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黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

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第445話 邪神と強欲神



 ◆◇◆◇◆◇



 〈強欲神〉の権能【星戯の始まり(アストラル・ワン)】の〈蒐奪神手(シン・スィージャ)〉の力を向けられた邪神の走狗達の反応は、大きく二つに分かれた。

 英霊騎士(エインヘリアル)などの一定以下の強さの個体は、手を向けられた瞬間に粒子状に分解され、それぞれの神手に吸収されていった。

 逆に、一方的に奪われないほどに強力な個体は、即死こそ免れたようだが神手を向けられている間は強制的に魔力と生命力を奪われ続けており、死に向かっている点は即死した個体と変わらない。

 無数にいた邪神の走狗が一瞬で数えられるまでに数が減ったのを確認していると、見上げるほどに巨大な白亜の龍が龍の息吹(ブレス)を放ってきた。



「アレは、【源喰龍顕現(ミドガルズオルム)】か」



 〈萬奪羅千手(サハスラブジャ)〉の千手の内の十手を迫り来るミドガルズオルムのブレスへと向ける。

 背中で輝く黄金円環〈星簒奪界光背(イーシュワラ・ハル)〉により拡張された〈強奪〉の力である、有形無形問わず存在を分解する〈解奪〉と凡ゆるエネルギーを吸収する〈力奪〉の力を十の神手から解き放つ。

 単純計算で直前の十倍以上の出力になった〈蒐奪神手〉は、ミドガルズオルムのブレスを無力化しただけでは終わらず、そのまま遡るようにしてブレスの発生源にまで〈強奪〉の力を届かせた。

 


「還ってこい」



 ミドガルズオルムの体色が純白から漆黒へと変わり、玉虫色の光の粒子となって神手に吸収されていく。

 同時に一体しか生み出せない【源喰龍顕現】の唯一無二の生成体の吸収を足掛かりにして、凡ゆる支配権を奪う〈盗奪〉で大元であるユニークスキル【無限源喰の世界龍(ウロボロス )】の奪取も行う。

 派生スキル【源喰龍顕現】から内包スキル【源喰権限(ヨルムンガンド)】へ、そしてユニークスキル【無限源喰の世界龍】全体へと順に支配権を取り戻していきながら、変化中の邪神との距離を詰めていった。



「周囲の時空間を固定化したのか。面倒だな」



 彼我の距離を奪う〈離奪〉で一気に移動しようとしたが、僅かな距離しか転移できなかった。

 邪神は純白色の女性体から玉虫色の球体に転じており、その球体全体から放たれる銀色の光によって周辺一帯の時空間が停止されていた。

 あの状態の空間には転移系能力で踏み込むことは出来ない。

 〈蒐奪神手〉ならば邪神の力を注ぎ込んで固定化された時間も空間も解くことは可能だが、相応に手間と時間が掛かる。

 そこに注力するよりも普通に移動した方が断然早い。



「分身体、いや化身体か」



 邪神の元へと向かう俺の行く手をユニークスキルを内包した化身体達が阻んできた。

 万物魅了の力を放つ【黄金ノ女神(グルヴェイグ)】の化身体が、俺の千手に干渉してくる。

 その魅了の力を逆に奪い取り、すれ違い様に千手による拳打を叩き込んで化身体(グルヴェイグ)を分解・吸収する。

 無数の触手と化した髪先から増幅させた魔力砲撃を放ってきた【豊饒ノ黒山羊(イア・シュブニグラス)】の化身体は、先ほどのミドガルズオルムと同じ方法で無力化し、吸収した。

 人型の白き闇である【深淵ノ大帝(イア・ノーデンス)】の化身体が深淵の闇の中へと俺を沈めようとしてきたが、その闇の支配権を奪い取り、逆に俺の黒き闇へと沈めて取り込んだ。


 三体の化身体を同時に処理してユニークスキル【深闇と豊饒の外界神(シュブニグラス)】を取り戻したタイミングで、巨大な狼が俺を丸呑みにしてきた。

 神性特効ユニークスキルとも言える【神喰と終末の獣神(フェンリル)】の化身体の牙が俺を噛み砕こうとするのを千手で受け止める。

 〈強欲神〉である今の俺には良く効くであろうその牙を千手でしっかり掴むと、全ての神手に力を込めて口内から真っ二つに身体を引き裂いた。

 化身体(フェンリル)の肉片を吸収してユニークスキルを取り戻していると、同じユニークスキルの内包スキル【陽喰ノ獣戯(スコル)】と【月喰ノ獣戯(ハティ)】で生み出された生成体が襲い掛かってきた。

 【神喰と終末の獣神】を完全に取り戻すまでの僅かな間に襲撃してきた二体の神狼に対して、二つの神手の掌から二振りの神刀〈財顕討葬の神刀(エディステラ)〉と〈龍喰財蒐の神刀(アメノハバキリ)〉を現出させ、伸縮自在の神手で以て斬り刻み、無数の肉片と化した。


 取り出した神刀を再び神手の中に収納して一体化させたタイミングで、頭上より二振りの剣が振り下ろされてきた。

 邪神製の神剣と星剣を振るうのは、ユニークスキル【正義と審判の天罰神(アストライア)】の【星戯ノ剣神(アストレア)】による剣神型化身体と、特殊系スキル【竜血聖躰ノ超越勇者(ジークフリート)】の勇者型化身体だった。

 背後からは、ユニークスキル【冥府と死魂の巨神(ヘル)】の【死泉に巣喰う龍蛇(ニーズヘッグ)】と【至高の冥獣(ガルム)】の生成体である龍頭の神蛇と冥界の神狗も迫っている。

 生身の両手で邪神製の神剣と星剣の刃を鷲掴みにすると、権能【星戯の始まり】の他の力を解放する。



「私財掌中──〈神財宝主(ヴィッテシャ)/星王ノ剣(エクスカリバー)〉」



 千手全ての手の中に出現した偽エクスカリバーの剣尖を全方位へ突き出す。

 至近距離から放たれた千もの神速の突きが四体の化身体と生成体を襲う。

 俺が持つ財宝(アイテム)を手の中に限定して再現する〈神財宝主〉は神器すらも生み出す。

 エクスカリバーのような最上位神器の能力を完全再現するまでの力はないが、その耐久性と鋭刃さは完璧に再現出来ている。

 純粋な剣撃に関しては本物と遜色ない千本もの偽エクスカリバーの閃撃は、次の瞬間には四体の邪神の走狗達を木っ端微塵にしていた。

 邪神の走狗達を構成していた力が神手に吸収され、各ユニークスキルが俺の元へ戻ってくる。

 その経過を意識の端で確認しながら前進し、玉虫色の球体へ全ての偽エクスカリバーの刃を突き入れた。



「……抜け殻か」


「Adirootonos」



 見上げた視線の先で不可視化状態を解いた邪神が姿を現す。

 変貌後の邪神の姿は人の形から掛け離れていた。

 一言で表すならば、至るところに恐ろしい口を生やした純白色の触手の群れだ。

 白き触手の表面には虹色の光が明滅しており、その度に体皮の性質が変化していた。

 竜の鱗が生えたかと思えばスライムのような粘体に変化し、人間の肌になった後には金属の質感へと変わっていて、特定の体皮に留まることはないようだ。

 触手の各部に生えた口も美しい人型の口から悪魔のような口、竜の口など種族や性質問わず絶え間無く変化を繰り返していた。



「それが本来の姿か。人型を模っていたのは、その姿だと信仰を集められないと考えたからか?」



 邪神と会話をしながら全ての偽エクスカリバーから聖なる極光の斬撃を放つ。

 極光斬撃(カリバーン)は狙い違わず邪神へと放ったが、直撃する寸前で空間が歪み、その歪みの中へと吸収されていった。



「Owiesutiruok Adekadatisisuyj。Ahnegnin Inematim Urerawarot Anarakadonomiki」


「まぁ、そうだろうな」



 周囲の空間が歪み、その歪みの中から千個の黄金色の斬撃が放たれてきた。

 その斬撃のエネルギーを神手で吸収して防いでいると、触手の全ての口からブレスが追加で放たれてきた。

 今の〈蒐奪神手〉を以てしても瞬時には奪い尽くせないエネルギー量だったので、吸収せずに回避を選択する。

 僅かな攻防で現状の邪神の能力を分析していると、邪神を構成する触手の一部が空間と同化した。

 すると、純白の大地が突然隆起していき、瞬く間に高層建築物が乱立していった。

 現代地球よりも近未来的なデザインの建物が空間を満たしていくと、続けて空飛ぶ戦艦や円盤型戦闘機、天使のような人型機械などの兵器群が次々と姿を現してきた。



「Omokak Omiazneg Aranunawanak Owarakitoniarim Adekaduakut」



 邪神曰く、未来の力らしき兵器群の全砲口が向けられる。

 兵器群を分解すべく神手を向けるが、〈強奪〉の力が干渉する度に兵器群の装甲に虹色の光が瞬き、力を打ち消された。



「仕組みは分からないが、一筋縄ではいかないか」



 未来兵器群の砲口から放たれた虹色の砲撃を偽エクスカリバーの斬撃で斬り払った。

 そのまま極光の斬撃を伸長し、未来兵器群の一角を斬り裂こうとしたが、同じように虹色の光が明滅し斬撃が弾かれた。

 未来兵器群の攻撃を相殺できた一方で、〈強奪〉の力や偽エクスカリバーの攻撃は届かなかった。

 この仕組みを解かない限り俺の攻撃は通じなさそうだな。

 既に予想は付いているが、確証が欲しいのでもう少し攻撃を仕掛けるか。



 

 

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