第48話
(*´ω`*)クートの性別を変えると、童顔だけど胸デカくて誰とでも寝るけど氏に急ぐみたいに危険な戦い方をする美少女になるので、俺が救ってあげなきゃって脳を焼かれると思う。しかもスキルは家庭的なヤツだし。守ってあげなきゃと庇護欲を刺激するナチュラルボーン悪女になるのでしょうね。
先へ進めばもう元には戻れない気がする。だがやるのだ。やらねば自分はもう終わりだ。其れこそお金持ちの年上の女と結婚して、自身のスキルを活かして飲食店を経営。そして偶に趣味でダンジョンへ潜る。そんな生き方も有る。だが自分は―――
(そんな温い生き方は御免だ)
「ん?何か今物凄く凹む事を思われた気がする⋯」
魔法士的な直感で自分の夢を否定された気がしたドリーが、とばっちりで傷付いた。
(嫌だけど、やるしかないか⋯)
クートが溜め息を吐き出す。薬草採取クエストの時を思い出す。苦い薬草を我慢して食べ、強引に食材だと認識した。頭の片隅では此れは食べ物じゃぁないなぁとは思いつつも、スキル食材鑑定は薬草を食材だと認識してくれた。そして常軌を逸した速度で薬草採取をクリアしFランクへと上がった。
「アレをやるのか⋯」
モンスターに齧り付いて肉を食い千切る⋯とまではいなくとも、戦闘中に消える前の肉片を採取し飲み込む。多分起こるだろう食中毒に苦しみながらモンスターの美味しい⋯訳が無いので、栄養価の高い部位を選別する。其れでモンスターを食材と認識出来れば成功だ。出来なければ⋯出来るまで繰り返すしかない。
「ちょっと練習が要るな」
「勿論だね。その為の実験さ。今回は本番前の慣らしだよ。元々一回の探索で目的達成出来るとは思っていない。今となってはクート氏が強くなるのはマストだね。最初の予定では私達がクート氏を護衛しながら探索するつもりだったのさ。だが君が思ったより戦えた。だから予定を変更して君を鍛える事にしたのさ」
「有り難う。フラッペ」
「気にするな。其の方が合理的なのさ。固有スキルは未知の部分も多い。君の食材鑑定の元々のスキルが狩猟系のスキルの可能性も有る。食材鑑定とはつまり食欲に直結する。私の攻撃魔法や数多の戦闘系スキルよりも古い、オリジンとも呼べる最古のスキルかも知れない。おっと話が逸れたね。つまりだ、例えば私が討伐したモンスターの肉を君に喰わせた場合、君のスキルが食材認定出来ないかも知れない。単騎で強敵と戦わせる気は無いが、君自身が討伐に参加せねば食材鑑定が発動しない可能性も十分に有るのだよ」
「そう云う可能性も有るのか⋯」
(だとしても、もっと早く試しても良かったのに。此処まで待ってくれたのは単純な厚意だな。有り難く思おう)
クートは居住まいを正してフラッペに礼を述べる。
「重ね重ね有り難う。フラッペの厚意は受け取った」
「ふふふ、私の好意か。彼ピッピなのだから当然だろう」
「彼ピッピ」
「あーズルいですよフラッペさん!」
どさくさ紛れにフラッペがクートの膝上にちょこんと座る。体格差的には座りが良いが、彼女はクートの三倍ぐらい年上だ。感覚がバグるとは此の事だろう。クートの上腕二頭筋を触ろうとするショコラの手をフラッペがペチペチと撃ち落とす。そうして暫くわちゃわちゃした後、出発する事になった。
「では行こうかね」
「うん」
「はぁ〜い」
ミーティングでも話したが確かにぶっつけ本番は厳しい。今回はお試しと云う事だ。
本当の本番は最新最深部での討伐と成る。だが其れは後日改めてと云う事に。今回のメインは第一層の階層ボス討伐となった。更に其の前に、実際の戦闘で食材鑑定が発動するかの実験を行う。
「気を付けてねー」
「ドリ〜お腹空いたからぁ〜今度はおやつを宜しくぅ〜」
「え?もう?」
三人は先程降りて来た階段を昇る。ライザとドリーが手を振って見送ってくれていた。カモミールと云う名の男性魔法士には結局会えず終いだった。また直ぐキャンプに戻る事になるので其の時に顔を合わせるだろう。地下九階に上がる。階段の有る部屋を出た先ではモンスター共がウロウロしている。奴等は何故か階段の有る部屋に雪崩込んで来る事は無い。部屋の中からどのモンスターでやるか物色するクート。
「二足歩行の亜人系モンスターはなんか嫌だな」
クートは手当たり次第にモンスターを蹴散らすと、倒した中からファングボアの肉を削り取る。
「寄生虫とか居ないかな?まぁ仕方無い」
意を決して血の滴る生肉を口に入れる。
「ぐえええっ!?」
「クート氏頑張れ!」
「フラッペさんの鬼ぃ〜!キュート君〜無理しないで良いんだよぉ〜?無理ならぺっ!しなさい〜」
フラッペがワクワクしながら、ショコラが心配そうに声を掛けてくれるが返事をする余裕が無い。
(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味いっ!其れよりも舌が痺れるっ!吐き気が込み上げて来るっ!俺の本能が今すぐ吐き出せと叫んでるっ!)
モンスターの血の滴る生肉が不衛生と云うのも有るだろうが、魔力汚染された肉が舌と口腔内からクートの肉体を侵蝕して来る。寒気が止まらなくなり脂汗が滲み出る。腹痛を心配していたがそもそも飲み込むまで行ける気がしない。だが此処で止まる訳にはいかない。
「――――――――ごきゅっっっ⋯んっ!」
涙と鼻水と涎を垂れ流しながら必死に飲み込む。
(うおおおおおあおえええええああっ!?)
喉が焼ける。胃が焼ける。モンスターが人間と相容れないのが良く解る。此れは毒だ。食べれない。食糧の尽きた冒険者が餓死する事例が有るのが理解出来る。食用化等絶対に無理だ。こんな物を食べて生き残れる人間等存在しないだろう。普通なら―――
「おげぇぇっ!?ぐうううっ!」
反射的に嘔吐し掛けるが何とか堪える。此処で吐き出しては意味が無い。
「ちょっと〜キュート君に近寄っちゃ駄目ぇ〜」
地下九階のモンスターは多少の知能が有る。元気そうなフラッペやショコラではなく、のた打ち回るクートを狙ってマーダーの名を持つ狼や鼠や蛇やらが素早く回り込んで来る。其れを迎え撃つのはフラッペではない。固有スキル防御結界魔法のショコラである。
「え〜い」
べちゃっ!と云う水音と共にモンスター共が潰れる。フラッペの魅せてくれた技は、力任せにハンマーを叩き付けた様な鈍器的な攻撃だった。しかしショコラのはやや趣きが異なる。
(まるで巨人が平手打ちしたみたいだ)
通路にひしめいて居た雑魚モンスター共が、見えない巨人の掌に押し潰された様にペチャンコとなる。内臓も血も全てが平面的に広がる。無機質な石畳の壁や通路が、前衛芸術のミュージアムの様に色取り取りに染まる。画材はモンスターだが。
「すご、い⋯」
苦痛を一瞬忘れる程に見惚れる。此れが戦闘特化の固有スキル。クートの食材鑑定とは天地の差だ。
(いやっ!俺だってやれるっ!)
先程のはきっとリップサービスだ。だが其れでもフラッペの言葉に縋る。確かに自分の食材鑑定は生命の三大欲求に直結している。オリジンと呼べる様な原初のスキルかも知れない。いや、きっとそうに違いない。ならば―――
「いまここでっ!おれにそれをしめせぇっ!」
血走った目から涙を、鼻から鼻水口から涎を撒き散らしながら叫ぶ。喉が張り裂けそうである。出発前にキャンプのトイレを借りていなければ失禁脱糞もしていたかも知れない。
頭が痛い。脳味噌が焼ける様に熱い。本能が、魂が無理矢理スキルの限界を超える。閉ざされていた扉を強引にこじ開けているのが、クートには解った。
(*´ω`*)キャンプでトイレ行っておいて良かったですね。でなければ酷い事になってました。




