第034話 〈武装せよ・Ⅰ〉
2075/4/17 p.m.4:52 校庭
校長の演説が終わり、アンダーガーデンのメンバーたちは各々解散していった。悠真も自身の部屋へ帰ろうとしたところ、突然後ろから声をかけられた。
「悠真くん、少し残ってもらえるかな?」
「うお!?こ、校長先生!」
いつの間にか式台から悠真の後ろへ移動していた。音も、空気の揺らぎさえも無く。
「ここじゃ少し話しづらいし、ちょっと来てもらうよ。」
「え?」
八雲の手が肩に触れる。
悠真が瞬きをした。
次の瞬間には校長室のソファーへ腰掛けていた。
移動した記憶そのものが存在しない。
「やっぱりここが落ち着くね。」
八雲は対面側に座っている。
(これが、校長、八雲天貴先生の能力…やはり恐ろしい、一瞬にして移動した。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない、何かの片鱗を感じた…)
「あの、それで話というのは?」
「これについてだよ。」
校長の手の中にいつの間にか悠真の部屋にあるパソコンがあった。
聖遺物「如意合金」の破片と融合し、悟の端末と化したまさにそのパソコンである。
パソコンの電源が付き、悟の声が発される。
「おいおい、運ぶときは言ってくれよ、驚いちまうだろうが。」
「悪いね、まぁこっちのほうが速いし、いいだろう?」
八雲はパソコンを机に置く。
「今までは明後くんを除いた他の教師に如意合金を見られないよう、パソコンと融合させてたみたいだけど、この度私の権限で聖遺物の所有権を表記上は私の物とした。」
「そうなりますと?」
「今後、君はどこでも自由に堂々と如意合金、そして悟くんの力を使用できるというわけだ。」
悠真が目を見開く。如意合金の強力さはマドレプリクトの襲撃時に実感していた。悠真の攻撃を3回弾いた巨大ゴキブリを、一撃で叩き潰していた。それが使えれば、今後悠真の戦闘力は大幅に上昇するだろう。
「やっとか、待ちくたびれたぜ。」
悟自身もうずうずしていたようだ。如意合金の破片がパソコンから離れ、悠真のほうに飛ぶ。
「わっと!」
悠真がそれをキャッチすると、破片は形を変え、悠真の左手人差し指へ移動し、指輪のような形状へ変化した。
「そんじゃ、よろしくな。」
「こちらこそ、よろしくお願いしますよ、悟さん。」
校長が口を開く。
「ああそうだ、君以外の06小隊メンバーたちにも、それぞれに会った聖遺物を渡せるようになった。全員が聖遺物を装備した状態ならば、小隊の平均ランクはB最上位ほどまで上昇するでしょう。」
悠真は再び驚く。
「ほ、本当ですか!?」
「もちろんだよ。特に、史郎くんは今のままだと大した攻撃能力を持たないからね、いいものを用意したよ。」
八雲はそう言い終わったのち、今度はいつの間にか悠真の隣に座っており、再び悠真の方に手を置く。
今度は、金庫のような場所にいた。横には他の06小隊メンバーがいる。
「あ、悠真!」
「いつの間に、さっきまでいませんでしたよね?」
始と史郎の反応はもっともだった。悠真の隣にはすでに八雲はおらず、はたから見れば悠真だけが突如現れたように見えただろう。
「まぁみんな呼ばれてるのに、悠真だけが呼ばれないっていうのもおかしいしね。」
悠真は全員を見渡す。
4人とも数分前まで校庭にいたはずだが、たぶん校長がここまで運んだのだろう。
(おそらく校長先生の能力は時間系、俺と話しているのと同時にみんなをここに運んだんだか、すごいな…)
「れじゃあ諸君、君たちに武器を渡していくよ。」
全員が声がした方向を向く。当然のように八雲がいた。
「校長先生、心臓に悪いですよ…」
白斗の言葉に八雲が答える。
「まぁまぁ、こっちのほうがわかりやすく強キャラみたいでしょう?」
悪戯っぽく笑った。さっきまで堂々と演説していた者と同一人物だとは思えない。
「まぁ否定はできませんね…」
SSSランクの言葉だ、納得するしかない。
「さぁ、君たち用の聖遺物の登場だ。」
八雲が壁に付いているパネルを操作する。
ゴウィーーーーン
倉庫の棚が動き始め、四つの箱がそこからロボットアームで運ばれ、悠真を除いた06小隊の目の前に置かれる。
箱が開き、それぞれに対応した聖遺物が姿を表す。
白斗の箱に入っているものは日本刀のようなもの、始の箱には腕輪、舞のものは流星鎚(10メートル程度の縄や鎖の先端に金属製のおもりを付けた武器)。そして、校長が言及していた史郎の聖遺物は…
「スナイパーライフル?ですか?これは。」
史郎は首を傾げた。中学のころからいろいろと経験していたとはいえ、銃を扱ったことはさすがに無い。
「それはBランク聖遺物「飛来狙撃銃」、弾の軌道を自由に曲げられる狙撃銃ってところだね。」
八雲がそれに答える。
「説明書も箱に入ってるから、具体的な効果はそれを確認してくれ。それじゃぁ私は業務に戻るとするよ。」
そう言い残し、八雲は一瞬にして姿を消した。
「やっぱとんでもないな校長先生…」
「まぁ、それより説明書見てみようぜ、俺わくわくすっぞ。」
始の言葉を聞き皆自分の箱をあさり始めた。聖遺物を取り出すと、その裏に説明書のようなものがあった。
「ほうほうこれが…」




