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黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

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第444話 強欲神




 ◆◇◆◇◆◇



 漸く繋げた細い道を通じて地上世界から呼び寄せたヴィクトリアに邪神の相手を任せると、引き続き地上世界との接続に尽力する。

 先程までとは違い、邪神との戦闘に割いていた意識も向けることが出来るので、集中して作業を行える。

 ヴィクトリアを召喚するのに使用したのは、俺が持つ中位神器〈運命織り成す神手(モイライ)〉とヴィクトリアに渡した下位神器〈運命ノ環(ノルン)〉の繋がりだが、この〈運命ノ環〉はヴィクトリアの持つ物以外にも多く存在している。

 リーゼロッテやレティーツィアといった婚約者達全員に渡しているため、その数だけ地上世界と此処を繋ぐ道を構築することが可能だ。


 神器同士の繋がりを軸にして【発掘自在】の力で一気に道を開いたが、まだ道が小さすぎるようで、邪神によって中断された世界の理(システム)の声が聞こえてこない。

 その構築した細い経路が壊れないように、慎重に表面を覆う形で【強奪権限(グリーディア)】を行使し、道を拡大していく。

 戦闘に使っていた分の魔力をエクスカリバーの【願い望む星の杯(アヴァロン)】に投じて、その分の力で更に道を広げる。



「……いや、それよりも数を増やした方が良さそうだ」



 神器同士の経路の拡大にエクスカリバーを使用するのを中断し、地上世界にいる使い魔達と人型眷属(ファミリア)との繋がりを強化するのに使用した。

 使い魔達はまだしも、人型眷属である彼らはユニークスキル製だ。

 【深闇と豊饒の外界神(シュブニグラス)】の【眷属創生(ファミリア)】で生成された眷属であるため、そのユニークスキルを邪神に奪われたため眷属達も引き摺られるように奪われている可能性は十分にあった。

 だが、此処に来てからも俺との繋がりは変わらず維持されていた。

 おそらく眷属の素材に俺の血肉という、血の繋がりとも評せる物質を使用したからだと思うが、この強固な繋がりを活かさないのは明らかに勿体無い。

 南方大陸と西方(リテラ)大陸で活動中の人型眷属達との繋がりを【願い望む星の杯】で強化していった。


 【化身顕現(アヴァター)】で生み出した分身体が地上世界にいれば早かったのだろうが、階層主(フロアボス)戦とレベル百到達時に起こるであろうナニカに備えて、全ての分身体は解除していた。

 常に生み出していた、西方大陸の〈秩序の魔王〉とロンダルヴィア帝国のアナスタシアの元にいるランスロットもフロアボス戦までに解除しているので、今の地上世界に分身体は一体もいない。

 分身体の数だけ総魔力が割かれるから分身体を残さなかったのだが、もし残していたら分身体はどうなっていたか気になるところだ。


 分身体がいないことで万全の状態で使える魔力を消費し続けて、地上世界と繋がる各経路を広げていく。

 あとは魔力を注ぎ続けるだけなので、今のうちに今回の事態で分かったことについて少し考えてみよう。


 まずは目の前のエクスカリバーについて考える。

 正体が邪神だったプローヴァがわざわざ俺の力になる存在をこの世界に送り込むとは思えない。

 つまり、エクスカリバーは自力で──正確には管理していたヴィクトリアの願いを拾い上げる形で願いを叶えて異世界転移してきたとみて間違いないだろう。

 本来の使い手である俺以外の魔力で発動したことによる弊害か、エクス自身も自らの能力で異世界転移したことを覚えていなかった。

 だが、エクスとヴィクトリアの二人が俺の元に来てくれたおかげで、こうして邪神に対抗できるのだから、エクスの異世界転移の詳細が分からないのは些細なことだ。


 次に俺に称号〈異界人〉や称号〈転生者〉が無い理由についてだが、これは元はこちらの世界の〈創造神〉だった邪神が、この世界に転生する俺のために作った肉体だと考えれば納得できる。

 この世界用に調整したことで現地人扱いになっているため、〈異界人〉と〈転生者〉の称号が無いのだろう。



[──中断されていた通知と更新作業が再開されます]



 どれほどの時間が経っただろうか。

 集中していた所為で長時間が経った気もしたが、【叡智蒐神星髄(ヴェーダ)】による思考加速の倍率から逆算してみると、実際には然程時間は経っていなかった。

 まぁ、それだけ大量の魔力と集中力を消費したと考えれば当然のことか。



[直前の通知より再開されます]


[〈世界〉より王権称号が与えられます]

[王権称号〈覇権王〉を取得しました]

[王権称号〈覇権王〉取得により、称号権能〈覇権ノ掌(コード・ルーラー)〉が使用可能になりました]

[〈世界〉から超越者〈覇権王〉へ超越神器〈未覚醒神器核〉が与えられます]



 ヴィクトリアが通ってきた召喚門から虹色の輝きを放つ物体が出現した。

 どうやら、この手のひらサイズの材質不明の物体が超越神器〈未覚醒神器核〉のようだ。



「俺の王権称号は〈覇権王〉か。なるほどな」



 王権称号について考えることはあるが、今の優先順位は〈未覚醒神器核〉を覚醒させる方が上だ。

 〈未覚醒神器核〉に触れた瞬間に使い方は理解できた。

 すぐに〈未覚醒神器核〉へ魔力供給を行いながら、指に嵌まった〈聖金霊装核キトリニタス・トライア〉を押し付けた。

 〈未覚醒神器核〉は神器を除いた魔導具(マジックアイテム)を素体にすることで覚醒するらしい。

 俺の装備の大半は神器なので、特に迷うことなくキトリニタスを選んだ。

 〈未覚醒神器核〉とキトリニタスが同化しつつあるのを確認すると、残る魔力の全てを惜しみなく注ぎ込み、今の俺に必要な力をイメージする。


 神であろうとなかろうと、何人たりとも俺の(モノ)を奪うこと叶わず、俺の(スキル)を封ずること叶わず。

 俺の行く手を阻む凡ゆる障害を取り除き、凡ゆる困難を乗り越えられる万能の力。

 それこそが今の俺に必要な力だ。



[超越神器〈未覚醒神器核〉が超越者の意思と魔力、糧となる器を取り込み覚醒します]

[超越神器〈未覚醒神器核〉が超越神器〈黄金星鍵(グリード)〉へ覚醒しました]

[超越神器〈黄金星鍵(グリード)〉が超越者〈覇権王〉に帰属します]



 手の中にあった〈未覚醒神器核〉の姿が消え、代わりにキトリニタスが嵌まっていた指には、虹色の輝きを放つ幾何学模様が刻まれた黄金色の指環が嵌められていた。

 帰属化と同時に超越神器〈黄金星鍵〉の使い方は理解した。

 覚醒するのにキトリニタスを糧にした上に残る魔力の殆どを必要としただけあって、神器としての格は最低でも神域(ディヴァイン)級最上位のエクスカリバーに並ぶほどだ。

 その最高位神器の力を俺自身の中にある【強欲神皇(マモン)】へと向けた。

 〈黄金星鍵〉の『凡ゆる制限()を解く力』が【強欲神皇】を封印状態から解き放つ。



[超越神器〈黄金星鍵(グリード)〉によってユニークスキル【強欲神皇(マモン)】に掛けられた封印が解除されました]

[神域権能(ディヴァイン)級ユニークスキル【強欲神皇(マモン)】が神星権域(エーテル)級ユニークスキル【黄金蒐奪の強欲神皇(マモン=グリード)】の神格(カタチ)を取り戻します]

[ユニークスキル【黄金蒐奪の強欲神皇】の全ての力が解放されました]



 封印が解かれたことにより、凡ゆる感覚が鮮明になった。

 今の感覚と比べれば、さっきまでの俺の心と身体は水の中で動いていたようなものだ。

 その心身の赴くままに、脳裏に浮かんだ〈強欲(カミ)〉の神威を解放する神詞(ロゴス)を紡ぐ。



「──我が身が現すは黄金」

「──我が心が望むは救済」

「──我が掌が掴むは願望」

「──神殺たる我が罪業、救世たる我が偉業」

「──両儀は太極へ、願望は欲望へ、人は神へと昇り至る」


「万象掌握── 【神罪顕現(アドヴェント)世界簒奪する欲深き(アヴァリティア)強欲神(・デイ)】」



 ◆◇◆◇◆◇



[第七神星特異点セブンス・シンギュラリティ欲望/願望(ディザイア)〉が顕現しました]

[新たな特異点(シンギュラリティ)の顕現により第一神星特異点ファースト・シンギュラリティ世界(ワールド)〉が次の神星位階(ステージ)に移ります]

[称号〈現人神〉を取得しました]

[ジョブスキル【現人神(リビング・ゴッド)】を取得しました]

[称号〈強欲神〉を取得しました]

[ジョブスキル【強欲神ゴッド・オブ・グリード】を取得しました]

[称号〈血神〉を取得しました]

[ジョブスキル【血神ゴッド・オブ・ブラッド】は既に取得済みです]


[特殊条件〈救世願望〉〈現人神顕現〉などが達成されました]

[称号〈救世主〉を取得しました]

[ジョブスキル【救世主(セイヴァー)】を取得しました]


 

 脳裏に表示された世界告知(アナウンス)の情報に()()()()を一度だけ細めてから前に出る。

 エクスカリバーを握っていた黒一色の手には、先程まではなかった黄金の縁取りが追加されていた。

 その形状は人間の身体の形とは少し異なっており、まるで金属鎧を纏っているかのように角張っていた。

 金属鎧化は手だけでなく全身にまで及び、身に付けていた装備で残っているのは手に握るエクスカリバーのみだ。

 だからと言って消えたわけではなく、この宇宙の深淵の如き漆黒と、不滅の栄光の如き黄金で彩られた金属鎧の身に同化しているだけであることを本能的に理解できた。


 金属鎧と化した身の背後には金属の質感の黄金の円環が輝いており、俺の動きに追随しながら浮かんでいた。

 背面からは十二個の漆黒の結晶柱が生えており、正面から見ると翼のように見えなくもない配置をしている。

 顔にあった口と鼻は無くなり、逆に眼は七つに増え、元の両眼があった位置から頬にかけて上段、中段、下段と三対の眼が並び、額の中央に縦向きの単眼があった。

 その殆どの瞳は黄金色に輝き、眼球は紫結晶(アメジスト)のような色合いと質感になっていた。

 唯一、下段の右眼の瞳だけが血のような紅色をしていて、その瞳からだけは別種の力を感じる。


 それらの眼で戦場を見下ろすと、全ての存在が此方を見上げたまま戦いを止めていた。

 神も魔も人も等しく動きを止めた世界を俯瞰した後、超越者ではあるが唯一の人間であるヴィクトリアの元へと瞬時に転移する。



「大丈夫か、ヴィクトリア」


「……リオン、よね?」


「ああ。見ての通り……だと分かるわけないだろうが、俺は間違いなくクロガネ・リオンであり、リオン・ギーア・ノワール・エクスヴェルだ」


「その物言いは、確かにリオンね」


「詳しく教えてやりたいところだが、まずは怪我を治そう」



 人外へ変わった俺の姿に戸惑うヴィクトリアを安心させるように(ヒト)としての名を告げてから、右手を彼女へ向け、空中を握り締めた。



「怪我が……ッ!?」



 六翼の半数を失い、全身に様々な傷を負っていたヴィクトリアの身体が一瞬で完治する。

 完治可能だと分かっていたが、実際に出来たことに俺自身も少なからず驚いた。


 背後の黄金の円環〈星簒奪界光背(イーシュワラ・ハル)〉には、〈強欲神〉である俺の〈強奪〉の力を拡張する力が宿っている。

 認識した法則を奪う〈理奪〉、彼我の距離を奪う〈離奪〉、他者の凡ゆる負傷を奪う〈負奪〉、権能や能力を奪う〈権奪〉、触れた武器相当のモノを奪う〈武奪〉、凡ゆるエネルギーを奪う〈力奪〉、凡ゆる支配権を奪う〈盗奪〉、対象の事象や物質の構成を解く〈解奪〉など、〈奪〉という概念を拡大解釈する力を有していた。

 今ヴィクトリアに対して使ったのは、当然ながら〈負奪〉という力だ。

 分類的には〈強欲神〉の権能【星戯の始まり(アストラル・ワン)】の一部になるので、この力自体も〈権能〉に該当する。


 黄金円環(イーシュワラ・ハル)はあくまでも補助パーツのようなモノで、この円環が無いからと言って力を発揮出来なくなるわけではない。

 拡大解釈によって強奪する力を安定化する、という表現が近いかもしれない。

 とはいえ、この円環含めた姿が正しい姿なので、理由もなく消す必要はないだろう。



「時間稼ぎ助かった。あとは俺が終わらせるから休んでいてくれ。エクス、ヴィクトリアを守れ」



 エクスカリバーに力を注いでからヴィクトリアに手渡すと、ヴィクトリアの周りに球状の結界が展開された。

 性能的には絶対防御(アイギス)並みの防御力があるので、俺の〈権能〉の範囲に入らなければ巻き込まれることは無いはずだ。



「……やはり、至っていたか」



 声が聞こえた方へ七つの眼を向けると、邪神の無駄に整った顔が忌々し気に歪んでいた。



「話している隙に背後から襲ってくるかと思ったんだがな」


「今のキサマの背後に移動などできるか」


「ふむ。流石に神性存在(デウスデア)には分かるか」



 背中から生える十二の結晶柱の偽装を解き、本来の姿を現す。

 十二の結晶柱が、肉体を彩る黒と同じ宇宙の如き漆黒の輝きを放つ巨大な翼へと変化する。

 だが、その翼もまた偽りの姿であり、その正体は無数にも思える手と長腕の集合体だ。

 五百対の手の集合体〈萬奪羅千手(サハスラブジャ)〉。

 それが背後で触手のように蠢く、大翼を形成する無数の手の名前だった。



「満たせ──〈我欲望却界封(ワールド・ディザイア)〉」



 元【災界顕現(ワールド・ディザイア)】が変化した権能【星戯の始まり】の対界能力を発動する。

 〈強欲神〉となった時に解除された【災界顕現】の代わりに発動させた〈我欲望却界封〉により、邪神から力を奪うだけでなく、この空間自体からも直接力を奪っていく。

 〈我欲望却界封〉には奪う力に加えて、対象が逃げられないように空間を封じる力もある。

 この空間も邪神も、俺が展開した世界から逃げ出すことは出来ない。



「これは……キサマ、直接支配権をッ!?」


「今の俺に奪えないわけがないだろう?」


「そうか。ならば──」



 加速度的に純白の世界が黒く染まっていくのを見た邪神が、その姿を変貌させていく。

 時間を稼ぐために空間内にいる全ての邪神の走狗達が、俺の元へと殺到してくる。

 それらの有象無象を見据えながら、千と二つの神の手を全方位へと向けた。



「〈蒐奪神手(シン・スィージャ)〉」



 【強奪権限(グリーディア)】よりも出力と射程距離の向上した強奪の力が、邪神の走狗達へと襲い掛かった。




 



 

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