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 スキルは修練内容を実行し、埋めていくことよってランクを上げる。

 【フォークロア】の全種族が取得できるスキルの数は1万以上。人間種はその殆どに手を出すことができる。とは言え、アカザですら10年間で上げるに上げたスキルを、1年で同じぐらいまで上げられるはずがない。


 だが、強さだけなら急速に上げることが可能だ。

 プレイヤースキルのような腕ではなく、スキルを使うことで強くなる。

 【フォークロア】では通常攻撃はあまり使わない。スキル使用が前提となっているから、基本敵との戦闘はスキルの応酬となる。モンスターによっては通常攻撃しかしてこないタイプも居るが、他のゲームで最弱種になるモンスターでもスキルを使って来る。


 そのスキルをスキルで躱す、防ぐ、あるいは使われる前にこちらが攻撃して、スキルの使用を中断させるなど、様々な対処がある。

 そのときに使うスキルを絞り、ランクを上げることで手っ取り早く強くなれる。


 盾役ならモンスターの敵愾心(ヘイト)向上できるタウント(挑発)スキル、モンスターの攻撃を防ぐ【守護騎士】、【武器《盾》】を上げる。

 後衛なら【弓術】、【魔法】などの遠距離攻撃系のスキル、前衛を支えるための【回復術】、【付与術】などのスキルを鍛えなければならない。モンスターの【生命力】を削るダメージディラーなら攻撃全般のスキル、もっと言えば使う武器の選択。そこから、選んだ武器のスキルと【暗殺者】や【暗黒騎士】といった攻撃に特化したスキルを強化していくことで、ダメージが上がっていく。


 ともかく、彼らは【暗殺者】のスキルを得ているため、盾役となる半獣クガ、竜人タツキ、あと牛の半獣と羊の獣人が志願した。他の前衛は持っている【暗殺者】スキルを強化し、後衛に転属することになった者は【魔法】なり【付与術】などのスキル群を1つに決めて集中的に鍛えている最中だ。


 一度に全て上げようとするより、1つのスキル群、もっと言えば1つのスキルを集中的に育てた方が戦力になりやすい。


 様々なスキルを中途半端に挙げた所で、MMORPGでは器用貧乏にしかならない。


 そして、前から思っていたことだがゲームの【フォークロア】ではPVP(対戦)をする際は、相手にPVPの申請を承諾してもらう必要がある。だが、この世界ではPVP申請を行わずとも相手を傷つけることが可能。

 そして、ゲーム【フォークロア】ではPVPをしている最中、使ったスキルの修練内容が埋まることはない。

 

 だが、アカザはクガに攻撃をして、クガの使っているスキルの修練内容が埋まったことが分かった。


 そして、相手の攻撃を防御する項目が多い、【守護騎士】、【武器《盾》】のスキル群。

 その中には【生命力】が1、2割以下の状況で相手の攻撃を防ぐという、一歩間違えば死んでしまう危険な修練項目もある。だが、攻撃のタイミングが分かっていれば、防ぐことは容易い。


「いくぞ~、準備しろー。さーん、にー、いーちー」

 と、アカザが気の抜けた声でカウントし、腰を落として木製の短刀を構える。そしてカウントし終えたとき、木剣を振る。それにスキルが発動し速度が乗る。

 【武器《短刀》】、【スタブ】。

 シュッと微かな音を出しただけで疾風の如く突く。それが盾を構えたクガに襲い掛かる。だが、わざわざタイミングを教えてスキルを放った。その攻撃を対処するのは容易く、クガは【守護騎士】の【ブロック】を発動させ、強固な防御姿勢を取った。

 岩でも叩いたかのような、衝撃が木製の短刀に伝わった後、安っぽい剣は弾かれる。


 このように相手のスキルによる攻撃を弾き、相手の硬直中に攻撃を仕返すスキルだ。

 だが、アカザはいつも使っている刀ではなく、材質が木材の【木短刀《錬》】を握っている。

 ランクが低い【ブロック】では完全にダメージを防ぎきれず、彼らが痛みを伴う。いきなり【生命力】が瀕死に向かう程の痛みとは実際に受けてみないと想像できない。

 恐らく、不意打ちで猛スピードでトラックに轢かれるぐらいの痛みだろうか。 


 最初に【膝丸《薄緑》】で攻撃した際は、【ブロック】の上からでも一気に【生命力】が1になった。そのときは刀と盾が激突した衝撃だけで手の指から肩まで骨が粉砕された。流石に慌てて【ハイヒール】を掛け、怪我を治したが、クガの腕は痛々しいとしか言いようがなかった。

 実験台となったクガには申し訳ないが、一々そのような怪我をして治してを繰り返すのも手間だ。


 なので、【虚弱の指輪】や一番攻撃力が低い武器の種類、短刀のカテゴリ内にある一番攻撃力が低い【木短刀《錬》】を装備し、でアカザは弱体化し、クガたちがある程度は攻撃に耐えれるようにしている。これでクガたちは手に赤い痣ができるぐらいの怪我で済んでいる。


 また、クガが持っている盾にも能力が付与(エンチャント)されており、スキル群【守護騎士】、【武器《盾》】の修練が埋まるのを2倍に増やすことができる。さらに、【職業才能】を【守護騎士】に変更することでまた2倍の修練が埋まる。

 これで通常の修練より4倍の速度でランクが上がる。

 

 ちなみに、この盾は昔アカザが【守護騎士】及び【武器《盾》】のスキル上げに使っていたもので、露店で8千万という値段で売られていたものだ。こんなスキル上げを楽にする装備は、プレイヤーの間で高く売買される事が多い。


 その他、兜や鎧、篭手や脛当ても【守護騎士】、【武器《盾》】の修練が2倍に埋まる付与(エンチャント)されており、10倍の速度でスキルの修練が埋まる。

 ただ、各部が1つずつしかない。また、成長促進効果の【見習い守護騎士】【未熟な盾の】《エンチャント》は、装備時に弱体化してしまう。


 【守護騎士】、【武器《盾》】以外のスキル効果は著しく激減。更にスキルを使うときに消費する【マナ】【スタミナ】消費の加速がある。


 彼らがスキルを使って【スタミナ】を消費して少なくなれば、【手加減】を使って【生命力】が1残ったら、それぞれの薬品(ポーション)で回復させている。

 つまり、手が晴れるほどの攻撃を何度も加え、薬品(ポーション)によって何度も治すを繰り返す。また、薬品(ポーション)を飲むその度に【薬品効率化】と【薬品中毒緩和】のスキルの項目も埋めていく。


 最初は薬品(ポーション)中毒によって、頭が痛い、吐き気、腹痛などを訴えっていたが、すぐに【農場】にある温泉に投げ込んで中毒状態から回復させる。それを何度か繰り返すうちに、【ブロック】、【薬品効率化】、【薬品中毒緩和】のスキルが上がっていった。なので今ではかなり長い時間、アカザの攻撃を受けることができるようになった。


 【ブロック】はスキル群【守護騎士】の中で最初に覚える初歩的で、基本的なスキルなので、もうそろそろランク100になってもおかしくないだろう。

「で、もうそろそろ【ブロック】ランク100になるか?」

 確認作業のようにクガに問うアカザ。

「……今、ランク98の98.7%……だ」

 クガは苦痛に顔を歪めながら、答えた。確かにアカザの攻撃は弱体化している。例えばLV100で装備を初期装備にして、最初に戦う雑魚モンスターと戦闘した場合、特殊な条件下でもなければ勝つのはLV100まで上げた方だ。


 アカザの攻撃とクガの防御では、そのくらいの開きがある。ボクシングでの力の差があり過ぎるミット打ちみたいなものだ。

 だったら、アカザではなく他の同レベルの強さを持った者が、クガに向かってスキルで攻撃すればいい話になる。だが、【ブロック】の修練内容に【スキルで防ぎ、相手の攻撃で一定のダメージを受ける】と言った内容がある。

 同レベルの攻撃では【ブロック】によってダメージが低くなってしまい、受けるダメージが微量で埋まらない。なので攻撃力を調整し、クガの身に付けている装備の防御力と【ブロック】のダメージ軽減の上で装備で弱体化を計っている。だが、クガに与えるダメージが数値分を超えているのは仕方がない。


 ともかく今日中に、初歩的であり基本的なスキル1つくらいは最高ランクにしたかった。なので、アカザも気付かないうちに、ハイペースになっていた。まだ、始めてから2時間も立っていない。


 逆に言えば2時間近く、痣ができる威力の攻撃を受け続けたのだ。痛覚としては、棚の角に足の小指を思わずぶつけてしまったように痛い。それが連続で来るので、歯を食いしばり悶絶するほどの痛みを何とか堪えているのだ。

 それに消費した【スタミナ】の関係から、疲れがでてきている。薬品(ポーション)での回復も、飲み続ければ嘔吐しまい、強制的に【農場】の温泉に投げ込まれる。

 そして、温泉に浸かっている3分間には薬品(ポーション)中毒は解消され、また修練と言う名のサウンドバックが再開される。



「もう少しで、終わるっ!」

「何を言っている。【ブロック】の次は【カウンターブロック】上げるに決まっているだろ」

 修練はまだ終わらない。そのことに、呆然としてしまったクガであった。

 それにクガ以外にも3人育てなければならない。クガの修練が埋まったら、次はタツキにでもしようかと考える。



 そして、声を掛けてスキルを放つ。

 だが、盾に当たった衝撃が先程とは段違いに強い。


「あ、クリティカル」

 パッシブスキルのせいで大体、5倍のダメージを相手に与えるクリティカル。クリティカル発生を促すステータスLUK(幸運)も、大幅に落としているはずなのだが、確率の問題なのか時折発生してしまう。

 それでも首や心臓といった急所の場所に攻撃を受けた場合が、クリティカルが発生しやすい。だが時折、盾の上からでもクリティカルが発生する。

「いぎっ!?」

 それでも【手加減】のおかげで、【生命力】が1は残る。逆に言えば1しか残らない。【生命力】が減少した分の痛みを受けるクガは、激痛から文字通り九死に一生のダメージを受けた。


 指と腕の骨が折れる嫌な音がする。ともかく【ライフポーション】で怪我を治療し、攻撃を再開するアカザ。




「……」

「ど、どうした!?」

 死んだ目になっているクガを心配して、次の【守護騎士】を中心に上げるタツキが声を掛けた。このような姿になっているクガをタツキは見たことがない。


 アカザの修練がどれほどれ程かは分からないが、クガは里で行われていた修練(罠が張り廻った山中を走ったり、断食で水だけで数日過ごし戦闘をしたりといった過酷な修行)をやっていたクガがここまで疲労している。そのことに戦慄を隠せなかったタツキ。 


「……がんばれ」

「は、は?」

 クガの言っている意味が分からず、混乱しているうちに修練用の装備を受け取ったタツキ。


 直後、クリティカルが発生し指と腕の骨が折れた。もしくは箪笥の角に小指をぶつけたような痛みに何度もさいなまれるタツキであった。

 これが少なくとも初歩的、基本的な【守護騎士】スキルが、全て最高ランクになるまでに1週間は続いた。


 ちなみに、拷問で指を折るという行為は一般的である。

 それを何度も繰り返した彼らは日常的に拷問を受けているのに等しく、修練が終わった数分は心身喪失状態に近かったらしい。

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