第14話 ギルドマスターとの話
「ついに完治したぜ!これで依頼が受けられる!」
次の日、今日もまたエイグの見舞いに部屋を訪れると開口一番にそう言いはなってきた。
その顔には満面の笑みを浮かべており、雰囲気や態度からも嬉しさが伝わってくる。
よっぽど医者に安静にしてろと言われて、ここ数日まともに体を動かせなかったのが辛かったようだ。
ちなみに昨日の時点でもエイグの怪我は良くなってはいたが、昨日の今日で完治するほどではなかった。
勿論、治したのは俺である。
昨日見舞いに来たときのエイグの様子を見て、もう一気に治して大丈夫だろうと判断して治してしまった。
それまでは、一気に治すと体への負担が大きいだろうと判断して自重して少しずつ治療していたのだ。
「何言ってるのよ。いくら傷の治りが早かったっていっても完治したばかりで依頼を受けさせるはずないでしょ」
エイグの発言にアリナが呆れたように釘を刺す。
「そんな!嘘だろ!?」
アリナに釘を刺されたエイグは、その発言に絶望を滲ませた声音で叫び声をあげる。
「本当に決まってるわよ!完治したばかりの体で無理して、また怪我したらどうするのよ!」
だが、その叫びはアリナに真っ正面から叩き潰されてしまう。
それでもその発言から、アリナが自分のことを心配して言ってくれているのだと理解すると。
「……分かった。しばらくは依頼を受けない」
がっくりと項垂れるも、ちゃんとアリナの言葉を受け入れた。
前までのエイグだったらここまで素直に受け入れないだろうが、ここ数日ずっと付きっきりでアリナに世話をされていたせいか、すっかり頭が上がらなくなってしまったのだ。
「分かってくれればいいのよ。なにもあたしだって、一生依頼を受けるなとは言わないんだから。せめてあと2~3日くらい我慢してくくればいいのよ」
項垂れて元気が無くなってしまったエイグに、アリナがそうフォローする。
そこで俺は、話が一段落したと判断すると。
「なあ、もう大丈夫か?」
今日は伝えに来たことをあったので、話に割って入った。
「あ、ごめんね。皆が来てたのに無視するかたちになっちゃって」
すると、アリナがエイグに釘を刺していて俺たちを無視するかたちになってしまっていたことを謝ってきた。
「いや、気にしてないから大丈夫だ。それにエイグにはしっかりと釘を刺しておかないと、本当に依頼を受けに行きそうだからな」
「そう言ってもらえると助かるわ。でも、エイグは本当体動かすのが好き過ぎて困るわよ」
そう言って、アリナはエイグの愚痴を溢しながら溜め息を吐く。
どうやら、俺たちがいない間も苦労してたらしい。
「それで、何か話したいことがあるみたいだけど何かしら?」
「ああ、明日なんだが冒険者ギルドのギルドマスターが俺ら全員でギルドに来てくれと言ってたんだ」
アリナが察して話を振ってくれたので、今日伝えに来たことを伝える。
「冒険者ギルドのギルドマスターが、あたしたちを呼ぶってことはやっぱりグールのことよね?」
「それであってると思う。ガルフがグールになっていたことと謎の声について報告したが、信憑性にかけるということで調査してたみたいだからな」
思うと言ってはいるが、俺は十中八九グールについてのことで呼ばれたと確信している。
「じゃあ、俺たちはそれを伝えに来ただけだし、エイグが元気なのも見れたからもう帰るな」
そう言い俺は部屋を出る。
「エイグ君が元気になったみたいで私も嬉しいです」
「僕も元気になってくれて安心したよ」
「…………(こくり)」
俺と一緒に来た3人も、それぞれ言葉をかけて部屋を出ていく。
「おう、ありがとな」
それに一応復活したエイグが言葉を返す。
その言葉を聞きながら俺たちは、エイグとアリナがいる部屋をあとにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺たちは今昨日言った通り、ギルドマスターに呼ばれているのでギルドに来ていた。
受付で名前を告げて、ギルドマスターに取り次いでもらえばいいらしいから早速受付に向かった。
「Fランク冒険者のヘルシャフトなのだが、ギルドマスターに呼ばれてきた」
Fランク冒険者が、ギルドマスターに呼ばれてきたなんて言えば怪しまれるかと思ったが。
「はい、ヘルシャフト様ですね。ギルドマスターより伺っております。只今、ギルドマスターが時間があるのかを聞いて参りますので、少々お待ちください」
ギルドマスターから俺たちが来るのが伝わっていたようで、別に怪しまれることもなかった。
そして、受付嬢はギルドマスターの執務室に向かっていった。
受付嬢がいなくなり、なんとなく手持ち無沙汰になった俺は、ふと聞こえてきた冒険者の話に耳を傾けた。
「そういえばよう。お前最近臭くねえか?」
「そういうお前こそ、最近匂いがヤバイぞ」
「そうかねえ、自分だとあんまし分かんねえんだよなー」
「ああ、それは俺も同じだ。お前に言われるまで、自分が臭いなんて気づかなかったぞ」
「まあ、俺らだけじゃねえみたいだよな臭いの」
「そういえば、最近体臭がキツいやつが増えたなとは思っていた」
「今日は風呂のある宿屋で風呂でも借りるとするかねえ」
「なら、俺も一緒に行く」
「じゃあ、酒でも飲みながら入ろうぜえ!」
「いいな!」
そう言って、その冒険者2人は依頼を受注してギルドを出ていった。
あの話を聞き、俺は絶対臭いなんて言われないように気をつけようと思う。
そんなどうでもいいことで俺が決意を新たにしてると、ちょうど受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。ギルドマスターは、今すぐお会いになるそうですので、執務室までご案内いたします」
「分かった。一緒に呼ばれてる仲間を呼んでくるから少し待っててくれ」
「分かりました」
俺は少し離れたところで、待っている5人を呼びにいった。
すぐにギルドマスターに会えることを告げ、5人を連れて受付嬢のところに戻り、受付嬢の案内でギルドマスターの執務室に向かった。
「こちらがギルドマスターの執務室になります。では、私はこれで失礼します」
俺たちを執務室に案内し終わると、受付嬢は元いた受付に戻っていってしまう。
どうすればいいのか少し迷ったが、取りあえず執務室のドアをノックする。
コン、コン
「Fランク冒険者ヘルシャフトです。一緒に呼ばれたパーティメンバーもいます」
そして、自分の名前を告げる。
「入って構わんよ」
すると、執務室の中から入室の許可が出たので俺を先頭にして入る。
執務室の中には、大きな長方形の長テーブルとその両側にそれぞれ座り心地の良さそうなソファがあり、あとは本がびっしりと詰まった本棚と今ギルドマスターが使っている執務机があった。
その執務机では、ギルドマスターであろう白髪の老人の男性が書類を処理していた。
「儂の仕事ももう少しで終わるからの、そこのソファに座っていて構わんよ」
ギルドマスターにそう言われ、俺たちは入口に近かった右側のソファに座った。
それからすぐに言葉通り仕事を終わらせたギルドマスターが、執務机から俺たちの対面のソファに移動して来た。
「さて、早速で悪いが話をさせてもらうとするの」
その言葉に俺たちは頷く。
「うむ、それでの。最初にお前さんたちに報告されたときは信じがたかったが、調べさせたところガルフは行方が分からなくなっておったのよ。しかも、依頼を受けて帰ってきてないようなのであっての。つまり、依頼途中で死亡してグールになったと考えられるということなり、お前さんたちがグールになったガルフを見たと言う報告は、それが真実だと判断されたの」
やっぱり報告したことについてだったか。
「グールのことは、お前さんたちの報告が正しいと判断されたのだがの。ヘルシャフトとジェイスが聞いたという謎の声については全く分からんかったの」
謎の声についてはギルドマスターの情報網をもってすら分からないとは、本当に何なんだ?
ガルフを殺した存在も分かっていない、謎の声が殺したのかもしれないし違うかもしれない。
本当に分からないことが多い。
「これで儂からの話は終わりになるの」
そう言って話すことだけを手短に話して、話を切り上げたギルドマスターはまた執務机に戻っていった。
俺たちはギルドマスターから話は終わったと言われたのもあり、話を聞いて疑問は残ったものの執務室をあとにした。




