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廃人ゲーマー<ゲームでも異世界です。  作者: 中二ばっか
大規模戦闘《イベント》開始
18/78

2-5

「キキョウ。控えないさい」

 ナオトラは静かに厳しい声でキキョウに告げる。声がただ聞こえただけなのにアカザも鳥肌が立つ。


「でも」

 それでも食って掛かるのは譲れない何かがあるのか。

「彼は私めが招いた客人です」


 不服そうに渋面を作るが、キキョウは持っていたお盆にある湯飲みと菓子をアカザとナオトラの間に置く。

「貴女達は毛嫌いしているようですが、なぜでしょう? これだけの力がありながら振るわず、また身勝手に力を振るうことが気にくわないからですか?」

「っ、そう、です。冒険者は私たちの言うことを聞いて、金を貪っていくだけです! 特にこの世界の生まれではない【渡り人】は!」


 この世界のNPCだった彼女たちは、まだ冒険者を物言わない駒とでも思っているのだろう。それで反論しても強い駒としか思わない。


 道具に感情があった所で邪魔くさいだけだ。

「それでいいんじゃね」

「え」

「……」

「アンタらもただクエストを発注して、完了したら報酬を払えばいいだけの存在だろ。武器屋は武器を売る、修理するだけでいい。食品屋は食品だけ売ってればいいんだよ。今日のおすすめなんて言わなくていいんだよ」


 アカザは別にNPCが実は本当に生きてました、なんて言われてもどうしようもない。あれしろこれしろとは言われるが、【はい】【いいえ】を選ぶ権利はアカザにある。


 断ったら場の雰囲気を悪くする? 

 空気が読めない? 

 拒否権があるのに使えない?


 現実なら建前だって言うことは知ってはいるが、だったら最初から建前なんて作るなと思うアカザ。その分ゲームはプレイヤーがどのような行動を取っても、(それが違法でない限り)非難はされない。


 その行動に不快なプレイヤーが、言いがかりを付けられるかもしれないが、放置しておけばいい。言いがかりを付けるプレイヤーの大半は、自分勝手な者が多い。


 例えば狩場の独占。効率重視の戦略、育成の押しつけ。


 それも無視して自分の好き勝手に行動できる。とは言え一定の協調性は必要だが、基本自由行動で自己責任だ。現実のように色々なしがらみに縛られることは殆どない。


「なん、ですって」

「今までそうだったんだろ。だったらこれからもそうしたら?」

「……あなたって最低な人間ね」

「思ってないこと言うなよ。人間とすら思っていないだろ。あんたらにとって俺は金で動く駒だ。俺にとってお前らは喋るオウムだ。クエストを発注するのはあんたらの自由だ。クエストを受ける、受けないは俺の自由だ」


 だから。


「いちゃもん付けんな。ウザい」

 捨て鉢な感情でアカザは吐き捨てる。もうどうにでもなれと。


「つまり報酬さえ用意すれば協力してくれると?」

 ナオトラは以前のように報酬の内容でプレイヤーの感情を動かそうとしているのか、恐らく提示する報酬額は相当なものになるだろう。

 だが、アカザにクエストに受ける気はない。


「やれと言われてやる気が出る訳ないし、お金なんて一生傍らなくてもいい額がある。クエストを受けますかって言われれば【いいえ】を押すね」

「あんたクエスト受けたじゃない」

「遊びで受けたんだ、報酬の額なんて気にしていない」

 その言葉に目を見開き、愕然とするキキョウ。


「……遊びですって、こっちは激甚災害や悪戦苦闘しているのよ!?」

「で、俺に何か関係ある? 同情でもすればいいの?」

 結局のところこれだ。アカザと彼女たち、【エチゴ】の間には関係がない。


 アカザにとってここ【エチゴ】、都市は補給する場でしかない。消耗品の補充、銀行へのアイテムの保管、新たなクエストの契約。それ以上のことは望んでいない。むしろ機能していない分、他の都市に移動したって構わない。


「あんたはこの都市が……世界が破壊されて良いていうの!?」

「何でそんな事俺がしなきゃいけない訳? なんで俺が尻拭いしなくちゃいけない訳? 責任? 義務? そんなの俺が持っている訳ないだろ。俺はここの兵士でも、【十人侍】でもない。今回のことを勝手に俺のせいにされても困るだけなんだが」

「何でそこまで傲慢なわけ!?」


 仕方ないとも思った。いきなりこんな凄まじい力を手に入れたら、振るいたくなるし、自慢したくなる。しかし、利用されるのは嫌。


 まぁ、傲慢だよなぁ。とアカザ自身思う。

 苦しんでいる人がいる。嘆いている人がいる。確かに可哀想で同情する。

 だが、アカザにとって関係ない人物であり、どうしてもアカザにはテレビの中に映る遠い人、対岸の火事としか思えないのだ。


 アカザは人間関係が希薄だから、どうも思わない。

 部屋で一日中寝ている引きこもりだ。ニュース放送の災害地を映されても、どうしろと言うのか。

 体力がないモヤシ野郎が、被災地にボランティア活動でもした場合、逆に体力のなさで使い物にならないのが落ちだ。


「お前らも戦いたくないから、俺に押し付けているだけだろ? それだって傲慢。自分が救われるのが当然だって思ってる」

 そんな人間を助けたいと思う程、アカザは、お人よしにはなれない。それどころか不愉快になる。

「そんな奴ら、助ける理由がどこにある?」




 お茶を飲まずに書院から出ていくアカザ。

 去り際にナオトラは「出立は明日の明朝、気が変わりましたら門前にお越しを」と言ったが、あの分では行く気はないだろうと思う。

「……5人の腕利きを揃えなくてはなりませんね」


 羊羹を口元に運び、味を楽しむ。

 瞬間、甘い羊羹ではあるが、現状は甘くない。


 英雄と一般の冒険者の間にはかなりの差があることを、ナオトラは理解している。最悪、足手纏いになりかねない。決死の覚悟で挑んでも、【シュウキゴク】のモンスターの出現を止められるか。


「キキョウ。彼に「救われるのが当然」と言われましたが、救われたいのですか?」

「それは……でも、求められれば救うのが英雄じゃないですか! それに【渡り人】はこの前まで無表情で何も言わずに、モンスターを狩ってきたのにいきなりあんな無礼なことを!」


「彼は英雄ではなく冒険者でしょう。私めも救いたい、救われたい一心で彼に声を掛けましたから、傲慢です。【十人侍】の一振りが聞いて呆れるでしょう。貴女が英雄に憧れるのは構いませんが、貴女が憧れた英雄はただの婆です」

「そんなことはありません!」

 キキョウは力強く否定はしてくれるが、やりきれない。


 英雄の定義は様々だが、ナオトラは大戦でモンスターを退治しただけで英雄になった。他にも武術を修練して、ここに至っただけである。


 この世界で生まれた強い者が、英雄となる。この世界にはステータスとスキルのランクと言う解りやすい強さがあり、それの高い物が英雄となるだけの話だ。確かに技量や胆力も重要なことではあるが、圧倒的な数値の差は覆せはしない。


 湯呑みに入っていたのは緑茶であったが、いつもより苦みがあるようにナオトラは感じる。


(人一人の心を動かせないとは、……いや、私めが戦術的価値を彼に求めたから、利用しようとしたから動かないのでしょうね)


 実際、アカザに金銭的には困っていない。食料も【農場】が在るため、やる気さえあれば自給自足可能。

 もう、自分たちでどうにかするしかないと感じたナオトラ。

 口の中の苦味を羊羹の甘さで誤魔化そうと思ったが、なかなか消えるものではなかった。




「むにゃむにゃ」

 何もない畳と布団だけの部屋で、ぐーすかと幸せそうに寝ているトゥルーに、カチンときたアカザ。

 こっちは散々と言われ、胸糞悪いと言うのにだ。


「起きろ」

「むぎゃあ!?」

 トゥルーの額をデコピンして起こす。


「痛たっ、アカザさん。おはよう」

「なんかなぁ……」

 アカザが常時ステータスの効果が働いているなら、トゥルーの頭蓋骨にヒビが入っているはずなのだが、寝ている所を邪魔されたぐらいしか感じていない。

 自分で意識した力の分しか働いていないのか、無意識に力をセーブしているのか、そんなことをアカザは考えるが、後回しにしてトゥルーを連れここの城から出る。


「くぅうー!」

 よほど心地よく寝ていたのか、両手を上げ、大きく背伸びをするトゥルー。

「おばあさんと何話していたの?」

「……別に」

「……手伝わないの?」


 まるでさっきまでのことを知っているように言う。エルフ耳は壁越しでも聞けるようだ。寝ていたから無理だろうか? とアカザが思っても仕方がない。


「手伝わない」

「なんで?」

「気乗りしないから」

「……でも、アカザさんだって何かをしたいんじゃないの?」


 いつもより突っかかてくるトゥルー。煩わしく思って、イライラするアカザ。

「中途半端、煮え切らないって言いたいのか?」

「うーん。なんであの時、族長たちの時は助けて、今度は助けないの? みたいなのかなぁ?」

「気乗りしないからで十分理由になってるだろ。それにあれは最後に裏切られただろうが」


 その後も何か言いたそうな目でアカザを見続けるトゥルー。

 だが、アカザは無言で階段を下りて、ギルドホールから出ていく。門番から不審な目で見られるが、基本外敵から守るために居るので、中から堂々と出て来たものに対して警戒はしないだろう。


 橋を渡って城下町に出る。

 城下町は未だにうめき声や生気のない瞳が徘徊していたり、留まっていたりする。

 少なくともアカザはその近辺の路地の地面に寝るつもりはなく、宿屋で布団に入って寝たい。


 しかし、アカザが知っている宿屋はないので、その辺を徘徊していた住人に聞いてみる。

「宿屋ってどこ?」

「……め、恵んでくだせぇ」

 そんな事を言う浮浪者ではあるが、金を握らせれば教えてくれるそう言ったゲームの知識が在るため、【ファーニルの財布】から100キャッシュほど出して、浮浪者に手渡すアカザ。


「こ、これじゃあパン1使えませんよ旦那」

「あ゛? 抜かしたこと言うな。食品屋でパン買えるだろが」

「そ、れは、冒険者や兵士に食料が回されるから、どこも高騰してるんですよ」

「……だったら食料でいいよな?」


 【オーク肉】を【インベントリウィンド】から取り出し、浮浪者に渡すと余程腹が減っていたのか生で噛り付く。そのままだと骨まで齧って食べそうな勢いだった。


「おい」

「むしゃ、くちゃ、んっぐ。へへ、旦那、焦んねぇで下せよ。金持ってそうですからいいとこ知ってますぜ」


 まだ食いかけの【オーク肉】を握ったまま、道を教える浮浪者。余り信用できる情報でもなさそうな感じがしてしまった。


 歩くこと数分。

 あの浮浪者に言われて来てみれば遊郭の「常春」であった。


 金を持っている、いいところ。この意味を高級旅館か何かと勘違いしたアカザは、一気に体がだるくなった。

 幸い、建物自体は保たれているが戦闘が近くであったようで、流れて来た矢が壁に刺さっていたり、何かがぶつかったのか柱が折れていたりする。


 それでも入口が開いているので被害は少なかった方なのだろう。大通りはぺしゃんこになっている建物もあったのだから。


「……さてどうしよう」

「?」

 流石にトゥルーを遊郭に連れ込んで良いものか迷う。「18歳お断り」とでも看板があれば、諦めて野宿でもするが、アカザの中にはラブホのイメージもある。


「……ま、いいか」

 新しく宿屋を探すのは面倒なので、成人物指定は考えないようにしたアカザ。少なくとも布団で寝られると思って扉を開け玄関に入る。


 するといきなり武器を持った女性たちに包囲される。

「え?」


 喉元には刃先が突き付けられ、周りは日本刀、槍と武器を持った女性がアカザを取り囲んでおり、他にも竹刀、木刀、で武装している女の子もいる。


「えぇ?」

 女性たちの目は様々だが、アカザから近いほど睨むを利かせ、離れるほど怯えた目つきになっている。それと同じく武器も近いほど殺傷力が高い物に変わっており、背丈の高い女性がアカザを取り囲んでいた。


 女の子に囲まれるという珍しい事態であるが、アカザは全く嬉しくない。それに衰弱しているのか生気が薄く、痩せこけた頬をしている者もいる。


「……アンタかい」

 そう言ってアカザの喉元に日本刀を突きつけた女性、姉御が武器を下ろすと、他の女性も一斉に武器を下ろし、警戒を解く。


「えっと……」

「ああ、ここ最近治安が悪いからね。自衛だよ」

 どこか疲れたような表情をする姉御だが、まだ街を徘徊していた人々のように生気は失われていない。


「アカザさん? どうしたの?」

 トゥルーはまだ入ってこなかったらしく、ひょこり顔を扉から出す。それを見た姉御は目を見開く。

「……あんた。幼女愛好家だったのかい」

「……いろいろあったんだよ」

「否定しないんだね」

「否定したところで納得するのか?」

「まぁ、疑うけどねぇ。それでも一応聞くのが筋ってもんだよ」


 囲炉裏に案内されたアカザとトゥルーは座布団に座る。

「またここに泊まりに来るって、宿屋は全壊しているのは知っているが、冒険者なら仮設されたテントで安めるだろう?」

「……教えてもらった場所がここなんだよ」

 それ程おかしいのか笑う姉御。胡坐かいた膝を手でバシバシ叩いている。


「あはは。あんた、よっぽどここに縁があるようだね」

 笑い終えた後、煙管を持って一服する姉御。華やかな着崩した着物と合わさって、花魁風のセクシーさと豪華絢爛なイメージを併せ持っている。しかし、下品な印象と言うよりはものぐさな印象が強い。


「でも、悪いね。今は客を取る余裕もないんだよ。みんな空腹でね」

「兵士優先の食糧配給?」

 この世界にも需要と供給のバランスができたらしい。【フォークロア】にも【交易】があり、遠くの地域ほど高騰になることが多い。しかし、殆どは特産品や家具などで、店で扱われるように食品は【交易】では選べなかったはずである。


「村や畑が荒らされたようでね。その村の人たちを最初は面倒見切れていたけど、次第に多くなって、限界さ。今じゃモンスターを倒したら貰えるか、高額で買うかしかないよ」

 どうやら前までは食品屋で売られていた物は各地方の村から仕入れていた物らしい。しかし、アカザが戻る時に見た村々は壊滅状態。あの状況ではまた人が住めるようになるまでどのくらい時間が掛かるのか。


「ま、私たちは食料と交換で花を売ったりするけどね。だけどいざこざやになったり、無理やり来たりするものだから、ああやって自衛しているのさ」

「花を売るって?」

 隠語などの方面は知らないのか、トゥルーの頭に疑問符が出る。


「おや、お嬢ちゃんは興味あるのかい?」


 悪酔いしたように姉御は色々とトゥルーに吹き込み、トゥルーの頬を赤くさせる。

「わ、わ、わわわ!」

「初々しいねぇ」

「うぅ……」

 赤い顔をして涙目になるトゥルーは、意地悪な姉御を恨めしい見る。その後、アカザを見直して興味心から聞く。


「……アカザさんもしたことあるの?」

「……ないけど、それが何?」


 別に隠すことでもない。経験がないからなんだと言うのだろうか? 経験でもするとリア充にでもなれるのか? 性病や美人局であったらどうするのか。そして、できたりすると結婚、育児と色々と手間がかかる。恋人すら手間がかかると言うのに、恋人ができることが世の中の常識では勝ち組らしい。


 そんなことを思っている訳で、アカザは自家発電以外したことがない。

「やーい。童貞」

 悪ガキのようにからかう姉御は、かなり楽しそうである。全くどうでもいいと思っているはずなのに、アカザは挑発じみた笑みはイラつく。


 不機嫌になっていると、入口の方から誰かが入ってきたらしく声がする。


「よぉーっす。クゥカただいま帰りましたー」

 手を上げ、獣人クゥカが玄関に入ってきた。跳ねた金髪からピンと出ている猫耳がひょこひょこ動く。


「クゥカさん、お疲れ様」

「いやぁ、ごめん。今日はなんか私が倒したんじゃないからって配給が少なくなっちゃたよ。ってこの匂い」

 するとアカザたちに気付いたのか猛スピードでこちらに来る。前のサラシと短パンという露出度が多い服ではなく、従動で着るような胴着を着ており手足には脛当て、篭手を装備している。


 篭手の方は防具ではなく、ナックルと呼ばれる武器であり【ライオクロー】。虎模様の毛皮を手に巻き付けるような装備であり、鋭い爪が4つ付いている格闘武器である。


 そして、アカザの元まで来て抗議し始めた。

「あんた! 今日、門前であいつら一掃しただろ! おかげでこっちは少ない食料を貰えなかったんだ! どうしてくれるんだ!?」

「なんで分かるし」

「あたいの鼻を舐めとるんかい!」


 つまり、匂いで人物を判別したらしい。無論、ゲームで匂いを再現できる訳がないのだが、獣人は簡単に言えば動物の長所と短所が混じり合った種族であるので可能性としてはなくはない。


「……いや、誰の獲物とか別に関係ないんじゃ?」

 アカザは狩場を独占したということでもない。範囲攻撃で横槍を入れたかもしれないが、ちゃんと倒している。さらに言うならかなり危機的状況であり、横槍を入れても別に問題ではない気がする。


 まぁ、アカザも率先して助けに行ったというわけでもないが。


「あ゛あ゛?」

 モンスターには全員に攻撃許可があることなど知ったこっちゃねぇ、と言いたげにアカザに顔を近づけてくるクゥカ。


「あー。はい。すいませんでした」

 平坦な声で全く誠意のないアカザの謝罪は、逆にクゥカは髪を掻き毟る。


「だぁあああ! 全く反省してねぇえ! いでぇええ!?」

 未だに【ライオセネタス】を装備していたのを忘れたのか、そのまま頭を掻いたクゥカには頭にダメージを受けたらしく悶える。


「クゥカ、うるさい」

「あねごぉお! ぎゃ」

 味方かと思われていた姉御に批判され、続いて薙刀の柄の部分でクゥカの額を突く。


「ま、そんな訳で食料提供してくれると助かるんだわ」

「取りあえず1泊分の量は?」

「そうだね。従業員分として47人分出してほしいかね」


 これがクエストであったら、話しかけるだけで要求分のアイテムが【インベントリウィンド】から消えて、クエスト達成になるわけだが、現実となっては手渡しでやるしかない。

 【インベントリウィンド】を開き、【エチゴ】に戻る道中にドロップした【オーク肉】を取りあえず47個、分けて取り出す。積み重なった47個の500グラムのブロック肉を両手に抱え、そして困ったアカザ。


「……どこに置けばいい?」

「……いや、本当に出すとはね。こっちに運んでくれ」

 前が見えないほどに積まれた肉を運んでいると、まるで使用人みたいでありあまり気は進まないアカザ。しかし、寝床は欲しい。


 こんなことならギルドホールの使用を条件に、ナオトラのクエストを受けておくべきだったかと後悔する。

「アカザさんの料理はおいしんだよ!」

「へぇ。そうかい」

 一緒についてきたトゥルーの余計な言葉に、にやりと笑った姉御。


「じゃ、料理もついでにしてもらおうかね」

「断る」

「おやおや、あたいたちに生で食って腹を壊せと言っているのかい? 冷たいねぇ。これだから今時の若者は」

「ああ、俺、今時の若者だからそんなに働きたくないね。大体追加で内容追加とかどういう訳?」

「そうだね。追加で最高級の部屋に案内してあげるよ」


 アカザにとってはある程度綺麗ならば、寝ることができればそんなに気にしない。しかし、最高級の部屋というのはどのような部屋なのか少し興味がある。

 なにせサービス終了日に、【フォークロア】のゲームグラフィックの風景を見て回ったほどである。未知のエリアに興味がない訳がない。

 のでアカザは釜土で渋々、胡椒を振りながら【オーク肉】を焼くことにした。

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