第50話
(*´ω`*)おぱようございみゃふん?
「うーん、自己評価が低いのは⋯戦闘職じゃないからかな?」
最近は其処まで切羽詰まってはいない。己の力でモンスターを殺戮し、其の余韻に浸りながら女を抱く。命の輝きを感じている時は卑屈な考えは消え去る。どうしようも無い程の劣等感で脳が焼かれる事は少なくなって来たが、やはり憧れは有る。
フラッペの様に圧倒的な火力が欲しい。
ショコラの様な敵を蹂躙出来る力が欲しい。
レナの様な真っ直ぐな性格とスキルに憧れる。
「無い物強請りだと思うけどねぇ。私は自分で言うのも何だが当魔法士ギルド支部にて最強戦力だ。結構な我儘が通るのも、いざとなれば貴族を守る契約の履行に率先して駆り出されるからだね。無いとは思うが、町に大勢の敵が迫ったら殲滅するのが私のお仕事さ。個としてどんなに強かろうとも、組織と云う枠組みの中では結局飼い殺されるのが宿命だね。ショコラもそうさ。そうだろう?」
フラッペはそう云って相方を示す。
「はぁ〜、はぁ〜、キュート君の鎖骨がぁ〜私の背中にぃ〜大腿四頭筋可愛ぃ〜」
「クートです」
当のショコラはおんぶしたクートの肉体を堪能していた。クートはまだまだやれるつもりだったが、ショコラにおんぶされて階段を降りている。実験は一応成功したので再びキャンプで休む事になったのだ。外傷は無かったがかなり消耗していたので、クートは大人しく運搬されている。
「⋯本人に代わり説明しようか。ショコラは有事の際は領主様と貴族街の死守だね。私達以外にも勿論防衛戦力は有るが、私達程の火力と盾は早々無い。お陰で余り自由に出来ないよ。何日もダンジョンに潜ると上に良い顔をされないからね。だから探索が中途半端に成るのは君だけの所為ではない。気に病まなくて良いよ」
「力が有れば自由に成れる訳じゃないのか⋯」
フラッペは自由奔放に生きている様に見えたが色々としがらみが有るらしい。強者故の苦悩だろう。弱者の立場のクートには理解出来ない。
「攻撃魔法等要らないのだがね。しかし其れしか取り柄がないからねぇ。仕方無く、自分の好きな研究の為に利用してるに過ぎないのさ」
「羨ましいな」
「私としては食の探求に向いてる君のスキルの方が羨ましいよ」
「そうなんだ」
フラッペに親近感を持つのは難しい。其れに察しの良いクートは、フラッペが自分を慰めてくれている事には気付いていた。
「だからクート氏と私で子供を作れば、食材鑑定と攻撃魔法を使うハイブリッドな魔法使いが生まれるとは思わないかね?此れも是非試してみて―――」
「却下で」
普通に感謝していたら明後日の方に着地した。秒で拒絶するクート。
「あちゃー。振られたね」
「俺は自分の夢に子供を利用しない。他人なんか当てにしない」
今まで抱いた女にもしも子供が出来たら、其れを理由に更に冒険にのめり込む自覚は有る。しかし、子供自身に己の果たせなかった夢を押し付ける気は毛頭無い。自分の夢は自分だけの物だから。
「ふふふ、此れは誘惑し甲斐が有るね」
「俺は大きい方が好き」
何がとは言わないが。クートの手はショコラの胸を掴んでいる。勿論クートが触ってる訳ではない。ショコラが敢えてクートの掌を自分の胸の上に置いているのだ。只性的欲求の所為かと云うと少し違う気もする。
「はぁ〜はぁ〜武器を使って固くなったキュート君の掌ぁ〜」
ショコラはクートの戦う男の手に興奮してる。だがショコラはクート自身には興味が無さそうだ。多分体目当てなのだろう。おんぶして貰っていてなんだがちょっと引いている。
「ショコラ、出番だ。クート氏を誘惑しろ。此の際君とクート氏との子供でも構わん。手元に食材鑑定スキルが欲しい。早く彼と子作りしろ」
「はぁ〜⋯えぇ?あのぉ〜私の意思は〜〜〜?キュート君は可愛いですけどぉ〜まだ知り合って間も無いですしぃ〜」
アラサー巨女がもじもじしながら階段を降りて行く。肉体的にもスキル的にも圧倒的な格上の女。仮に寝たとして⋯今までの女の様に扱える気がしない。
(動物や昆虫、深海魚に⋯雌がデカくて雄が小さい種類居たよな?)
交尾した瞬間に雌の体に吸収されたり、交尾した後に雌に食い殺されたり⋯そんな哀れな雄になった気分を味わうクート。ショコラは女として勿論魅力的だが、此の女と交わった場合、クートの全てが食い尽くされるイメージしか湧かない。
「クートです。てゆーか何でキュートなんですか?」
いい加減突っ込み疲れて来たので訊ねてみる。
「ごめんなさい〜可愛がってるお肉に名前を付けちゃうんです〜。特に可愛い子はキュートって呼んじゃって⋯」
「肉」
何と云う事だろうか。ショコラは捕食対象に名前を付け、可愛い可愛いと可愛がっていると云う。予想よりも悍ましい事実に戦慄する。まさかショコラに本当に食材として見られてるとは思っていなかった。
「ショコラさんは常識人だと思ったのに」
鷲掴みさせられていた胸から掌を引っ剥がす。今までの人生で最大級のボリュームの筈なのに股間が反応しない。本能的恐怖のが上回る。
「ははは、私とバディを組める時点で私と同じぐらいに変人だよ。恋人は居ないがね。変人しか居ない」
「魔法使いのイメージが崩れる」
魔法使いに対してはもっと神秘的なイメージが有ったが、何か得体の知れない生態を持つ珍獣にしか見えなくなって来た。
「あら、お帰りなさい」
「大丈夫?僕?」
地下十階のキャンプに戻るとドリーとライザが出迎えてくれた。二人共歓迎してくれる。多分、人に飢えているのだろう。どのぐらいの期間かは解らないが、ダンジョン内のキャンプに常駐するのは余程ダンジョン好きでもないと飽きるし気が滅入るのだろう。
「紅茶で良い?」
「どうもすみません」
熱々の紅茶を受け取る。ショコラの背中に揺られてる間に大分回復した。
(⋯強くなった感覚は無い⋯まぁそんなものか⋯)
地獄の様な苦しみを耐え抜いた割に特に何かが変わった実感は無い。だが其の時点ですでに驚異的なのである。魔法への耐性の有るフラッペでも、モンスターの肉を一口食べれば食中毒は免れない。一時的な不調を乗り越え、ケロリとしているクートはやはり⋯
(逸材だな。是非欲しい)
フラッペも紅茶を飲みながら算段を立てる。冒険者ギルドからの引き抜きは得策ではない。だが魔法士ギルド入会はマストだ。此の魔法士ギルド管理下ダンジョンの探索を餌に、クートを取り込む。此の人材は手元に絶対に欲しい。
「色仕掛けしてみようかね?」
フラッペは平坦な胸をさわさわしてみる。其の内大きくなると思ったら何時の間にかアラフォーである。お肌もピチピチなのは良いが、外見年齢は一桁代だ。
「子供は作れると思うのだがね。どうかね?クート氏」
くねくねとしなを作って来るフラッペを視界から外し、ズズズッと紅茶を飲むクートであった。
(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




