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俺を呪いにやって来た幽霊女がアホの子だった  作者: もものけだま


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5/8

画面から出てこれないアホな幽霊女 その5

「おりゃーーー!」

「うりゃーーー!」


 俺は幽霊女の腕を掴んで思いっきり引っ張った。


「痛い痛い痛----い」

「我慢しろ! おりゃーーー!」

「うぐ、うぐぐぐ……」

「うわっ!」

 

 懸命に引っ張っていると幽霊女が急に軽くなり、その勢いで俺は尻もちをつく。

 

「痛てて……急にどうしたんだよ」

「お、おおおお! 出ました! 出ましたよ!」


 その声で幽霊女を見る。

 すると、そこには素晴らしい光景が待っていた。


「やった! 出れました!」


 大きな胸を画面のこちら側にだした幽霊の女が、嬉しそうにはしゃいでいる。

 両手を大きく上げて喜んでいるので、画面から全てできった大きな胸は今まで以上に良く見えるし、もの凄い揺れまくっている。

 しかも強引に引っ張りだしたので、白い着物から大部分がはみ出し見えまくっている。

 

 俺はその光景に呆気にとられるしかなかった。

 こいつ……こんなにもデカかったのかと。

 

 しばらく、その素晴らしい光景をただただ眺めていた。

 こいつは今は幽霊だが元は人だ。

 やはり誰かを一生懸命に助けると、神様がご褒美をくれるのかもしれない。

 そんな事を考えながら、俺はそのご褒美タイムを堪能していた。

 

 しかし良い事をしたとしても、永遠とご褒美が貰える訳ではない。

 

 今の幽霊女の上半身は、完全に画面からこちら側に出ている。

 その上半身をだらりと下げ、体を左右に振りながらモゾモゾと動き始めてしまったのだ。

 こいつの長い黒髪が邪魔で、せっかくの大きな胸も見えなくなってしまった。

 

 どうやら、ご褒美タイムは終わってしまったらしい。

 

「ん? あれ、あれれ?」


 しかし幽霊女はその状態から、それ以上画面から出て来る様子がない。

 体を左右に振りながら、「う~」と唸っているばかりである。

 俺のモニターもミシミシと軋むような嫌な音を立てている。


「もしかして、まだ出れないのか?」


 そう声をかけると、幽霊女は上半身を起こし俺の方を見る。

 

 その表情は絶望に満ちていた。

 

 眉を顰め、目に涙を浮かべ、口は泣くのを我慢しているかのように小さく震えている。

 しかし幽霊女が体を上げた事で、画面を隠していた長い黒髪もなくなり、俺のご褒美タイムは復活した。


「はい……そうみたいです」


 幽霊女が小さな声で、そう呟く。

 

「なんでだよ! 胸がつかえてたんじゃ無いのかよ!」

「そうだったんですけど……」

「だったら出て来れるだろ!」


 そこで幽霊女の表情がスッと変わった。

 さっきまでは絶望そのものだった顔が、みるみる赤く染まって行く。その顔を両手で顔を隠しながら、小さな声で言った。


「……私、お尻も大きいんです」

「……はい? 今、なんて?」

「だ、だから……私って胸だけじゃなく、お尻も……ちょっと大きいんです」


 その言葉が俺の中で響き渡る。


「私、お尻も大きいんです。……お尻も大きいんです」


 俺はすでに、神様からご褒美は貰ったつもりでいた。

 この幽霊女は本当に美人なのだ。

 細く柔らかそうな黒く長い髪。

 その間から見える小さな顔には、少し切れ長の大きな目。

 スッと通った鼻筋の下には、小さな口が収まっている。

 生前はかなりモテたのではないか? こんな奴が近くに居たら男共は放っておかないだろう。

 そう思ってしまうほど、この幽霊女は本当に美人なのだ。

 

 そんな美人の着物から大部分が出た胸が、俺の目の前で揺れまくっている。

 

 これがご褒美だと思っていたが、これはまだ前菜だったようだ。

 

 こうなったら、その大きな尻も拝見させて貰おうじゃないか!

 俺のやる気は100%中の100%になった。


「もう一回、引っ張ってみるか……」


 下心を隠しながら、俺は幽霊女に近づいていく。


「はい。何度もすみませんが、よろしくお願いします」


 涙を浮かべ、俺に頭を下げる幽霊女。

 

「怖かったんです。さっきまでは、いざとなったら画面の中に帰れば良いと思ってたのに……」


 ずっと泣くのを我慢していたのか、幽霊女の頬に涙がスッと流れ落ちる。

 

「今は画面の外にも中にも行けないんですよ。私はずっとこのままなのかもって思ったら、すっごく怖いんです。とっても怖いんです」


 本当に怖くて不安なのだろう。美人が顔を歪ませ泣いている。

 

 そんな顔を見せられたら、俺の中にある良心が痛むじゃないか……。

 ちょっと可哀そうになり、俺は幽霊女に真実を伝えてやる事にした。

 

「お前を手伝ってやる前に、言っておかなければいけないことがあるんだ」

「え、なんですか?」


 さらに不安そうな顔になる幽霊女。

 だがこれは、こいつの為にも言っておかなければならない。

 俺は幽霊女の顔をまっすぐ見ると、意を決して真実を伝える。

 

「お前を無理やり引っ張り出したから、着物がズレて胸がほとんど出てるぞ」


 伝えた。俺は自分の利を無にしてでも、こいつの為に真実を伝えてやった。

 

 あまりの衝撃の事実に、幽霊女も固まってしまっている。

 そしてゆっくりと自分の胸に視線を落とす。

 一度だけチラッと俺の方を見たが、いそいそと着物を直し始める幽霊女。

 

 これで見納めか……。

 

 そう思うと悲しくて涙が出そうになるが、男の俺はぐっと我慢をして、その光景を眺めていた。

 

 白い着物を直し、ふうと一息つくと、何事も無かった間のような顔に戻る。

 しかし俺を見るその目は、まるで幽霊のように冷たく、暗く沈み込んでいた。

 

「では、よろしくお願いします」


 幽霊女の発した声は、まるで幽霊のように冷たく、暗く沈み込んでいた。

 

「おい。そんなやる気がない状態で大丈夫なのか?」

「だって……」


 また泣きそうな顔に戻る幽霊女。さすがに可哀相なので、もう一つの真実も教えてやる事にした。

 

「大事な所は見えてなかったから安心しろ」


 幽霊女が目に涙を浮かべながら俺を見つめてくる。

 

「……本当ですか? 本当に見えなかったの?」

「おう。谷間は見たが、大事な部分はいっさい見てない。それはすなわち、お前は俺に胸を見られてはいないって事だ!」


 みるみると幽霊女の顔に元気が戻ってくる。

 

「良かった~。私はあなたに胸を見られてはなかったんですね」

「おう。大丈夫だ。俺にも理由はわからんが、世の中のルールはそうなっているからな」


 世の中のルールは、そういうものなのだ。ほぼ丸出しだろうが何だろうが、大事な部分が隠されていれば、写真集として世にも出回っているのだ。

 

 現状は画面に挟まったまま何も解決していないが、心配事が一つ無くなった幽霊女も元気を取り戻している。


「行くぞ?」

「はい! お願いします!」


 俺達は再度力を合わせ、こいつを画面から出す事に奮闘する。

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