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43. 新学期のお泊り会は盛り上がって

稽古が終わり、俺と漣は体育館の外にいた。


「ふう、今日も全く歯が立たなかったなあ。」


「そんなことないと思うけどな。毎回、上達の早さに驚くんだが。」


「ふふっ、本当にそうだったらいいんだけどね。僕自身はもどかしさしかないよ。」


「まあ、それは仕方ないんじゃないかなあ。子供の時からやっていれば、皆同じスタートラインからの出発だけど、漣は周りに比べられる人がいないからなあ。」


「やっぱり、中学から始める人って、余りいないよね。」


「学校の部活としてやってるとこくらいだろうなあ。」


漣と話していると、透子と詩音が来た。


「お待たせ〜何話してたの?」


「漣と同じくらいの経験の相手がいれば、上達の程度が本人にも分かるんだけどなって話してた。」


「まだ駆け出しなのに、ちょっと伸びた程度で一喜一憂する必要なんてないわよ。」


「詩音ちゃん、厳しい···」


「手応えを全く感じてないわけじゃないんでしょ?だったら、そこを取っ掛かりに次の段階を目指す。私達だってそれを繰り返した結果だし、それしかないんだから。数年の早い遅いなんて、一生で考えれば誤差の範囲よ。」


「うん··そうだね。やっぱり、詩音はさすがだな。」


「こんな会話、師範達に聞かれたら鼻で笑われそうだな。」


「ホントそれ。一度でも師範に稽古つけてもらったら、そんなこと考えること自体が恥ずかしくなる。それと、もう一つ言っておく。」


「ま、まだ、何かあるのかな?」


「漣、アナタはこれ以上ないくらいの早さで成長してる。考えるのは悪いことじゃないけど、悩むのは時間のムダ。今はどんどん動いていればいい。」


「詩音···ありがとう!うん、もっと頑張るよ!」


「おかしいな。俺も最初に同じこと言ったよな?」


「私と涼太では言葉の重みが違う。」


「つか、詩音が人を褒めるの珍しいな。重みってそういうことか?」


「やっぱり···」


「ん?どうした、透子。何か言ったか?」


「えっ、ああ···ううん、なんでもない。」


「じゃあ、僕はそろそろ行くね。明日も皆に会えると思うと、今日は帰るのが寂しくないよ。」


「おう、また明日な。」


「ばいばーい、また明日。」


「またね。」




俺は透子と詩音を家まで送っていった。


「明日は本当に現地集合でいいのか?」


「うん、私達きっと準備に時間かかるし。待たせちゃうかも知れないから。」


「と言っても、今回は漣もいるし、あまり待ち時間に遅れないようにな。じゃあ、おやすみ。詩音もお疲れさま。」


「うん、おやすみなさい。」


「お疲れ。」


自宅に戻り、先にお風呂に入った。稽古中は暑くて汗をかくが、外を歩いてる間にすっかり凍えてしまった。


明日は一日中外出になるし、厚着していかないとな。つか、他の皆はどんな格好で来るんだ?





「詩音ちゃんは明日、どんな服装で行くの?」


「ん、まだ決めてない。」


「じゃあ、上がったら、どんな服があるか見せてよ。それによって、メイクの方向性を決めよ?」


「それはいいけど、なんで一緒にお風呂入るの。必要性ある?」


「二人一緒に入った方が長風呂にならなくて迷惑かけないかなーって。ほら、背中流してあげるから、髪の毛上げてて。」


「あ、ありがとう···」


「詩音ちゃんの髪キレイだよねー!肌は白いしスベスベだし、最高の素材だよね。」


「三木谷は···スタイルが凄くいい。出るとこ出てるし。」


「でも、筋肉がなくて全身プヨプヨなんだよね。詩音ちゃんはお腹と腰周りが凄くスッキリしてるから、ちょっと胸が大きくなるだけでメリハリが出ると思う。」


「そうかなあ···」


「うん、同性からも羨ましがられるよ、きっと。あと、胸なんて、ブラにパッド入れたら何とでもなるし!」


「その手が!!」




「今の季節、黒系の服着てる人が多いから、逆に上着は白のコレにしよ。でも、ずっと着てる訳じゃないから、中もシンプルよりカワイイのにして···詩音ちゃんスカートとパンツだと、どっちが好き?」


「寒いからパンツがいいけど、厚手のタイツも持ってる。」


「じゃあ、今回は男子もいるし、ちょっと攻めちゃおう。と言っても、露出はなしの方向で···こんな感じでどう?」


「カワイイ···けど、こんなスカート持ってたかな?」


「えへへ、コレ私が持ってきたやつ。サイズは大丈夫だから、使ってみて。」


「コレ、私が穿いたら三木谷はどうするの?」


「他にもいくつか持ってきてるから大丈夫。」


「だから、何で一泊だけなのにそんなに持ってきてるの···」





「じゃあ、電気消すから。」


「うん、お母さんのご飯美味しかったねえ。」


「三木谷がいるから、張り切ったみたい。」


「そうなんだ。そう言えば、この家に女子が来たのは初めてだって先生が行ってたけど。」


「女子が、と言うより、人を呼んだことがない。」


「え、でも、涼太は···」


「涼太はダメと言っても押しかけてくるから···」


「ふうん、まあいいや。私はこれからも時々来ていい?」


「別にいいけど···」


「やった。実はね、今日3人が剣道やってるの見てたら、私一人だけ見てるだけなのがやっぱり寂しくて。でも、剣道を私ができるか分らないし、せめて涼太のお手伝いだけでもできないかなって思ったんだけど···」


「まさか、毎週ウチに泊まるつもり!?」


「いやあ、さすがにそこまで甘えられないよ。何かいい方法ないかなって考えてて···涼太のとこに泊めてもらうのが本当は一番いいんだけど。」


「一番ダメでしょ。」


「だよね!」


「それに、手伝うためだけに道場に来るのは止めた方がいい。以前にそれでトラブルがあったから···」


「トラブルって?あ、もしかして、師範のお孫さんのこと?」


「琴音さんのこと、知ってるの?」


「涼太が5年生の頃に手伝いに来てたって。それしか知らないけど、何かあったの?」


「そう···詳しくは聞いてないのね。じゃあ、私から喋るのはは止めとく。前に涼太が気が向いたら話すって言ってたでしょ。あの件だから。」


「え、ちょっと待って。それって、琴音さんという人がお手伝いに来ていた時に何かトラブルに巻き込まれたってことだよね。それが今も何か関係があるの?」


「喋らないって言ってるのに···そういうとこ、涼太に似てるよね。」


「えへへ」


「褒めてないから。今とは関係はないけど、またトラブルになったら大変だから止めた方がいいと思っただけ。それに、本当に酷い事件だったから、皆忘れたいのよ。」


「···でも、涼太はまだそれを引きずっているのよね?」


「道場に関係してる人はみんな多かれ少なかれ引きずっている。私も例外じゃない。」


「ねえ、私、やっぱりその話聞いておきたい。涼太と詩音ちゃんが今も苦しんでるなら、ちゃんと知っておきたい!」


「はあ···私が言ったってことはバラさないでよね。」



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