第69話 プリメリアさん家の私有地内ダンジョン
(*´ω`*)クート君は動物で云うと一見愛くるしくてペットにしたくなっちゃう珍獣ですかね。でも実は爪に毒が有ったりするし矢鱈頑丈で非常に好戦的ですね。ラーテルとかクズリとか?
「ふぅ⋯で、では話は着きましたわね?貴方の実力が本物なら私達に見せて下さいまし。一緒にダンジョン探索に向かいましょう」
顔を赤らめたままだが口調は元に戻すプリメリア。同年代の男の子と手を握ってしまった。顔は女の子みたいなのに手はガッシリとして硬く大きかった。良く見ると喉仏や鎖骨周りの筋肉は引き締まっている。親に甘やかされ、美味しい物をたらふく食べている貴族令息達の弛んだ身体とは⋯全然違う。
「ゴクリ⋯」
生唾を飲み込み動悸が更に早くなる。
(こ、此れは違うのっ!へっ、平民なんかに手を握られたからっ!其の怒りよっ!)
自分にそう言い聞かせる。焦らされた怒りも有るのでそう間違ってもいない。
「解った」
コクコク頷くクート。ダンジョン探索出来るなら是非も無い。モンスターを倒すならフィールドを歩けば良いだけだが、折角ダンジョンに行けそうなのでそんな事はわざわざ提案しない。
「所で責任は?」
「責任?」
ダンジョン探索に興奮しつつも一応の確認だ。
「そんな物⋯勿論私が取りますわ。だって私のダンジョンですもの」
プリメリアは自信満々に応える。
「じゃぁ契約書を」
「細かいですわね。まぁ良いですわ」
魔法科分校の有る別館からゾロゾロと本館の方へ戻る。そして魔法士ギルドのカウンターに行き必要書類を用意する。費用は全てプリメリアが持つ事。死亡や怪我は全て自己責任。クートはEランク冒険者でなく初級魔法士として貴族令嬢の指名クエストを受けた事。其れ等を正式な書類として記す。
「え?俺達も?」
プリメリアの取り巻き達にもサインを頼むと少し腰が引けていた。死亡しても自己責任と云う所に怖気付いたらしい。
「あれ?怖いんですか?」
「だ、黙れ平民っ!」
「魔法科の生徒を舐めるなよっ!」
煽ったら簡単に書いてくれたので助かったが。
「此れで良し」
ザッと内容に目を通して満足するクート。其の書類に封をして受付嬢⋯でなく受付に居た男性魔法士に手渡す。冒険者は荒くれ者の男が多いので可愛い女の子が望まれる。しかし魔法士は実務優先なので受付に立つ人間は能力の高い者が男女関係無く配置される。
(あ、此の人も強いぞ)
下級魔法士昇級試験の時の柔和な試験官程ではないが、チリッと肌が粟立つのが解った。
「あのーすみません」
「はい、何でしょうか?」
微笑みながら格下であるクートに対応してくれるのも好感が持てる。絶対に上級魔法士だろうに。
「フラッペ上級魔法士に渡しておいて下さい」
上級魔法士フラッペの弟子である初級魔法士クートは、何をするにも彼女の承認を得なければならない。なので勝手に提出するのでなく、承認待ちの書類を一時的に預けるだけとする。フラッペが此の書類に目を通した時点で承認せざるを得ない内容にしてある。
(此れなら一応問題は無いよね)
貴族からの依頼を断り難い魔法士と云う立場を悪用⋯否、上手く利用した抜け穴の様なダンジョン探索クエストである。此の手順を踏まれると、フラッペがクートを正式に処罰する事は出来ない。其の根回しも含めて怒られそうだけども。
(死亡はまぁ無いにしても、連れてる貴族の子女が怪我をした時の保険だ。フラッペが承認しないと、もしも怪我をされた場合、冒険者である俺の責任を問われる)
冒険者は基本的に一般人がモンスターに襲われてたら助けないといけない。余りに力量差が有る場合は其の限りではないにしてもだ。極端な話、後ろでニヤついてる僕ちゃん達が転んで怪我をしただけでもクートの責任にされる可能性が有る。其の為の保険。
(俺自身を人質にする様なやり方だけど。ま、良いよね)
同時刻、フラッペが冒険者ギルドの面々をやり込めてる手口とそっくりである。出会って日も浅いのに類は友を呼ぶと云うか、此の師匠に此の弟子有りと云うか、似た者師弟なのは間違い無いのだろう。
「解りました。お渡ししておきます」
「宜しくお願いします」
(此れで、ヨシ!)
そしてプリメリアの私有地内ダンジョンを目指して出発する一行。
「ダンジョン、ダンジョン」
馬車に揺られながら、クートは降って湧いたダンジョン探索のチャンスにウキウキワクワクが止まらない。クートとプリメリア達はプリメリアの自家用馬車に乗って郊外へ移動中だ。魔法士ギルドの馬車よりも大きく、複数人で座ってもまだ余裕が有る。只此れより狭いが魔法士ギルド専用馬車は防御結界の魔術式が刻んである。並の攻撃魔法なら暫く受けても耐えられる重装甲戦車なのだ。
「あら?そんなに楽しみなのかしら?」
くすくす笑うプリメリア。ニヤニヤ笑う取り巻き達。彼女達の目的は実に幼稚であった。
(ふんっ、直ぐに化けの皮を剥いであげるわ)
悪食フラッペがわざわざ冒険者ギルドから引き抜いた平民の魔法士。其の固有スキルは食材鑑定と聞いた。明らかに戦闘向きではない。馬鹿デカい包丁や手斧を背負ってるのも格好付けだろう。きっと戦闘ではフラッペに守って貰い後方で震えている事しか出来ない筈だ。
(どうやって魔法士ギルドに潜り込んだのかは謎だけど。きっとフラッペがコネを使ったんだわ)
逆恨みの醜い嫉妬心を可愛らしい笑顔で隠し、プリメリアが提案する。
「魔法士同士で戦う等野蛮の極み。是非モンスター相手に貴方の魔法の才を魅せて下さいまし」
「解った」
プリメリア達は全員固有スキルは魔法だ。其々得意な物は違うが、目の前の平民よりも強く優れた才能である。モンスター相手に何も出来ない平民魔法士を皆で嘲笑った後、華麗にモンスターを倒すのだ。勝算や安全性は勿論有る。プリメリア達は遊び感覚でしょっちゅう其のダンジョンに潜っていた。Fランクモンスターしか出ないFランクダンジョンである。
(そして認めさせるの。私の才能を)
どんなに訴えても魔法士ギルド管理下ダンジョン探索の許可は下りない。ロビーに有る地図に記された簡単なダンジョンではない。秘匿され、一部の者しか探索許可の下りない秘密のダンジョン。
(私ならやれるのに)
だが自分達ならやれる。やれるのに認められない。其の鬱憤を晴らすのと自分達の才能の証明の為に、私有地内ダンジョンの探索を繰り返していた。
(ふんっ!石頭の魔法士ギルド上層部も悪食フラッペも見てなさい。貴女の可愛いペットを私の召使いにしちゃうんだから)
目をキラキラさせて窓の外を見るクートは案外可愛い。平民だから勿論守備範囲外だが、其れこそペットとして飼うなら良いかも知れない。
(婚約者なんて要らないわ。私は魔法使いになるの!)
プリメリアは少し焦っていた。後二年で成人となる。其の前に良い加減婚約者を決めないとならない。両親は彼女の婚約者を見つける為に都へ行っている。きっと本家筋の年の近い親戚から見繕われる筈だ。
(私には才能が有るんだから。魔法使いの才能が)
プリメリアの魔法の属性は無い。敢えて云えば万能型である。何かに特化している訳ではないが、全てを其れなりのレベルで習得出来る。極めれば攻撃魔法も治癒魔法も操る強力な魔法使いと成るだろう。
(*´ω`*)貴族令嬢わからせ編スタート!




