第12話 再会それは最悪の状態で
「ふぁ~、もう朝か」
そう呟き、俺は眠っていたベッドから起き上がる。
そして、まだ眠たい体を動かして顔を洗うために部屋を出て、宿の裏手にある井戸に向かう。
「ふぅ、ばっちり目が覚めた」
眠かった意識も井戸の冷たい水で顔を洗って、しっかりと覚醒した。
それから俺は朝食を食べるために食堂に向かった。
「それにしても、この体って見れるステータス以外もスペックが高いんだな」
食堂に向かう途中、思考がはっきりしてきた俺は昨日の祝勝会のことを思い出して、ふとそんなことを呟いていた。
「あの俺の加入が決まった後に、エイグたちにかなりの量の酒を飲まされたはずなのにほろ酔い程度にしかならなかったもんな。だからかあんなに飲んだのに二日酔いにもなってないし」
そうなのだ、この転生した今の体は酒にも強かったのだ。
お陰でべろんべろんに酔って醜態をさらすことにならなくて良かったが。
ちなみに俺に主に酒を飲ませようとしてきたのは、エイグとアリナの2人である。
他のメンバーは、ガンツはそういうことはしなくて、ジェイスとティリーが少し薦めてくるだけだった。
まあ、そんな感じで盛り上がって飲んでたんだが、なんと一番最初にドワーフであるガンツが酔いつぶれたことには驚いた。
ジェイスいわく今日はこれでもいつもよりも多く飲んだほうなんだと。
それを聞いて俺の中のドワーフのイメージが崩れてくのを感じた。
やっぱり異世界でドワーフっていったら、酒は水と一緒だとか言って常時酒飲んでるイメージだった。
それで、ガンツが酔いつぶれた後にしばらくして、エイグとアリナも酔いつぶれてそこで祝勝会はお開きになった。
その後にエイグたち3人を5人が泊まっている宿に送り届けて、俺も宿に帰ったんだよな。
「ま、強くて困ることでもないしな」
酒が強いことに対しては、そう結論付けて俺は思考を切り上げた。
「あ、ヘル君おはよう!」
そこで俺に声がかかった。
「ああ、レナか。おはよう」
どうやら思考を切り上げたタイミングでちょうどよく食堂に着いたようだ。
そして、食堂に入ってきた俺に気づいたレナが声をかけてきたみたいだ。
「この時間に来たってことは、朝ごはんだよね!すぐに用意するから待っててね!」
「頼む」
レナはすぐに厨房に向かっていった。
俺はレナが戻ってくる前に今日の予定をおさらいしとくことにする。
「確か今日はギルドで待ち合わせして、エイグたちと昨日教わった連携の練習するのに何個か簡単な依頼を受けるんだったよな」
これについては、俺的にも昇格のためのポイントが貯められるからありがたい。
勿論、連携も大事だと思っている。
それから少しの間、今日の連携の動きはどうするのがいいかなどを考えていると。
「はい、お待たせ!」
レナの元気な声と共に、目の前に朝食が置かれる。
今日の朝食のメニューは、ボリュームたっぷりのサンドイッチとリンゴみたいな見た目の果物だった。
「お、今日も美味しそうだな」
見た目からも匂いからも俺の食欲を刺激してくる。
「当たり前だよ!お父さんのごはんは世界一美味しいんだから!」
レナは嬉しそうに笑顔でそう語る。
「ああ、そうだな」
ここの宿の料理はレナの父親が作っているのだが、毎回お客さんに料理褒められるとレナは本当に嬉しそうに話すのだ。
だけど、毎回褒めてしまう俺としては食事の度に見てるわけで、その姿を見て思わず苦笑してまった。
まあ、ここの常連たちも同じように苦笑しちゃうんだけどな。
「でね、やっぱりお父さんは―――」
なおもお父さん自慢を語り続けるレナの話を聞きながら、俺は朝食を食べ始めた。
「―――なんだよ!凄いよね!」
「確かにレナの言う通り凄いな」
やっとレナのお父さん自慢が終わったのは、話始めてから10分程経ってからであった。
その間に朝食を食べ終えてしまった俺は、ひたすらレナの話を聞き相槌を打っていた。
「じゃあ、俺はそろそろ行くな」
「分かった!頑張ってね!」
レナの話を聞いてるうちに待ち合わせの時間が近くなってきたのを確認していた俺は、レナのお父さん自慢が終わったから冒険者ギルドに向かうことにした。
お父さんを自慢しきったからか、満足気な顔をしたレナが見送ってくれる。
そして、時間が迫ってるのもあって少し急ぎ足でギルドに向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「悪い、少し遅れた」
急いだが待ち合わせ時間には少し遅刻してしまった。
でも、あの状態のレナは話を聞かないとさらに話が長くなるから、どうしようもなかったんだよな。
「大丈夫だよ。それに僕たちも今来たところだしね」
ジェイスは遅れてきた俺に気にしないでいいと言ってくれる。
「そう言ってくれると助かる」
「ははっ、いいんだよ。ヘルシャフトは何か用事でもあって遅れたようだけど、こっちはエイグとアリナとガンツの3人が二日酔いでなかなか準備出来なかったんだよ。だからね、もしヘルシャフトが何も用事がなかったら、逆に僕たちのほうが遅れてたんだよね」
ジェイスたちのほうも朝から大変だったようだ。
「そうなるのか、でも待たせたのは事実だしな」
「なら、今日の依頼で頑張ってくれればいいよ」
「分かった。任せとけ」
そこまで話したところで、横から声をかけられた。
「俺も気にしてねぇからよ。早く依頼受けようぜ」
声をかけてきたのはエイグだった。
二日酔いだと聞いたが、見た感じそうは見えない。
「ああ、そうだな。依頼受けにいくか。それにしても、エイグは二日酔いじゃなかったのか?」
「それなんだがな、ティリーの光魔法のリフレッシュをかけてもらったんだぜ」
どうやら二日酔いに見えなかったのは、ティリーが魔法を使ったからのようだ。
「なら、もう平気なのか?」
「いんや、リフレッシュは気分をリフレッシュさせるだけだからな。二日酔いが治ったわけじゃないぜ。ま、依頼をやるのに支障はきたさねぇから大丈夫だぜ」
リフレッシュの魔法では二日酔いが治ったわけではないようである。
でも、本人が大丈夫だと言っているのだから大丈夫なのだろう。
「そう言うなら気にしないけど、アリナとガンツの2人は大丈夫なのか?」
エイグは大丈夫だと判断して、エイグの他にも二日酔いになっているアリナとガンツにも俺は確認した。
「ええ、一応リフレッシュをかけてもらったからあたしも平気よ」
「…………(こくり)」
2人も二日酔いは治ってはいないが、エイグ同様に依頼はやれるようだ。
「じゃあ、依頼を選ぼうか」
俺がエイグたち3人のコンディションを確認し終わったとこで、ジェイスが依頼選びを提案する。
そして、ジェイスとエイグとガンツの3人は依頼が貼ってある掲示板に向かっていった。
俺も行こうとしたが、アリナとそれを介抱してるティリーが動かないのを見て声をかけることにする。
分かったとは思うが、ティリーがずっと喋ってなかったのはアリナを介抱してたからなのだ。
「アリナとティリーは依頼を選びに行かないのか?」
「あたしはいいわ。ここで休んでるわよ」
「私もアリナと一緒にここにいます」
「分かった。じゃあ、俺は依頼選びに行くな」
アリナとティリーは来ないみたいだから俺は1人でエイグたちに合流した。
……行ったときにはもう依頼は決まってたけどな。
そして、受ける依頼が決まった俺たちはパーティで依頼を受注し、ギルドを出て目的地の街の西側にあるエギドの森に向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おらぁっ!」
エイグが目の前のオークの首をはねた。
このオークを倒したことによって、今日受注した依頼は全て達成になった。
ちなみに俺たちが受注した依頼は、オーク3体の討伐とホーンラビット5匹の討伐だった。
「これで今日の依頼は全部達成だね」
「ああ、あとはこのオークを回収してギルドに帰って報告するだけだな」
この時の俺たちは依頼を達成したことによって多少気が抜けていた。
それでも、ここが街の外であることから警戒は怠っていなかった。
それなのに―――。
「ぐわあぁぁぁっ!」
なんの前触れもなくエイグの絶叫が響いた。
慌てて俺たちがそちらを見ると、血溜まりにエイグが倒れており、その近くに明らかにエイグを斬りつけたと思われる血が滴る剣を持った男がいた。
そして、その男の目は真っ赤に輝いていた。
「グール!?なんでこんなところに!?」
ジェイスがその男の正体に気づいて声を荒げる。
それもそうだろう、グールは素体となった体の元の能力が高ければそれだけ強くなる魔物であり、そもそもグールになった時点で最低でも討伐難易度で限りなくCランクに近いDランクの強さを得るのだ。
「止めないでよ!離してよ!」
「ダメです!危なすぎます!」
「…………!(こくり!)」
エイグが倒れているのを見て、駆け寄ろうとしているアリナを危険だからとガンツとティリーが必死に止めている。
「くそっ!どうすればいい!」
ジェイスがまた何かを言っている。
だが、その仲間たちの言動に反応することなく、俺はずっとグールの男だけを見ていた。
嘘であってくれと願いながら。
何故なら―――。
「なんで!ガルフがグールになっているんだよ!」
そうグールの男の正体は、俺が冒険者になる前の夜に話をしていたCランク冒険者のガルフだったのだから。




