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廃人ゲーマー<ゲームでも異世界です。  作者: 中二ばっか
大規模戦闘《イベント》開始
21/78

2-8

 渓谷には破壊された入口の門がある。それを確認したアカザは予定通り【大型黒騎竜】を飛ばせる。

 渓谷の上に来たところで【大型黒騎竜】は、その大きな口を開け深呼吸をするように、周りの空気を一気に吸い込む。そして、【竜騎士】、【騎竜】の代表的なスキルを発動する。


 【ドラゴンブレス】

 前面に放射状に伸びる範囲攻撃で、殆どが炎を口から吐き出す技ではある。【騎竜】やドラゴンの種類によっては味方を回復させる息吹であったり、バッドステータスを与える呪いの息吹。


 そして、【大型黒騎竜】の特徴。その巨大な体格はスキルの効果範囲を広げる性質を持つ。無論、【ドラゴンブレス】にも適応され、攻撃範囲が広くなる。


 巨大な咢から放たれた蒼黒い炎の息吹は、巨大なガスバーナーでも着火させたようにボゴオ゛オ゛というロケット噴射のような爆音で火柱を立てる。


 青黒い炎の高熱で渓谷の岩をドロドロに溶かし、直撃したモンスターは骨も残さない。

 沸点を一気に超えた岩はマグマのようになり、余波でさえも火傷を負わせる【ドラゴンブレス】は渓谷の一帯を、一瞬にして灼熱地獄へと変えた。


 このまま、【ドラゴンブレス】で空中砲火したいところだが、【大型黒騎竜】はその巨体の特性から差し引かれて【クールタイム】が長い。


 【ドラゴンブレス】の第一撃によって下のモンスターたちが、遠距離攻撃を仕掛けて来る。その場にあった石による投石や弓矢、詠唱によって雷撃や火球で攻撃をしてくるが、分厚い鱗に弾かれる。


 しかし、【騎竜】が受けるダメージは騎乗者も喰らってしまう。今騎乗している22人、平均的にダメージが通り、【生命力】が減る。アカザは防御力が高いため何ともないが、そうでない者たちは苦痛に顔が歪む。


 その巨体から高度は制限を受けてしまうため、射程外に逃げることも難しい。

 なので、畳みかけ攻撃の手を中断させるしかない。


 【ワイバーンディセンド】によって地面にその巨体を急降下して叩き付つる。接触した瞬間、隕石でも落ちたような衝撃波が地面を揺らす。


 潰されたモンスターは勿論、衝撃波に飲み込まれたモンスターも黒い霧に変換される。

 そして、崖を【ドラゴンテイル】で遠心力を付けた尾で叩き付け、【ドラゴンクロウ】で鋭く太い爪が生えている前脚を振り亀裂を入れ、【ドラゴンドライブ】で頭から突っ込みタックルする。


 【大型黒騎竜】の攻撃に堪えられず、崖が崩れ出す。

 土砂崩れによって渓谷は潰され、巻き込まれモンスター達が断末魔を上げ生き埋もれになる。


 そして、渓谷を潰しても未だにモンスターは残っており、眼前に残ったモンスター達に【竜騎士】のスキルを発動できるだけ、連発して数を減らしていく。


 【ドラゴンファング】による竜の力を纏った黒い炎のようなオーラが牙に付加され、巨体のオークの首元を噛み切り、【ドラゴンハウリング】によって【大型黒騎竜】が放つ咆哮は衝撃砲になっており、相手の耳を使えなくさせドラゴンの脅威を与え怯ませる前に、モンスターの【生命力】を掻き消し黒いモヤにする。


 本来は相手にバッドステータスを与える方が重視されている【ドラゴンハウリング】さえ、この威力。それどころか、質量で足で踏みつぶし、体がぶつかるだけではじき出され、一つの挙動で【生命力】が削られている。


 そして、渓谷は一本道であるため、直線状の範囲攻撃ならどうなるかと思い、興味心から【ドラゴン・デストラクション】を発動。


 直後、渓谷ごと吹き飛ばしてしまった。

 

 まず【大型黒騎竜】の口から出された黒いエネルギーがビームとなって地を焼いた。軽くモンスターたちを包み、灰や倒した時に出る黒い霧すら残さず消し飛ばす。


 次に黒いエネルギーは直線上にあった崖をぶち抜き、破壊。そこで止まることなくビームは直進し続ける。そのまま【シュウキゴク】の背景に設定されている針の山に当たり、大規模な黒い爆発が起こり針の山を半分削って、やっと【ドラゴン・デストラクション】の破壊は終わる。


 それでも爆風が離れているアカザたちの頬を叩く。


 最早、怪獣映画さながらの暴れっぷり。

 ゲームでは斜め上から口から放つビームであり、あのような威力にはならない。精々エフェクトで放たれたビームが、爆発してドーム状に広がる範囲攻撃である。


 その背中に乗っているアカザは【竜騎乗】によって、どのような態勢をとればいいか分かるが、他の者たちは鱗や甲殻の凹凸にしがみ付いている。その者たちは悲鳴や叫び声を上げており、安全装置がない絶叫マシンへと変貌している。


 だが、そろそろ【大型黒騎竜】の呼び出せる限界が近き、存在が薄れて半透明になる【大型黒騎竜】。


 【大型黒騎竜】はクエスト【黒龍への祈り歌】のクリアによって、取得できる。

 通常、【騎竜】は制限なく呼び出すことが可能。

 だが、特殊な【騎竜】、課金サービスやクエスト報酬で貰える【騎竜】は各【騎竜】のマスタリの影響を受け、更に属性や能力が付加され通常の【騎竜】より強力になっている。今、呼び出している【大型黒騎竜】は、【大型騎竜】に一文字の【黒】が加わったことで、闇属性を得ている。


 強力な【騎竜】や【召喚獣】を使わせ続けないためか、ゲーム上のバランスを取るためか、制限を掛けられており【ペット】のように時間制限がある。


 なので【シュウキゴク】までの移動時間に殆どの時間を使い、後5分で【大型黒騎竜】は消失する。


 その前にスキル群【竜騎士】の中で【クールタイム】が最長のスキルを使う。


 【ドラゴンソウル】

 その能力は今現在呼び出している【騎竜】を使えなくする代わりに、騎乗している者に竜属性を与え、選択した【騎竜】の攻撃力、防御力の50%を一人ずつ分け与える。


 アビリティスキル【ドラゴンソウル】のデミリットは、自身の竜属性以外の50%の属性値の減少。

 【大型黒騎竜】の攻撃力、防御力が22人に分散される。50%を分散され精々1%程度だが、その1%は凄まじい数値の1%である。100は1程度、1000は10程度、10000は100程度。

 そして、傲りでアカザが言うのなら、廃人がゲームにつぎ込んだ経験、時間、努力の1%は、軽く初心程度の経験、時間、努力を超える。


 【大型黒騎竜】が消える代わりに、魂が22人の体に纏わり、オーラで包まれ力がみなぎる。

 【大型黒騎竜】が消えたことで空中に放り出された者たちは、受け身や膝を大きく曲げ地面に各々に着地する。


「いった!」

 感情的な黒髪ロングの巫女服が、一人だけ着地に失敗し尻餅をついたようだが、回復魔法を使い気はない。


 あれ程、【大型黒騎竜】が暴れ回ったというのにすぐさまモンスターが、わんさかアカザたちの方に向かって来る。

 幸い、土砂によって壁になってモンスターたちは分断されている。挟撃されないのが、ありがたい。


 囲まれるという状況はゲーム時代でも、最悪な展開。範囲攻撃で殲滅できればいいものの、できなければ四方からの複数の攻撃によって身動きできずに、そのまま【生命力】を0にするしかない。


 モニター越しでキャラクターの背中を見られるとはいえ、画面外からの攻撃や乱入によって、アカザも死んだことがある。


「では手はず通りに」

「あいあいさ」


 すぐに【騎飛竜】を呼び出し、背中に乗る。

 すぐさま上昇して、【地獄門】を探そうとしたが、誰かがジャンプして駆け込み乗車(騎乗?)してくる。


「ちょっと待ちなさいよ!」

「……めっさ足手纏いなんだが」

「あんたがサボらないように見張るだけよ! それにあんただけだと心配だしね!」

(……ツンデレ?)


 アカザがそう思っていると、遠くに居たモンスターたちがアカザに向かって弓を放ってくる。

 アカザは、ぐるりと【騎飛竜】を上下逆転させ矢の群れを回避。【龍騎乗】によってアカザは磁石にくっ付いたみたいに乗っていられるが、キキョウは持ってないのでひーこら言ってしがみ付く。


「ちょ、ちょっと! もうちょっと丁寧に扱いなさいよ。っていうか落ちるぅ!?」

 キキョウが文句を言って来るが、アカザは立て直す気にはなれない。それどころかそのまま攻撃準備に入る。


 【騎飛竜】の上に騎乗した状態だと翼や鎌首が邪魔になり、攻撃が限定されてしまう。それらを除くために障害物を退け、少しでも射程距離を延ばす。


 【サンダーレイン】のような必中攻撃、【ハリケーンラン】のような範囲攻撃ならば放つだけで終わるが、過剰火力のオーバーキルであり無駄な【マナ】消費である。


 久戦を考えると無駄はせず、力を温存するべきである。


 よって装備を変更し【クロノスの鎌】を背中に太刀とX字になるようにして背負い、腰の【ガンブレイド】を引き抜き両手にそれぞれ持つ。


 ホワイトホースのような、銃身の鉄の棒が長い形をし、その下に大型で片刃のサバイバルナイフを取り付けたようなガンブレイド【キメリエスGB3】。ドラマなどで警察官が持つ小さいリボルバー拳銃(ニューナンブM60)に、折り畳み式ナイフでも付けたようなガンブレイド【インプGB3】。


 江戸時代では絶対に存在しない兵器【拳銃】。

 しかし、ここはゲームの中であり、地球の歴史や伝承を元にしているだけである。

 そこに人の創作が加わり、何があってもおかしくない。なので江戸時代に【ホットドック】があってもおかしくない。


 剣と魔法の世界観に合わない? 【電光石火】は非常に速いという意味なのに、炎や雷を出せる時点で今更である。


 その二丁銃をそれぞれ下のオークやオーガなどの的が大きなモンスターに狙いを絞り、スキル群【銃術】の【マナバレル】を使用する。

 瞬間、【マナ】がアカザの手から伝わり、二丁銃の砲身が青白い淡い光が纏わりついて射程距離を強化する。


 【拳銃】の弱点は射程距離の低さだが、引き金を引く。炭酸飲料の蓋を開けるような発砲音と共に、弾倉にある【魔力弾】が消費され魔弾が放たれる。

 通常では15mも射程がなく、一定距離進んで散る【マナ】の弾丸が、オークの頭に風穴を開ける。


 しかし、消費量は【マナバレル】に使った【マナ】と【魔力弾】のみ。自然回復によって、先ほどまで【大型黒騎竜】で使ったスタミナや【マナ】が少しずつだが回復する。幾ら撃とうが消費するのは【魔力弾】のみで、【インベントリウィンド】の中には10000以上【農場】の倉庫から取り出し、消耗品や装備を入れ替えてきた。


 頭を破壊されたオークは糸が切れた人形のようにその場に膝を付き、黒いモヤへと変わる。

 そして、アカザは【騎飛竜】の飛行に影響が出ないように上下を戻し【リロード】を行い【魔力弾】を補給。そしてまた、【騎飛竜】の上下を回転させ、モンスターに連射し、黒いモヤへと変えていく。




 その光景を見てキキョウは、アカザと言う冒険者に疑心を持たざるを得ない。

 【銃】と言う概念は知っているが、扱いが難しいと聞く。


 反動に筋力を使い、特に魔力を圧縮して放つ魔銃の類は西の【オタワ】地域に作られた武器であり、歴史も浅い。歴史の深い【スキル】の方が技の数が多く、洗礼されているので使いやすい。


 なので、殆どの者は銃を使わない。使ったとしても予備として、足止めとしてと相手を倒すことを目的とはしない。


 しかし、アカザは先ほどから一撃で耐久性があるオーク、オーガを死に至らしめている。


 防具はどう見ても武者鎧であり、主軸にしているスキルは【侍】であり、祖母のような秘宝(アーティファクト)装備で身を固めているというのは、余程レベルが高い冒険者の証。


 しかし、先ほどから使っているのは【竜騎士】であったり、【銃術】である。魔法剣士という存在がないわけではない。だが、余りにもアンバランスだ。更に同僚の姉の証言では他のスキル群もマスターを取っているらしい。


 つまり、アカザと言う存在は冒険者が日々訓練し、長き年月の果てに手に入れる称号を幾つも持っているということ。最初は鼻で笑い飛ばしたが、ここまでの道程から少なくとも【竜騎士】、【銃術】、【錬金術】のマスター称号は取っているのだろう。


 そして、そのような存在は冒険者の多くを占めていた【渡り人】たち以外には在り得ない。


 いつの間にか居て、いつの間にか居なくなる存在。

 祖母から聞くと【どこか】へ通じる道が閉ざされるのを知りながら、この世界に留まったらしい。恐らくだが前に【どこか】の冒険者たちが愚痴っていた【リアル】という所なのだろう。


 そして、顔が美形だった。

 彼らは歳を取らず、ずっと若い姿を保ち続ける。


 実際はキャラクターメイクで目や鼻、髪形の種類が限定される。しかし、リアルの顔でゲームをしたいと言うプレイヤーは何人いるだろう。美形であっても完全に真似るなんてことは不可能だ。プレイヤーはアバターの格好を選択権の中から選ぶしかない。


 その選択権を作る運営側も、余程個性的でもない限り、皺くちゃのババァや生まれたばかりの赤ちゃんで、ゲームを遊びたいとプレイヤーは居ないと思うだろう。

 そのことから、キキョウは「どこか」の冒険者は総じて美形なのだ。少なくともこの世界での価値観では。


 ともかく、キキョウにとって【渡り人】の冒険者と言う存在は「気に入らない」の一言だ。あちらから話しかけるようなことはなく、【ランク証】を出してこちらから話しかけて依頼を受付、何も言わず完了させて報酬を持っていく。


 それは当然だと思うが、まるで絡繰り仕掛けの人形のようにしか動かないのだ。

 彼らは喋れる。なのに私たちとは一言も話さない。言うとしても「はい」か「いいえ」が殆どだ。


 他の町の住人も、そのようなキキョウが分からない言葉が「どこか」の冒険者の間で、飛び交うことは理解している。「w」や「ググれ」という言葉。


 まるで何かの差別意識か見下された気分になる。

 そして、この立派な【騎竜】に乗って戦うアカザという冒険者も気に入らない。


 ギルドでの依頼受付で初心の者が、侮られるというのは日常茶飯事であり、一々暴力事を起こす者は居ない。侮る奴も大概だが、初心者は悔しさをバネに乗り越えるしかないのだ。


 無論、高位の冒険者が拠点を変えるということもある。その場合その地域に住み着いた冒険者からやっかみがあるかもしれないが、それだって実力を示せばある程度落ち着く。

 だが、アカザと言う冒険者は侮られたから、暴力を振るった。それならまだいい。悔恨が延々と続くかもしれないが、それは彼らの問題だ。キキョウが関わるような物ではない。


 だが、アカザは相手を殺す一撃を放った。

 誰だって、相手を殺すのは忌避感がある。しかし、アカザは簡単に殺した。


 まるでその辺の石ころを苛立った子供が蹴っ飛ばすように。人を殺しても罪悪感を抱くどころか、復活するのだから問題ないと切り捨てた。死んだ者は生気を抜かれたように何もできず、そのまま一生生きる亡者となり続ける人物もいるのにだ。


 そんな心のない、どこの馬の骨とも知れない奴の実力をお婆様は認めている。

 それに最初あれ程、嫌がって断った依頼を受け直すなど、何を考えているのか。


 例えば、手柄を独り占めするとか、無茶な報酬を請求してくるとか。

 だが、ここまでの結果を見れば(いささか行動が行き過ぎているとはいえ)貢献していることには間違いない。


 一度断っておきながら、参加するという図々しさ。

 【英雄】と言う存在になっても驕らず、凛々しくある祖母が認める力。


 だから、彼を見極めようと思いナオトラから離れたキキョウ。

 だがしかし、


「逆さになる時ぐらい声かけなさいよ! この愚図!」

「知るか」


 アカザが言った瞬間【騎飛竜】を急に上下逆転させる。慌ててザラザラとした鱗の角皮にしがみ付き落ちないようにする。


(こいつ嫌い!)

 口を開く余裕がないので心の中で思いっきり罵倒するキキョウであった。

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