますの?」
キョトンとするプリメリア。クートに連れて来られただけなので今後の展開が解らない。
「此のままだとDランクが内定したGランク冒険者って所だな。後見人は⋯」
支部長が考える。本来なら魔法職の冒険者に預けるのが一番だ。腕の良い魔法士の元でならプリメリアの才能は更に開花するだろう。しかし⋯
(恋多き此の俺の勘が囁いてる。嬢ちゃんが頑張ったのは此のエロガキの為だな⋯)
偶に居るのだ、恋愛脳で爆発的に成長する奴が。クートと引き離す事は避けた方が良い。此のエロガキは目を離すと違う女を連れている。其の内冒険者ギルド内で修羅場が起こるのは間違い無い。そんな時に六属性魔法使いが暴れ出したら誰も止められないだろう。
「クート」
「はい?」
「お前、Cランクに成れ。後見人をお前にしても良いがEランクじゃ示しが付かん。せめてCに成れ」
プリメリアを引っ張って来たのはクートだ。成人後にDランクが内定してる以上、其れまでにクートにはCランクに成って貰う。
「解った、ました」
クートは明確な目標を設定され、ギラリと目を光らせた。其の後は受付カウンターに戻り必要書類を書く。対応してくれたのはアーシャだ。
「さっきは有り難う」
「別に良い。余計な口出した」
アーシャの反応は淡々としていた。気紛れだったのだろう。
(猫みたいな人だな)
後ろ姿と歩く姿勢しか確認出来ていないが、其の動きだけで相当な実力者なのは解る。
(魔力感知⋯は、止めておこう)
目隠れ女子生徒のアドバイスを思い出す。此の女性に感知スキルを向ければ直ぐに気付かれるだろう。
「貴族を止めて冒険者か。風変わりだね。まぁ頑張りな」
「有り難う御座いますわ」
貴族を止める予定は今の所無いが、何れはそう成るだろうとプリメリアも覚悟を決める。本家筋と話を付けて来た婚約話を蹴り、クートと一緒に成ると言えば両親は激怒するだろうからだ。
(其れまでに強くならなきゃ)
プリメリアはそう密かに決意するのだった。
(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




