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第026章 〈価値・Ⅰ〉

2075/4/9 a.m.8:25 仮想ルーム08


襲撃によって校舎の一部が破壊され、多数の負傷者も出た。

その影響で学校は休校となっている。

それでも、一部の者たちはまだ校内に残っていた。


「では、これより本格的な錬金術の授業を始めます。」


教室を模倣した仮想ルームで、悠真と白斗はゼロから錬金術を教わっていた。


「まず、錬金術とは、対価エネルギーを差し出すことで様々な現象を引き起こす技術です。等価交換、と言い換えてもいいでしょう。一部の地域では魔術とも呼ばれていますね。」


ゼロはそう言うと、教壇の上に赤い石のようなものを置く。

それを見た瞬間、白斗は口を半開きにし、何度も瞬きを繰り返した。


「そして、錬金術を行使するには、この「賢者の石」を使用する必要があります。」

「あ、質問です。ゼロさん、賢者の石ってすごい貴重なイメージがあるんですけど…それが錬金術に必須って本当ですか?」

「貴重なのは第四段階の赤、「ルベド」に入った賢者の石のみですね。」

「じゃぁそこにあるのってまさか…」

「はい、第四段階の賢者の石です。」


悠真の表情が白斗と一致する。そして、二人は互いに目を合わせる。


「まぁ、あなたたちに使ってもらうのは第二段階の白、「アルベド」、比較的入手しやすいものです。」


二人は何とか衝撃から元に戻る。


「では、石とプリントと材料を渡すので私の指示に従ってください。」


ゼロが二人に賢者の石と何やら英語が書かれているプリント、そして石炭のデカい塊を渡す。


「おぉ、大胆な素材だ。」

「えっと、Before me lies charcoal…ちょっと長くないですか?」

「ご安心を、それは詠唱短縮を行わなかった場合の長さです。では見本を見せますね。」


ゼロが自分の分の石炭に向かって詠唱を行う


|Before me lies charcoal.(我が前にあるは炭)

Let its form bend to my will.(形は我が意志に従い)

Take shape into six faces.(六面へとなれ)

The four pillars of X are the standard of one hundred.(水平の四柱は100の基準値)

The four pillars of Y are the standard of one hundred.(上下の四柱は100の基準値)

The four pillars of Z are the standard of one hundred.(前後の四柱は100の基準値)

From the origin point, appear.(起点より現れよ)

O charcoal reborn in a new form.(新たなる姿の炭よ)


その声が紡がれると同時に石炭は光に包まれながら消える


「……おお。」


悠真と白斗は思わず声を漏らした。

さっきまでそこにあった石炭は完全に消え、代わりに現れたのは、寸分違わぬ立方体。

角度も面も、まるで機械で削り出したように正確だった。


「これが錬金術です。」


ゼロが言う。


「これが、炭の構造を再構成し、立方体の形状に変換しただけの単純な錬成です。」

「いやいやいや……」


悠真は立方体を持ち上げてまじまじと見つめる。


「炭をこんな綺麗な形に作り替えるとか、普通に考えてヤバくないですか?」

「ええ。ですから対価が必要なのです。」


ゼロは指先で賢者の石を軽く叩く。

コン、と乾いた音が仮想空間に響く。


「賢者の石は、精神エネルギーを利用し、価値エネルギーの変換、錬金術を行う触媒です。」

「つまり魂に似た演算機みたいなモノだよな?」

「概ね正解です、白斗様。」


ゼロは小さく頷いた。


「そして、ここからが重要なのですが、錬金術は『物理法則を拡張する技術』です。」


悠真が顔を上げる。


「拡張?」

「はい。」


ゼロは黒板に文字を表示させる。

そこに三つの単語があった。


【構造】

【座標】

【対価】


「例えば今の錬成。私は炭の分子構造を再配置し、座標指定で形状を決定しました。」


ゼロが立方体を指差す。


「つまり、荒唐無稽なこれは魔法ではなく高度な計算です。」


悠真が顔をしかめる。


「え、待って。じゃあさっきの詠唱って……」

「計算式です。」

「いやさすがに長いわ!!これ攻撃系の術とかだったらどうなるんですか!?」


悠真がツッコむ。

ゼロは少しだけ首を傾げた。


「詠唱短縮を行えばもっと短くできますが、基礎を理解するためには原文のほうが良いですよ?」

「テスト前の公式丸暗記みたいな感じか…覚悟はしてたけどさすがに長いな。」


白斗はプリントを見てため息をつく。

そこにはびっしり英語が書かれている。

悠真は無言でそれを見つめていた。


「では、次はあなたたちの番です。」


ゼロは二人の前にある石炭を指す。


「目標は同じく10cmの立方体。」

「失敗したら?」


白斗が聞く。


「最悪爆発します。」

「え?」

「冗談です。」


一瞬の沈黙。


ゼロは淡々と続ける。

「ただし、構造指定を間違えると崩壊する可能性があります。弾けた一部で怪我することも。」

「それ爆発と大差なくないですか?」

「では始めてください。」


完全にスルーされた。

白斗は頭を抱える。


「……おい悠真」

「ん?」

「お前こういうの得意?」


悠真は少し考えてから答える。


「多分、感覚でやるタイプだ。」

「まずい気がするなぁ。」


悠真は石炭を手に取る。

黒い塊。

ただの炭。

だが__

(構造…座標…対価)

ゼロの言葉が頭に残る。

悠真は賢者の石を握った。

その瞬間、ほんの僅かに。

石が熱を持った気がした。

「……?」

悠真の眉が動く。

(なんだ、これ)

まるで、魂炎の使用と似た感覚。

ゼロが静かに言う。


「悠真様。」

「はい。」

「錬金術は精神力を使用しています。」

「はい。」

「そしてあなたの能力は__」


一瞬、ゼロの視線が揺れた。


「__非常に、特殊です。」


悠真は小さく息を吐く。

そして詠唱を始めた。


「Before me lies charcoal…」

白斗も慌それに続く。

「Let its form bend to my will…!」

仮想教室に、二人の声が重なる。

石炭が微かに光り始める。

次の瞬間、見事な立方体が生じるが、悠真のほうの立方体は即座にはじけた。


「やっぱり爆発したじゃないですか!」


白斗は自分のほうに飛んできた破片を躱せたが、悠真は顔面に結構大きい破片が当たった。

幸い怪我はないようである。


「これは…」


ゼロが悠真に駆け寄り、石炭の一部を拾い上げる。


「精神力を込めすぎていますね。そのせいで内部のエネルギーが大きくなりすぎたのかと。」


ゼロは一瞬、眼を細める。

(やはり逸脱変換者、特に騎士は錬金術と相性が良すぎていますね。それに加え、悠真様はもしかしたら…)


「だったら、込める精神エネルギーを減らせばいいんですね?」

「あと、できるだけ穏やかな気持ちで行ってみて下さい。」

「よしわかった。」


「…なぁ悠真、お前の出力どうなってんだ?」

「どうしたんだ?白斗。」

「あぁ、俺結構多めに精神エネルギーを流したんだけどよ、それでもどうってことないぞ。」

「おっとぉ…」


白斗は少し悠真から距離を取った。


======================================


〈概念紹介〉「魂と賢者の石」

魂と賢者の石は非常に似通った性質を持ち、生物の持つ精神エネルギーから様々な事象を引き起こすことができる。しかし、魂には『ソウルコード』と呼ばれるプログラミングのコードのようなものがあり、それに従った能力しか使用できないのに対して、賢者の石は『ソウルコード』を持たず、詠唱によってコードを書いているのである。

ここで気を付けて欲しいのは、魂といってもその人物の人格と関係は無く、あくまで人格は脳に宿ることである。よって、転生したいなら魂に人格の情報を何とかして入れないといけないのである。

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