表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/16

第15話 捧げられた生け贄

「行きたくない……」


 ギルドマスターとの話が終わり、ギルドをあとにした俺たちは今あるところに向かっていた。

 ギルドを出た後に俺が用事があると告げたら、皆が暇だからと一緒についてきたのだ。

 しかし、その向かう先を考えると俺は非常に行きたくなかった。

 それは何故かというと、買い物から一週間が経ったと言えば分かると思う。

 そう、俺の注文した服を一週間後に取りに行くことになっていたから、あのエリザベートの店に行かなくてはいけないのである。

 先程までのギルドマスターとの話で浮かんだ疑問が吹っ飛んでしまうくらい憂鬱になる。


「そのエリザベートさんでしたっけ?そんなに会いたくないのですか?」


 ティリーがあまりにも気分が沈んでる俺の態度に戸惑い、声をかけてくる。


「……正直に言うと会いたくないな。エリザベートが悪いやつではないと分かってはいるんだが、どうしても苦手なんだ」


 そうなのだ、色々と身の危険を感じることはあるが、エリザベートは悪いやつではないと俺は思っている。

 ただ、俺がああいうタイプの人が苦手なのだ。

 だから、行きたくないと思ってしまう。


「私が聞いた限りだと個性的な人だなと思いましたけど、そこまで苦手意識を持つような人なのでしょうか?」


 一応あの時のやり取りを話してはいるが、ティリーにはエリザベートの恐ろしさが伝わっていないようだ。

 ……まあ、あれは実際に体験しないと分からないよな。


「実際に体験してみれば分かるはずだ」


「そうですね。自分の目で確かめることにします」


 ティリーはエリザベートについてこれ以上聞かずに、店に着いてから実際に自分の目で確かめることにしたようだ。


「そういえば、ジェイスに言っとかなくちゃな。―――生け贄(・・・)について」


 俺は、エリザベートの店に行くことを考えたときに思いついた作戦を話すためにジェイスを呼んだ。


「なんだい話って?」


「ああ、それなんだが、エリザベートのことについては話したから知ってるよな?」


 問いかけてきたジェイスに俺は、この作戦を話す上で重要になるエリザベートのことを一応確認した。


「そりゃさっき聞いたからね」


 ジェイスがそれがどうしたという顔で言ってくる。

 流石にジェイスが話を聞いてなかったとは思っていなかったが、エイグみたいに全く話を聞いていないやつがいたし少し不安だったのだ。

 まあ、杞憂に終わったようだがな。


「多分だが、エリザベートはエイグとガンツみたいながっしりとした男が好みだと思うんだ」


「どうしてそう思ったんだい?」


 俺のエリザベートの好みの予想にジェイスが、その根拠を聞いてくる。

 だが、これは体験した俺だから分かる。


「あの時のエリザベートは、俺の体を見ているときに何か物足りなさそうな目をしていたからな。俺は線が細いからエリザベートは物足りなかったのだろう」


「なるほどね。ヘルシャフトの言いたいことは分かったけど、そのことが話とどう関係するんだい?」


 俺の述べたエリザベートの好みの根拠は、あの体験の恐ろしさをある程度察してくれているジェイスは納得してくれたみたいだ。

 その上で、それが話とどう関係するのかを聞いてきた。


「つまりだ……エイグとガンツを生け贄にすれば、俺たちは被害を受けないんじゃないか?」


 そう、俺が考えた作戦とは、シンプルにエイグとガンツを生け贄に捧げて自分たちはエリザベートから逃れようというものだった。


「それが出来たら僕としても嬉しいけど、そんなにうまくいくのかい?それにどうやって生け贄に捧げるんだい?」


 俺のエイグとガンツ生け贄にしよう作戦にジェイスは、躊躇いなく参加する気のようだ。

 まあ、ある程度察せる人なら俺の話を聞いて、エリザベートがどれ程恐ろしいか分かるだろうからな。

 ジェイスとしては、作戦が成功する可能性や作戦内容のほうが気になるみたいである。


「俺が考えるエリザベートの好みが正しければ、作戦は100%成功する。作戦についてもあまり難しく考えると反って失敗しそうだし、シンプルにエイグとガンツに先に店の中に入ってもらい、俺たちは少し後から入ろうと考えている」


 作戦は臨機応変に対応出来るようにシンプルになっている。

 この作戦の鍵は、エリザベートの好みだろうが大丈夫だろう。


「確かに難しく考えずにそれくらいシンプルなのがいいかもね」


 ジェイスも俺の作戦に同意してくれた。

 その後、俺とジェイスはエリザベートの店に着くまで、エイグとガンツをどうやって先に店に入れるのかなど色々と作戦について話し合った。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ここなのか?なかなか良いところじゃねぇか」


「…………(こくり)」


 そう言ってエイグとガンツは、エリザベートの店の扉を開けて入っていった。

 ここに着くまでに俺とジェイスで、エイグとガンツの2人が先に入るように色々とした甲斐があった。


 カランカラン


 扉を開けたことで、来店を知らせるベルが鳴る。


「あたしたちも行こっか」


「そうですね。エリザベートさんがどんな人なのか確かめます」


 そして、ベルが鳴るなかアリナとティリーも店に入っていった。

 その様子を俺とジェイスは、ただ見ていた。

 すると店の中から―――。


「あら~!いい男が2人も来たわ~!」


「ひっ!?く、来るんじゃねぇ!」


「っ!?」


「捕まえたわ~!近くで見ると更に私好みのいい男ね~!」


「は、離しやがれ!」


「この筋肉がたまらないわ~」


「話を聞けぇ!」


「っは!?な、何してんのよ!エイグを離しなさいよ!」


「はわわっ!これは凄いです。ヘル君が言ってた意味が分かりました」


 そんな騒々しいやり取りが聞こえてきた。


「どうやらうまくいったみたいだね」


「これで俺たちは大丈夫だろうな」


 生け贄を捧げたことで、安心した俺たちは店の中に入ることにした。


 カランカラン


 扉を開けたことによって、再び来店を知らせるベルが鳴る。


「あら、お客さんのようね~」


 そう言ってこちらを見るも、エリザベートはエイグとガンツを離さなかった。

 エイグはなんとか逃げようと暴れているが、エリザベートは全くびくともしていない。

 ガンツのほうは、諦めた表情でされるがままになっている。

 ていうか、ガンツ諦めるの早いな!?

 そして、アリナはエイグとエリザベートを引き剥がそうと必死に頑張っている。

 その様子をティリーが観察していた。

 ……俺たちじゃなければ、即座に店を出ていくくらいカオスな光景だな。


「ヘルシャフト君じゃな~い。注文した服を取りに来たのね~?」


 来店した客が俺だと気づくと、何の用か理解したようだ。


「ああ、一週間経ったから取りに来たんだが、出来てるか?」


 カオスな光景を無視することに俺は決め、服を受け取ってすぐに帰ることにすることにした。

 あれに巻き込まれたくないからな。


「出来てるわよ~」


 そう言ってエリザベートは、腰のポーチから服を取り出した。

 明らかに服が3着も入る大きさには見えないから、《空間収納》と同じ効果を持つマジックアイテムなのだろう。

 《空間収納》と同じ効果を持つマジックアイテムは高価だったはずだが、腕は良いはずだからそれだけ稼いでいて買えたとしても不思議ではない。


「おー!注文通りだな!」


 エリザベートが出した服は、俺が注文した通りの出来であった、

 正直、あまり期待はしてなかったから嬉しい。

 それにしても、今まで作ったことがないものをここまで完璧に作れるとはエリザベートの腕前は予想以上に凄いんだな。


「私も良く出来たと思うわよ~最初は慣れなくて大変だったけどね~」


「それは迷惑かけたな。追加料金とか払ったほうがいいか?」


 俺としてもこの出来を見ると、追加料金を払うのは吝かではない。


「大丈夫よ~この子たちをちょっと貸してくれれば、それでいいわ~」


 エリザベートは、追加料金ではなくエイグとガンツを貸してほしいらしい。


「分かった。好きなだけ貸す。じゃあ、俺はもう行くな。ティリー、ジェイス帰るぞ」


 2人を生け贄に捧げるような俺は、2人の了承なく貸し出すことに同意する。


「はい、帰りましょう」


「そうだね。帰ろうか」


 ティリーとジェイスもあれに巻き込まれるのは嫌だと判断したのか、気にせずに俺に同意した。

 そして、俺とティリーとジェイスの3人はエリザベートの店をあとにした。


「また来てくれると嬉しいわ~」


「おい!勝手に決めんじゃねぇー!置いてくなー!」


「え?な、なんで帰っちゃうのよー!」


 そんな声が店の中から聞こえのを聞きながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ