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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第93話 レベリア苦戦

(*´ω`*)たぬたぬ。ラビはたぬきかアライグマみたいなイメージです。たぬたぬ

「はい、言質取りましたー。んじゃ、仕切り直しね」


 クートはレベリアの足を縛っていた鋼糸を外してやる。そして地面に転がるレベリアを起こして上げようと手を伸ばすが、バシンと打ち払われる。


「要らんっ!」

「はいはい」


 再び一定距離を取って向かい合う両者。


「俺、剣術って知らないんだよねー」


 クートはチョッパーを両手で握り、ゆっくりと大上段で構える。最初と同じ構えだ。一度防がれた攻撃を敢えて行うクート。其れに気付いて眉間に皺を寄せるレベリア。


(舐めるなっ!―――いや、落ち着け。安い挑発だ。何か仕掛けて来る気だな?)

「来いっ!」


 頭に血が昇り掛けるが心を落ち着かせる。


(私は騎士だ。由緒正しき騎士の家系。今は冒険者に身を窶しているが、何れは屋敷と領地を取り戻し、家を継いで爵位を得て、貴族としての品格を取り戻す)


 クートの言動は此方の心を逆撫でする様な物ばかり。明らかに挑発して誘っている。怒らせて判断や動きを鈍らせる狙いに見える。そんな物で揺るがない。御家再興。彼女には崇高な夢が有るのだから。


「クートが何か魔法を使う気配は有るか?」 

「ちょーーっと、待って下さいねーーー」


 観戦してるアーシャがラビに訊ねる。ふと周りを見ると、暇を持て余していた冒険者達が野次馬として集まっていた。朝と呼ぶには遅く、昼と呼ぶには早い時間。丁度一番冒険者達がギルドにやって来る時間だからだろう。


「なんかギャラリーが増えたな」

「はいはい、今視ますねーーー」


 良い所まで読んで一旦本を閉じ、眼鏡をスチャリと掛け直してクートを見詰めるラビ。彼女の固有スキルなら感知魔法の真似事も出来るが、クートからは其処まで高い魔力は感じない。そもそも見ただけで解る程精度は高くないし、観察対象の魔力が其処まで高くなければ判断出来ない。


「んーーー特に無いですかね。彼は本職の魔法職ではないですし。パッシブスキルは解り難いので」

「そうか。まぁお手並み拝見と行こうか」


 アーシャは少しウズウズしながら二人の戦いを見守る。


(混ざりたい。いや、いかんいかん⋯)


 レベリアが再び受けの姿勢を見せている。クートの一撃をいなすか躱すかし、カウンターを決めるつもりだろう。格上である自覚から攻め込む事はしない。只先程の鋼糸を警戒しているのか、視線がチラチラと下を向きがちだ。


(危うい。足元にばかり気を取られてるな。罠一つで其処まで揺さぶられる物か)


 アーシャが感心する。レベリアは一度痛い目に遭ったので鋼糸を気にし過ぎている。クートはもう鋼糸を使う事は無いだろう。だが意識はしてしまう。完全にクートの術中である。しかし意識を外した瞬間、普通に鋼糸を使って来るかも知れない。手を前に突き出して蠢かすだけでレベリアの動きは鈍る筈だ。


(こんのガキ、とんだ曲者だな⋯)


 距離感が近過ぎるが礼儀正しい部類だろう。気性も穏やかでコミュニケーション能力も有る。何だかんだアーシャもレベリアもラビもクートに引っ張られている。此のままならパーティー結成までは秒読みだ。交渉能力も有るのだろう。しかし其れは其れとして他人を陥れる事に躊躇が無い。罠の嵌め方に容赦が無い。


(戦ってみたいが戦いたくない。此方のやりたい事をやらせて貰えずに翻弄されそうだな)


 新人とは思えぬ老獪さに舌を巻くアーシャ。クートなら傭兵としてもやって行けそうだ。


「ほいっ、と―――」


 クートは増えたギャラリーに動じる事も無く、真正面、大上段からチョッパーを振り下ろす。変な動きもしていない。


(何だ?何も小細工は無しか?何が狙い―――)

「っっっ!?がはっ―――!?」


 軽く打ち払うつもりでいたクートのチョッパーがレベリアを捉えた。気付いたら喰らっていた。おかしい。


「何っ!?」

「へー?」

「何とっ!」

「え?」

「んん?」


 アーシャやラビだけでなく、他のギャラリーもどよめく。クートのチョッパーはレベリアの剣をすり抜け、鎧の上から打撃を与えた。刃を当てると怪我をするからだろう。側面で引っ叩く様な殴打であった。喰らった張本人のレベリアの動揺は凄まじい。地面に転がり、無防備にクートを見上げる。直ぐに起き上がる事も出来ない。ダメージは甚大だ。体でなく心にだが。


「ば、馬鹿な―――」


 剣は素人である筈のクートの一撃を、しかも手加減された様な当て方で受けてしまいショックを受けているレベリア。さっきは防げた。あの時は手を抜かれていたと云う事だろうか?


(型も滅茶苦茶だった!速度も無かった!技術も何も無い筈だっ!)


 しかし剣で打ち払う事も躱す事も出来ず、間抜けにもまともに体に受けてしまった。戦場だったら死んでいた。


(ド素人の非戦闘職相手にっ!何と云う体たらくだっ!)


 ギャラリーから野次が飛んだりはしないが、レベリアは観客から嗤われている様な錯覚を受ける。


「俺にまともな剣術を期待しないでよ?弱小スキルなんだからさぁ」


 チョッパーを片手で構え、クートがそう嘯く。


「何もしてませんね」

「何も、してない?」


 ラビの解説に懐疑的に反応するアーシャ。


「敢えて云うなら感知魔法の類ですかね。鑑定職なら感知能力が底上げされてますからーーー。其れじゃないですか?剣術スキル持ちが腕相撲強いとか、そんな類の話ですよー」

「雑だなオイ」


 ラビの読みは当たっていた。クートはパッシブスキル魔力感知でレベリアの動きを予測し、其処に刃を合わせただけである。チョッパーは普通の剣より幅広だ。側面を打つければ立派な鈍器と成る。


(戦い慣れてない人間、しかも一対一なら楽なもんだな)


 半分以上は魔法士ギルド管理下ダンジョンでの討伐の為、公式記録には残らない。しかしクートが殺したモンスターは通算五百五十体は超える。数だけなら中堅冒険者並だ。新人としては異常な数である。そうして殺した数に比例して技術が向上したたけの単純な話である。正式な剣術では勿論無いが、今のクートと万年Fランクのレベリアでは地力が違い過ぎる。


「何をしたっ!?」

「何したって言われてもなぁ〜」


 慌てて立ち上がり距離を取るレベリア。クートの一撃は重くなかった。早くも無かった。しっかり見えてもいた。油断もしていなかった。だが、喰らってしまった。次受けても受け切れず、無様に三度地面を転がる姿しか思い浮かばずに恐怖する。


「レベリアの呼吸に合わせて隙を突いただけなんだけど」

「馬鹿を言うなっ!そんなのっ!達人の領域だぞっ!?」

「レベリアさー、モンスター討伐もあんましてないんじゃない?」

「其れは⋯」


 ソロだろうが何だろうがクエストは受けられる。モンスターは殺せる。ギルド職員に渋い顔をされるが、ソロでも高ランクモンスターを狩りに行けるしダンジョンにも潜れる。其れをしないのは⋯


「御家再興だっけ?随分立派な夢だけど、どれだけ本気なのかは解らないよね」

「何だとっ!?」


 剣先が震える。少し自覚は有った。冒険者として名を上げるつもりだが、冒険者等と云う身分に堕ちた事に貴族の、騎士のプライドが拒否反応をしている。騎士として功績を上げたいのに冒険者として名を残すのを恥ずかしく思うジレンマ。


「そんな中途半端だから弱いんだよ」

「貴様ぁあああああっ!」


 遂にレベリアがキレた。お互い真剣である事も忘れ、思い切り斬り掛かる。クートに剣が入れば死ぬ。しかしそんな事態にも落ち着いてクートは対処する。

(*´ω`*)レベリアは頭が悪いと云うか要領が悪いですね。

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