第47話
(*´ω`*)へっぷしょーい!此の世界に花粉症有るのかな?へぷちん
ボス部屋の前に有る魔法士ギルドのキャンプへと入る三人。
「あら?珍しいわね。フラッペが転送陣を使わないなんて」
常駐している魔法士が話し掛けて来た。見た目は三十後半と云った手合いだ。恐らくフラッペの同期ぐらいだろう。何時もなら最新最深部をウロウロしてる攻撃特化型魔法使いが、初心者がもたつくレベルの第一層キャンプ地にやって来たのだ。確かに珍しいと感じるだろう。
「少し予定を変更したのだよ。問題は有るまい。少しだけ休ませて貰うよ」
「ごゆっくりどうぞ。僕もゆっくりしてってね」
「有り難う御座います」
(僕⋯)
僕呼ばわりされるクート。他に女性一人男性一人、計三人の魔法士がキャンプに常駐して居た。全員上級魔法士である。男性魔法士は今仮眠中らしく、女魔法士四人とクートの五人でテーブルを囲んで雑談をする。クートが礼儀正しく挨拶し、お互い自己紹介を済ませる。
「上級って言っても勘違いしないでね?私は研究畑の人間だから。フラッペやショコラみたいな戦闘向きじゃないのよ」
「そうなんですね」
「あのぉ〜私も戦闘タイプじゃないんですけどぉ〜」
上級魔法士ライザに苦笑しながら釘を刺される。腕っぷしが物を云う冒険者のランクシステムと、魔法士ギルドの序列はやはり大分違うらしい。横からおっとりと否定して来たショコラの訴えは誰も聞いていない。
(魔法使いを仲間にする時の目安になるかな?)
余り序列に囚われない方が良さそうである。実際フラッペは中級魔法士だが、今の所クートの知る中では一番強い。
「此処なら気兼ね無く食べ放題出来ます〜嬉しぃ〜」
「駄目よ貴女。キャンプの備蓄を食い尽くす気?」
「⋯もしもショコラさんを仲間にすると食糧問題が大変そうですね」
ダンジョン内では其れこそ、モンスターでも食べなければ食材不足に苦しめられるだろう。
「キュート君酷いよぉ〜」
「クートです」
「皆さん御飯ですよー」
「有り難う御座います」
「ふむ。済まないね。御馳走になるよ」
「やったぁ〜。ドリーの料理だぁ〜」
「ショコラが居るから少し多目にしたわよ?」
上級魔法士ドリーが苦笑しながら配膳をしてくれる。ドリーは二十後半ぐらいに見える。ショコラの同期ぐらいだろうか。
「美味しそうですね。香りも良い。絶対美味しい」
クートは見た目の盛り付けや香りから、ドリーの料理の質の高さを実感する。
「直ぐに料理屋始められるレベルですね」
「もぉ〜そんなに褒めても何も出ないよ、クート君」
何も出ないと言いつつクートにだけプリンが出される。ショコラの目がちょっと怖くなる。怖い。
「優れた料理は見れば解ります」
「あはは、スキル食材鑑定持ちに太鼓判押されるとお姉さん勘違いしちゃうよ?実はカフェかレストラン開くのが夢なんだぁ〜。ああ〜戦闘なんてしたくない〜。ボス戦になったらまた呼ばれるんだろうなぁ〜」
照れ笑いをしていたドリーだが、夢を語った後に現実を思い出して遠い目をしている。レストランやカフェを出すにも資金が要る。早く金を稼ぐには、先ず得意分野で頑張るしかないのだろう。そもそも飲食業は難しい。魔法士の方が確実に稼げる。一番堅実なのは魔法士として稼いだ金で趣味で店舗経営をする事だろう。
「ふふ、誰か料理上手な旦那見つけて結婚して、私はオーナーでもやろうかしら?ねぇクート君」
「そうか。精々婚活を頑張り給え。よいしょ」
「ちょっと、其の婚活を邪魔しないで下さい」
「私の彼ピッピに近寄るな。他所でやれ」
「彼ピッピ」
ズイッと近付いて来たドリーとの間に、小柄な中級魔法士が無理矢理割り込んで来た。そして良く解らない言い合いを始める。
(戦闘向きのスキルなのにカフェかレストラン経営希望か。そしてスキル適性は無い筈なのに料理は一級品。俺とは正反対だな。ある意味参考になる)
クートは戦闘向きスキルでないのに戦闘能力は其れなりだ。そして更に上へ行く為に、生来の固有スキル食材鑑定を活用している。やりたい事とやれる事は違う。誰しも夢に必要なスキルが備わっている訳ではない。
(レナみたいなのは珍しいのかな?)
槍士レナは自身の適性に悩んでる感じは無かった。槍を愛し槍に生きているバトル馬鹿だ。クートに負けても悔しがるだけで恨み節は無い。クートからすると羨ましく眩しい存在だ。カラッとした性格もドロリとした性格のクートと相性が良い。結婚するならレナみたいなタイプがきっと良いのだろう。いや其の判断は早計か。ハーニャやシャロン、ルカだって抱き心地は悪くない。
自身の女性関係について思い返しているとフラッペが手を握って話し掛けて来た。
「階層ボスに挑む前に、私の指名クエスト依頼を果たして貰おうか。いや何、いきなり最新最深部へ行こうとかではない。ちょっとした実験だ。ボス戦で君が負傷した場合は直ぐに地上に帰還せねばならないからね。念の為さ」
確かにそう云った契約内容だった。勿論先程までのモンスターとの戦闘で多少の打撲や擦り傷は有るが、致命的な攻撃は受けていない。契約上明記された負傷とは、例えば教会の治癒魔法士に頼るしかない程の大怪我と云う事だろう。魔法士ギルドにも治癒魔法の使い手は居るが、能力特化の治癒魔法使いは教会が抱え込んでいる。外部組織に頼らざるを得ないのは魔法士ギルドとしては不本意且つ不名誉だろう。しかし冒険者ギルドからある意味出向している様なクートを危険に晒せない。
細か過ぎてやや斜め読みしたがそう云った裏は読み取れた。契約内容をちゃんと読まない冒険者が多い中、クートはまだしっかりクエスト内容を読み込み吟味する方である。
「俺は構いませんけど⋯」
(そう考えると、俺にモンスターを倒させてくれたフラッペは本当に有り難いな)
クートのモンスター討伐はフラッペの厚意に依るものだ。此れ以上の我儘を言うつもりは無い。クートが万全の状態でスキル食材鑑定を試すのは本来のクエスト通りだ。今までの行程が寄り道回り道だっただけだ。是非も無い話である。
「でも、死体がダンジョンに吸収されるなら、食材回収は難しいんじゃないか?」
当然の疑問だった。フラッペが我が意を得たりと頷いている。トンガリ帽子も上下に揺れる。
「其の通り。そして私の攻撃だと大体木っ端微塵に成ってしまう」
「ああー⋯」
上階でフラッペが叩き潰したモンスター共を思い返す。アレですらフラッペの魔法ではないらしい。彼女の固有スキル攻撃魔法とはいったい何れ程の規模の破壊を齎すのだろう。恐らくだが此のダンジョン内では本気を出せない筈である。側に居るクートも巻き添えで死ぬ。
「なので君の出番なのさ。クート氏の食材鑑定で散らばった肉片の中からこれぞ!と云う食材をゲットしてくれ給え」
「俺の食材鑑定がモンスターの死体に反応すれば良いんだけどね」
今の今まで倒して来たモンスターを食材として見た事が無い。だが其れは不味いと認識してるから。食べると毒だと認識してるから。食べれないと認識してるから、だ。その認識を改めなければならない。毒を喰らわばならない。
でなければ此れ以上先へ進めない。
(此処が俺の分水嶺か―――)
(*´ω`*)へぷしょーい!ちくしょー!




