第66話 魔法士ギルド支部ロビー内喫茶室
(*´ω`*)おぱようございみゃふ!
(筆記試験かぁ⋯もっとこう、何と言うか⋯)
もっと難易度が高いと思っていた。拍子抜けである。魔法攻撃でしか倒せないモンスターを狩って来いとか、特殊な魔法素材を採取して来いとかではないらしい。そう云ったサンプル採取に本人が直接向かう事も有るらしいが、基本は外注⋯つまりは冒険者ギルドへの依頼となる。魔法士ギルドは冒険者ギルドのお得意様の一つなのが良く解る。
「不思議そうだな。冒険者ギルドの昇格試験がシビアなのは、実力不足の者をランクアップさせると死ぬからだろう。魔法士ギルドもクエストは有るが、死に直結する物は少ないよ。魔法士は等級が上がらないと書物の閲覧権限や魔道具の使用権限も上がらない。環境は整えてやるから、立場に見合った研究結果を示せと云う事さ」
「成る程」
確かに上がるのは簡単だが、其処からは実力次第なのだろう。結果を出さねば降級も有るとか書いてあった気もする。
「其れと君の人格面の評価かね。確かにクート氏はモンスターを好んで殺戮する危険な部分は確かに有るが、人間相手に誰彼構わず喧嘩をふっかけたりしないだろう?犯罪歴も無い。冒険者には犯罪歴の有る者も居る。君はクリーンだし将来有望だ。魔法士ギルドに所属してくれれば冒険者ギルドを通さずに凄腕の冒険者へ直接魔法の素材採取を頼めるんだ。本来なら頭を下げて此方に引き込むべき人材なのさ」
「フラッペ上級魔法士」
喋り倒すフラッペに柔和な試験官がストップを掛ける。
(研究、論文、実験か。ちょっと肌に合わないかな?素材を収めるので良いならそっちのが楽そうだ)
クートの中の魔法使いとは、炎や風を操り大軍やモンスターを一掃する戦略兵器なイメージだった。此処まで学者肌と云うか、非戦闘気質なのは意外だった。魔法士ギルドでは日夜攻撃魔法を撃ち合い研鑽を積んでいるのだと勝手に思っていた。
(フラッペやショコラは上澄みなのか。いや、上澄みと云うか特殊なのかな)
魔法士ギルド管理下ダンジョンに潜れるのは魅力的だが、魔法士ギルド内で上を目指す気が起きない。フラッペに倣って中級でプラプラするのが一番良さそうである。
(兎に角殺してれば良い傭兵ギルドのが楽かもな。まぁでも俺人間は余り興味無いんだけど)
傭兵ギルドへも多少の偏見が有る。実際は違うのかも知れない。確か戦場で顔見知り同士で戦闘に成った場合、ガチの殺し合いをせずにのらりくらりと戦闘を長引かせる事も有るとか無いとか。だが魔法士ギルドよりかは肌に合いそうである。
「ふむ。どんな奇天烈な人物かと思えば真面目そうな若者じゃないか」
柔和な試験官が微笑む。異例も異例、かなりの鳴り物入りで魔法士ギルドへ入会したクートだが、本人はかなり淡白な反応である。彼へ纏わる噂の大半はフラッペに依る物だ。上からの打診を蹴りまくっていた問題児が、嫌がっていた上級魔法士に成ってまで手元に置きたいと願った人材―――と、云う付加価値である。
「やらんぞ?さっきもドリーを出汁に取り上げようとしたな?」
「ははは、其れは私の預かり知らぬ所さ」
以前までのフラッペなら、ショコラ上級魔法士にクートを弟子入りさせ、自分は自由の利く中級に居座っていた筈だからだ。上級に成った以上、彼女が嫌う貴族の護衛とかもやらされる羽目に成るだろう。其のデメリットを承諾してのクートの入会だ。
「クート初級魔法士」
「はい」
下級魔法士昇級はほぼ内定してはいるが今はあくまで初級魔法士だ。そんなクートに柔和な試験官が話し掛け、同情する様な視線を向けて来た。
「フラッペ、ショコラの二人に弟子入りか。幸運を祈るよ。励み給え」
「どうも、有り難う御座います」
部屋を退出しフラッペと共にロビーへ向かう。お洒落な喫茶室へ入り、紅茶とケーキを注文するフラッペ。
「此処の紅茶と菓子類も悪くないぞ?味に煩い連中が多いからね。自然とクオリティも上がるのさ。貴族街のカフェにも負けず劣らずの品質を保証しよう」
「恐縮です」
お冷とお絞りを持って来てくれた店員が苦笑している。
(冒険者ギルドなら絶対酒場だよな)
ベテラン冒険者達は此の町の冒険者ギルド支部内に酒場が無い事を何時も愚痴っている。建物が小さいので如何ともし難いのが実情だが。
「ああ、君。彼はクート初級魔法士だ。私の弟子だ。よしなに頼むよ」
「どうも。クートです」
「畏まりました」
ベテランと思しき店員が畏まる。
(煩い客ってフラッペなんじゃないか?)
モンスター食等と云うキワモノゲテモノに手を出してはいるが、フラッペの舌は本物だ。普通の美食に満足出来ずに守備範囲を広げているのだろう。
「そうだ。俺って結構帰ってないよね。皆心配してるかな?」
寝て起きてを繰り返していたので体感的には丸一日寝てた様な感覚だ。丸一週間寝ていたと云う事は、ダンジョン探索を含めると二週間だ。時間感覚が曖昧だが、リコ達に心配を掛けているだろう。
(リコやレンダさんに迷惑掛かっちゃうよね)
悲しいかなクートが意識したのはレンダリコ母娘のみであった。肌を重ねた女達の事は一ミリも思い出さ無かった。何故なら性欲はショコラが満足させてくれているからだ。現金な話、丸一週間女を抱いていなかったらレナやシャロン、ハーニャを思い出したかも知れない。初めての相手であるルカや、肉体関係の無いカヤル等顔や名前すら怪しくなって来る。クートとはそう云う人物であった。
「ああ、其れなら心配要らない。今から冒険者ギルドには私が行くから大丈夫だ。私が言伝しておこう。クート氏を契約期間延長で拘束してるからな。其の延長の契約もしておこう。サインを頼む。ああ、君は来なくて良い。疲れてるだろう。暫くゆっくりし給え」
「うん。そう?なら頼むね」
クートはフラッペの差し出して来た書類にサインする。書類は何枚か有った。指名クエスト延長の同意書。フラッペとショコラに弟子入りする申請書等だ。
「じゃぁリコやレンダさんにも宜しく」
「ああ、まぁ楽にし給え。其のチョッパーが杖代わりだ。君の魔力パターンが刻んであるからね。初級魔法士までの権限しかないので何処でもとは行かないが、ギルド内を好きに見学すると良い。明日からは試験勉強だ。図書室はまだ開いてるな。初級だと閲覧権限も低いが基礎的な本は読める筈だ。施設を見るも図書室に行くも好きにし給え」
「解った。行ってらっしゃい」
フラッペは喫茶室の支払いを済ませて席を立つ。
「ああそうだ。そう云えば私も冒険者ギルドに勧誘されていたのだよ」
「そうなの?」
「私の固有スキルが攻撃魔法だったからな。是非にと言われてね。ものぐさなので冒険者には成らなかったが、何回か頼まれて討伐クエストに同行した記憶が有る。そんな事をつい最近まで忘れていたよ。今でも有効かは解らないが、駄目元で入会してみようかね」
「フラッペは上級っ⋯て事は、Bランク相当か」
スペック的にはBより上な気はするが。
「ま、私は別に冒険者に成りたい訳ではないのだがね。君を手元に置くには色々とそちらの方が便利そうだ」
そう言ってニヤリと笑ったフラッペが、杖をくるくると回しながら歩み去る。そんな師を見送るクートであった。
(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




