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「ギュウタ、防御ばかりじゃなくて攻撃も加えろ! 盾役だからって、防御だけしていればいい訳ないだろ!」

「分かってるモー!」

「後衛もだ! 常に動いて狙いやすい位置から攻撃しろ! 戦闘中に相手が自分の思う通りに動いてくれると思うな!」

「は、はい!」

「分かってます!」

「リン! 敵愾心(ヘイト)が向上しやすいスキル攻撃入れ過ぎだ! 1撃離脱を意識しろって言っただろ! 後仲間に攻撃してどうする!? 馬鹿なのか! または阿保か!」

「す、すいません!」


 アカザたちは今、木材を採取できる森に出現するモンスター、特に危険な【ワイルドベアー】の掃討をしている。【ワイルドベアー】は熊のモンスターで、頭がヤンキーのような髪形をしているアクティブモンスター。

 体格が大きいモンスターは、同レベルの難易度において【生命力】が高い傾向にある。

 【ワイルドベアー】も【生命力】は高く、巨体に似合わない移動速度を持っている。攻撃力も低い訳ではない。だが、1、2体なら初心者パーティでも倒せない訳ではない。


 モンスターがリポップするまではある程度時間が掛かるため、その間に連れて来た職人たちに採取をしてもらおう算段だった。暗殺団の戦闘経験がある彼らなら、4体ぐらいは同時に相手取っても大丈夫だろうと考えていた。


 なのでフィールドを6人パーティで徘徊し、基本は【ワイルドベアー】1匹対パーティメンバー6人なら、よほどのことがない限り余裕だろう。


 だが、アカザが殆どの【ワイルドベアー】を討伐することになってしまった。


 その戦闘で露見したのは彼らの連携の拙さだった。

 ギルドホールを襲撃した際は、ある程度の陣形、戦い方が頭の中に入っている。だが、新しいスキルの習得で戦い方が一変してしまった。その戦闘スタイルの変更に戸惑っている。


 盾役は【タウント】や防御スキルぐらいしか使わず、攻撃の機会があっても攻撃していない。また、移動だけで回避できる攻撃もあるのに、無理してスキルを発動して防御している。端的に言えば臨機応変に行動できていない。


 アタッカーがモンスターに張り付いて連続攻撃をするのは、それに伴い被弾率が高くなってしまう。また、ダウン値がすぐに溜まってモンスターが後方に飛んで行ってしまう。

 それを追撃するアタッカーが前へ前へと深入りして、パーティの陣形を崩してしまう。また、ノックバックしない大型モンスターが相手でも、余程、モンスターの攻撃を見切るか、回避スキルを重点的に使用するかしないといけない。


 また、攻撃を仲間に当てるなどシャレにならない。ゲームでも相手の行動を邪魔して、不快感を与えてしまう。唯一救いなのは、攻撃する対象以外にはダメージが発生しないらしく、同士討ちといった状況にはならないことだろう。


 少し実験でパーティを組んで、スキル修練と略してクガにスキルを放った。その時はしっかりとダメージがクガの【生命力】を減らした。だが、先程のような同士討ちには衝撃で動きが止まっただけで、【生命力】事態は減っていない。


 恐らく、攻撃する対象に殺害や敵対の意思があるかないかが判断されて、された場合【生命力】が減っているようだ。

 ここまで来るとこの世界のルールがどうなっているのか、もう分からない。ただ、広範囲攻撃、魔法で味方ごと巻き込んでも、ダメージが出ないというのは嬉しいし安心した。


 前衛が複数のモンスターに囲まれている時に、範囲攻撃、魔法で複数のモンスターごと前衛(味方)を後衛(味方)が焼き払うことなど、よくあることなのだ。


 後衛も後ろに居ることが当たり前と思っている節があるらしく、戦闘を開始した所から動こうとしないことが多かった。後衛にはまだ広範囲魔法のスキルは教えていなかったので、単体攻撃では前衛が射線を塞いでしまい攻撃しないことが多い。

 ヒーラーなら攻撃を喰らえば、それがどんな微弱なダメージでもしようとしてしまう。何度も何度も【ヒール】を使うので、【マナ】が枯渇し易く、どう考えても過剰な回復になってしまっていた。


 なので、新しいタイプのスキル、戦闘にまだ思考と体が慣れていないのだ。こればかりは時間を掛けるしかない。

 今までは素早く敵を倒すことに専念していたが、いきなり役割が変わり言葉やスキル能力、自分の役割の固定観念に囚われている。


 考えてみればこの世界の住人の戦い方をアカザは知らない。プレイヤーとでは考え方も異なってしまう。

 なので先頭が終わった時に聞いてみると、彼らは大人数で奇襲して相手が混乱しているうちに倒してしまう電撃戦ばかりを練習していたらしい。


 その際の人数は10人以下にはならないように調整していたらしい。そして、その戦い方は10人が一斉に1体に集中攻撃するという、物量の戦い方が中心。もっと言えば攻め一色の戦い方。

 それが悪い訳ではない。むしろ、レイドボス、フィールドボスなどの【生命力】、防御力が高い相手では、最初から複数人でボコるのを前提として存在しているモンスターが居る。

 また、ラストスパートを掛けるように戦闘の最後で強力なスキルを連続するのも、確実視倒す、モンスターの反撃や第三者の介入をさせないといった、事故を減らすといったことになる。


 ただ、いくら早く倒せても次々と現れるモンスター相手では最初から全力で掛かっている分、持久戦には弱く、継続戦闘能力が低い。薬品(ポーション)などのアイテムも個数、回復量、使用回数などの限度がある。


 ともかく、位置取りや回復量の把握、攻撃と防御の切り替えといった計算を入れた戦闘をすることが最初の課題になった。


 それに暗殺団での修練が無駄だったかと言うとそうではない。


 また、サバイバル訓練の方で得られた技術が彼らの利点だった。モンスターに気付かれずに追跡するのは上手く、遠目で相手を認識する、耳を頼りに沸き水やモンスターの位置を特定するなどはアカザでもできない能力を持っている。そう言った感覚器官に優れているのは主に獣人、半獣が多い。特徴がない人間種も、アカザよりは身のこなしが上手く、バランス感覚に優れていたりする。


 職人が採取する際は森の警戒を任せ、モンスターの警報代わりにはなるので助かる。

 しばらくは、彼らの報告から大量にアクティブモンスターが沸いた(ポップ)した場合はアカザが掃討し、少数ならローテーションで彼らに戦闘させて経験を積ませる。

 無論、危なくなった際はアカザが援護する。


「はぁー……」

「ぶもー……」

 【ワイルドベアー】の【生命力】がなくなり黒い霧となっていくのを確認した彼らは、戦闘の疲労から地面に座ってしまう。薬品(ポーション)を彼らに配る。


「んー。もう何戦か……って、モンスターが居ないか」

 呟きを聞いたのか、ギョッと目をひん剥いてアカザの方を見る。だが、続く言葉に安堵して体の力を抜いたギュウタ達。

 アカザはもっと戦闘経験を積ませないと使い物にならないと思ったが、戦闘してくれる相手が居ない。なら、仲間同士で戦闘訓練をさせるか、と結論を出した。


 職人たちが斧を使って木々から木材を採取し、【インベントリウィンドウ】の中に収納していく。入れられるだけ入れて【エチゴ】に戻って木材を加工、その後、建築材料として使われる。


 他にも弓矢、槍などの武器、薪、橋や茶わんなどの日常に必要な物を作るために素材が使われる。その為、素材アイテムはたくさん集めなければならない。 また木材以外にも釘や武器を作るための金属、壁や城壁の補強をするための土、石材を採取する予定。


 こうなると街作りのシミュレーションゲームでもしているようだ。


「すいませーん。素材がいっぱいに詰め込んだので、【エチゴ】に帰ろうかと」

「へーい。帰るぞー」

「……ぶもー」

「……了解です」

 アカザの声でノロノロと動き出したギュウタたちも職人たちと一緒に行動する。紐で繋いで停めていた馬に騎乗し、【エチゴ】へと移動する。しかし、疲れているからか馬の背にもたれるようにして乗っている。


 この馬は【ペット】ではなく、【エチゴ】で飼育されていた馬。なので【呼び出し】の制限時間はない。とはいえ、貴重な馬なのでアカザは【ペット】の馬を【呼び出し(召喚)】して、移動している。


 薬品(ポーション)で、各ゲージを回復させても精神的な疲労、筋肉的、ストレスは溜まるらしい。どうやら【マナ】は頭を働かせるエネルギー、【スタミナ】は体を動かすエネルギーのように感じる。となると、【生命力】は体を保つエネルギーになるらしい。


 だが、アカザが長時間、動いてもあまり疲れるという感覚がない。これが各ゲージの量が多いからなのか、よく分からなかった。




 【エチゴ】に到着したときには、もう既に日が暮れていた。職人たちとは入口の大門で別れてアカザたちはギルドホールへと向かう。アカザは未だにギルド名をどうするかで悩んでしまい、未だ結成できていない。なので、しばらくクガやギュウタたちには、ギルドホールの広間で毛布を敷いて寝てもらっている。


「いい加減作らないと……」

 流石にこのまま床で寝るのはまずいだろう。アカザなら硬い床で寝る行為は、寝付けず翌日から体の調子を崩し、体中が痛くなってしまう。

 だが、彼らは雨風を凌げるので、野晒しよりはいいらしく、今のところ不満は上がっていない。しかし、マシということなので、彼らも環境の良い所で寝たいのが本音だろう。


 だが、うーんと考えても決まらない。キャラクターネームを考えるときは植物図鑑を適当に見ていて、漢字がかっこいいからという理由で【アカザ】と決定した。だが、自分1人の感性で決めて良いものなのか、不安になってしまう。


「何かこのギルドの象徴みたいなものがあればなぁー」

「早くしないと適当に名前付けるわよ」

 悩んでいるアカザの後ろから声を掛けられる。その声はあまり聞きたくない物だった。

 後ろに振り返るとそこには、長い黒髪を真っ直ぐに下ろし巫女服を着たキキョウが居る。


「あんただけはやめろ。酷い名前になる」

 彼女のネーミングセンスは酷い物で、どうしてそのような名前を付けるのか理解できないほどだ。

「失敬ね」

「勝手にやる方が失礼だ」


「ともかく、あんたが頼んでいた物ができたから」

「あー。取りに行くのは木工職人のところだよな?」

 前に大多数の人数を移動させるのに必要な物を、アカザ1人では作れそうになかったので、【エチゴ】の職人たちの手を借りた。何せ、エチゴの広場、面積50メートル四方はある物なのだ。


「ええ、ってか、あんなの使う必要あるの?」

「必要なものだし、今は緊急だろ。第一、利益にならない物を作る余裕がある訳じゃない」

 馬の移動では時間が掛かり、また乗せられる人数も限られてくる。

 木材は森林が近くにあるからまだ何とかなる。だが、金属類はRPGの定番というか火山や坑道に採取できるポイントがある。【エチゴ】近くの山と言えば、大きな池を渡ったところにあるので、どうしても馬では渡れない。船も考えたが、山道を登る手間がある。

 なので、飛行でどうにかしたい。


 そのための、運搬手段を依頼した。

 簡単な物ではあるが、数十人を運べるために大きい物を作らせた。なので、製作期間は1週間から10日ぐらいかかると思っていたが、4日で作り上げてしまったらしい。


「手抜きとかじゃないよな?」

「そんなこと作った職人に言ったら、怒鳴られるわよ」

 あまりに予想より早かったため、疑ってしまう。


「ともかく、大きくて場所取るから早くどうにかして」

 明日、注文した物を取りに行くことにした。物の出来はその時に見ればいいと楽観的に考えている。

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