第60話
(*´ω`*)まだ名付けてないですけどクートの固有スキルの覚醒スキルが魔食晩餐ですね。もぐもぐした相手のスキルを奪いまつ。異世界転生なら1話目にゲットするのでつが、一応丁寧に無理無くやろうとしたら60話、約二ヶ月かかったンゴ☆
「ブゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
雄叫びを上げ突進して来るブラックファングボア。クートは両足を踏ん張る。アクティブスキル筋力上昇だ。先程は日和ってバックステップで逃げた。今度は逃げない。
「ぬぅんっ!」
足の指の握力で床を踏み締める。上半身がミチミチと音を立てて盛り上がるのが解る。合掌された掌がビキビキと固まる。
「槍だ。俺は槍に成る―――」
槍使いレナをイメージする。其の時、彼の中である変質が起こる。後に覚醒するスキルの片鱗。性行為と吸血行為で入手したレナの血液体液を介してラーニングしたスキル『槍術』を己の体に再現する。
「レナの様に。レナの槍の様に鋭く、疾く―――」
クートはブラックファングボアの鋭い牙を巧みに避け、正面に体を滑り込ませる。狙うは一点だ。牙を避けるクートを喰らってやろうと大口を開くブラックファングボアの―――口の中。
「ブゴォォォォォォ―――ゴッッッッッッッ!?」
クートの手刀ならぬ手槍がファングボアの舌を貫き、其のまま下顎に突き刺さる。しかし、ブラックファングボアの突撃を真正面から受けたクートも只では済まない。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
雄叫びを上げて耐える。指がへし折れる。足の筋肉が断裂し関節が軋む。ふっ飛ばされるのは防げたが背中や腰にもダメージが行く。
「ブガブッ!」
「痛ぇな此の野郎っ!」
腕を噛み千切ってやろうと口を閉じて来るブラックファングボアにクートが吠える。
(くそっ!俺の貧弱な肉体じゃぁレナの槍は再現出来ねぇっ!)
試してみたかった。己の力で何処まで出来るか。無茶をしてみたがやはり無理だった。しかし無謀ではない。無策ではない。クートは魔石の心臓を喰らう事で獲得した魔法を、此処で使う―――
「調理魔法っ!『加熱』っ!『冷凍』っ!」
「ブギョッ!?」
クートの掌を痛みと熱が襲う。次の瞬間、閃光と共にズガンッ!と云う爆発音がボスフロアに轟く。ブラックファングボアの頭が内側から爆ぜたのだ。目玉は飛び出し床に転がる。大牙は無事だったが上顎と下顎がズタズタになり細かい牙が散らばる。
「フシューッ⋯フシューッ⋯」
口の中で爆発を起こされ、脳震盪により動きを鈍らせるブラックファングボア。其れでもまだ生きている。
(流石にしぶといな⋯)
「魔石を、寄越せ―――」
駄目押しの一撃。もう一度爆発が起こり、今度こそブラックファングボアの頭は完全に爆砕する。血と脳漿を撒き散らし、ブラックファングボアの巨体が地響きを立てて横倒しに成る。
「はぁ⋯はぁ⋯はぁ⋯」
クートは蹌踉めきながらもブラックファングボアの体に取り付く。震える手では上手くナイフを掴めない。
「ちっ⋯冷凍⋯加熱⋯」
「ほぉ、器用だな。そして面白い」
フラッペが驚嘆する。加熱と冷凍の相反する魔法を至近距離で衝突させるクートの自爆技。概念としては既に存在するが、やるとしたら使い捨ての魔石を使った手投げ爆弾とかだ。まさか素手で行う命知らずの無鉄砲が居るとは思わなかった。
「火魔法と氷魔法の同時使用の爆発反応。其れ自体は珍しくも無い。しかし其れを生身でやるとはね」
「あああ〜私のキュート君がぁ〜〜〜また血塗れにぃ〜〜〜⋯でもしゅていきぃ〜」
「しかし今行った魔法は画期的だな。普通出来るか?」
クートはナイフやチョッパーを使えない代わりに、手刀を使ってブラックファングボアを解体している。拡張スキル魔石感知により正確に魔石の位置は把握出来る。
「見ろ、ショコラ。クート氏の手を」
「キュート君のお手々ぇ〜?」
「恐らくは右手で火魔法、左手で氷魔法を使ったのだろう。右掌は火傷、左掌は凍傷の痕跡が見える。アクティブスキル筋力上昇とパッシブスキル治癒力強化で回復しているがね。しかも火傷は氷魔法、凍傷は火魔法でダメージを軽減している。更に其の延長で硬化させた氷の刃と高熱を発する手指で以て肉を解体している。繊細で綱渡りな魔法運用だ。普通なら脳が焼き切れるぞ?恐らくクート氏のスキル食材鑑定が演算しているのだろうがね」
クートは熱と氷の刃をそれぞれ纏った手刀でブラックファングボアを解体し、見つけ出した魔石に付いてる心臓に喰らい付く。
「がぶっ⋯ぢゅるるる、ぢゅるぢゅるぢゅる」
溢れ出す肉汁ならぬ血を啜るクート。
「君は馬鹿か。こんな無茶な事を良くするものだ」
頭を失った獣の上で一心不乱に心臓を喰らうクートに近寄るフラッペとショコラ。
「火傷と凍傷だけで良く済んだな。恐らく基本的な魔力耐性も上がってるんだろう」
其れでも両手へのダメージはまだ大きいのだろう。クートは痛みの酷い両手は其のままに四つん這いとなり、口で直接獣の様にブラックファングボアの魔石の心臓を喰らっている。
「此れを魔法で勝ったと言って良いのかな?広義だと息をするのも拳も振るうのも魔法反応になる。いや魔法行為には成らないんだったかな。⋯まぁ魔法で良いか」
フラッペが無理矢理納得する。普段意識せずに生活してる人間に、歩く事も息をする事も魔力の流れが発生する魔法反応だと云ってもピンと来ないだろう。炎を出して氷を撃ち出す見栄えの良い物のが説得力が有る。
「クート氏、炎や氷は飛ばせるかい?」
フラッペがクートに問い掛ける。二重の意味でだ。質問内容も勿論問うているが、意識は有るのか?正気なのかと問い掛け確かめている。
「⋯ぐちゅぐちゅ⋯ごきゅんっ⋯無理」
クートは血塗れの顔で目だけギョロリと動かし応える。其の姿に言い様の無い寒気を感じ、ゾクリと背筋を震わせるフラッペ。
「ふ、ふふふ⋯モンスター以上に魅力的な存在だな、君は。欲しい。実に欲しいぞ」
「フ!?フフフラッペさん〜?キュート君は私の物ですからねぇ〜?」
一度抱いただけで彼女面をし始めるショコラ。
「加熱と冷凍か。其れの複合。正に調理魔法ならではだな。私には出来かねる繊細な魔法制御だ」
攻撃魔法全振りスキルのフラッペには無理である。超巨大な大剣で飾り切りをする様な物だ。だがクートなら出来る。鮮やかな包丁捌きの如く魔法を操っている。其れに料理人は冷たい料理も作りながら熱い料理も作る。火加減水加減は料理の領域。恐らく感覚で魔力操作を行っているのだろう。魔法はイメージが何より大事だ。クートは恐らく対象を食材と認識する事で魔法の発動をスムーズに行っている筈だ。
「其れを己にも作用させるか?―――⋯槍?自身を槍と表現していたが⋯そうか!己自身も調理器具と認識する事で道具のメンテナンスの要領で治癒をしているな?」
良く見なくとも魔力感知で解る。クートの掌の治癒が早い。クートは火傷と凍傷を負っている掌の治癒力を上げつつ、火傷の有る掌に『冷凍』を、凍傷の有る掌の方に『加熱』を掛けている。どれも弱く未熟だが、三つの魔法の重ね掛けである。其処までは良い。使い手も居ない訳ではない。だがクートは敵モンスターを食材、己が身を調理器具とする事で攻撃も回復も最適化させている。
「魔法もあくまで食材を捌く調理器具に落とし込んだな?何処まで貪欲なのだ君は」
「ぢゅるるるるるぅぅぅ⋯ごくん」
ブラックファングボアの心臓から血を啜り切り、大粒のDランク魔石をクートは手に入れた。
(*´ω`*)手槍は中国語で拳銃って意味らしいですね。あと性的な隠語でもあるらしいのでなんか実にクートらしいです。




