第027章 〈価値・Ⅱ〉
2075/4/12 p.m.6:11 仮想ルーム08
悠真と白斗の錬金術修行から三日後
「「(長ったらしい詠唱)」」
二人の前に置かれた石炭が完璧な球のダイヤモンドに変化する。
「よし!やっと成功した!」
「さすがに疲れた。精神エネルギーもカラカラだ。」
肩で息をする二人に、ゼロは静かに拍手を送る。
「おめでとうございます。錬金術の基礎はもう完璧です。悠真様も出力を完璧にコントロールできていますね。」
一拍置いて、ゼロは続けた。
「これより先は素粒子の領域に入ります。 原子の配列だけでなく、その“意味”に触れる領域ですので詠唱も、負荷も数倍になります。」
二人が息をのむ。
「今日はここで切り上げましょう。」
その言葉に、二人は安堵の息を漏らした。
__机の上で、ダイヤモンドがわずかに光を反射する。
それは“価値の象徴”のはずだった。
だが悠真には、なぜかそれが、ただの石にしか見えなかった。
-2075/4/12 p.m.6:20 男子寮カフェテリア-
「お疲れ、悠真、白斗。修行のほうはうまくいってるか?」
二人を始が迎える。
「ああ、基本部分は終わった。次は能力を再現するモード?ってやつに入るらしい。」
悠真が答える。
「へぇ、いよいよ実戦寄りか。……で、もうダイヤモンドとか作れんの?」
始が軽い調子で言う。
「一応な。」
悠真はポケットから小さなダイヤモンドを取り出し、テーブルに転がした。
カラン、と軽い音が鳴る。
「すげぇな……これ、いくらくらいすんだ?」
「さあな。だが__」
悠真はどこか噛み合わないような笑みを浮かべる。
「こんなもん、いくらでも作れるなら、価値なんて無いのと同じだろ。」
「……お前、それ本気で言ってんのか?」
一瞬だけ、会話が止まる。
始の声色がわずかに変わる。
「ま、飯食おうぜ。」
白斗が遮る。
「そういえば始、お前のほうは?志島先生との訓練は流石にきついだろ?」
「ああ、日ごろから運動してる俺でさえ毎日筋肉痛だよ。見ての通り足がガクガクだ。」
「志島先生筋骨隆々だからなぁ、体脂肪率0%なんじゃないか?」
「いやそれはもう人間じゃないって。」
-2075/4/12 p.m.6:32 校長室-
「彼らの育成は上手くいってるかい?」
「はい、私のほうは想像以上ですねぇ。始はタフだし、舞は柔軟で発想力がある。沙耶によれば史郎も順調のようだ。」
「私のほうも問題ありません。彼らはたった三日で錬金術の基礎を習得しました。」
「うん、非常に上出来だ。」
八雲天貴は満足げに頷く。
「ではこれからもよろしく頼むよ。」
ゼロと明後は報告を終え、校長室を後にしようとする。
「ああそうだ、ゼロさん。少し残ってくれないかい?」
「何でしょうか?」
扉が閉まる音が、やけに重く響く。
「マドレプリクトの殲滅についてだ。彼らの基地の場所を割り出せたよ。」
「……それは、確定情報ですか?」
ゼロの声音が、わずかに変わる。
「ああ、ほぼ間違いない。」
八雲は、軽い調子で続けた。
「彼らの“実戦訓練”に、ちょうどいいと思うんだけどね。」
======================================
〈設定紹介〉「それぞれの育成計画」
・悠真と白斗
多種多様な効果を持つ錬金術の習得により、対応力を拡張。
悠真は能力の性質的にとりあえず錬金術を習うのが正解であり、白斗はあまり前に出ず召喚獣の操作がメインなので後ろでちょうど錬金術による攻撃を行える。
・始
前線維持
能力の一回死を免れられる効果によりとにかく前に出て攻撃を耐える役割を担う。よって身体能力、特に耐久力を上げるための訓練を行っている。
・舞
能力の拡張。
能力の解釈を広げ、様々な応用を行えるようにする。減圧で内臓にダメージを与える残酷な技を開発しているそうな。
・史郎
脳の演算能力を上昇させるために毎日沙耶の協力のもと機械に脳を繋いでいる。
__安全性は担保されているのでご心配なく。
〈殲滅作戦〉「マドレプリクトへの報復」
やられたままでいいわけがない。
だが、それ以上に__
このまま放置すれば、被害は拡大する。
ゆえに、排除する。
その過程で何が失われようとも。
これは報復であり、同時に訓練でもある。
彼らの“価値”を測るため。




